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黒の森に至る道

かつて…いや、ほんのつい最近まで、黒の森は隔絶された地域だった。


最後の村から馬車で三日、そこが人が立ち入る限界で、そこから先を進みたくば、道なき道を行かねばならなかった。


カイラスは特殊な任務を多くこなした軍人で、体力面でも常人を遥かにしのぐと自負していたが

それでもここにたどり着くのは並大抵のことではなかった。


最初に来たときなどは、遭難しているところに、オリバーが通りかからねば、そのまま死んでいたかもしれない。


『オリバー様は、普段どのようにして、ここと外を行き来しているのですか?』


『え。あー…』


カイラスの質問にオリバーは目をそらした。

転移魔法は、一般には、実現しない魔法とされている。

数多くの禁呪を抱える四大公爵家以外では。


『人をいれるとなると、避けて通れない問題ですよ。』


『…まあ、そうですよね。

皆さんに来ていただく手段はおいおい考えるとしても…、カイラスさんは行き来できた方がいいですよね…。』


オリバーはチョークを取り出すと、地面にぐいぐいと図形をかいた。


『カイラスさん。私と手を繋いでください。』


『え。』


『まあ、お嫌でしょうけど、握手と思って。』


『…失礼。』


『いちにのさんのさんのところで、飛んでください。あの模様のなかに。』


『え。』


いちにのっさんっ‼



『あ、オリバーさん、お取り寄せのチョコレート、入荷してますよー。』


カイラスは口をあんぐり開けた。

いつのまにやら、菓子屋の店内に居たからだ。


『わあー、嬉しいなあ。

あ、あと、特選黄金蜂蜜の特大サイズ、今日ありますか?

あと、女王様の甘い罠、の20個入りを20個と…

あ、そこのケーキも一番大きいのください。』


『え…』


にこやかに次々と注文していく男を、カイラスは二度見した。

ブラウンの髪と髭に瞳にブルーのスーツを着た、人当たりの良さそうな紳士がいた。


『ああ、彼女は職場の同僚でして、今日はうちのささやかなディナーにお招きしているんですよ。』


『え。』


カイラスは自分の姿をまじまじと見た。

パンツスーツではあったが、あきらかに女性もののフォルムだった。


『カイラさんもデザートを選んでください。

生物でも大丈夫ですよ。』


『え。』



『というわけで、どこでも…魔方陣があります。そう、どこでも魔方陣!』


気がつけば元の場所にいた。


『私は毎回その辺に書いてますが、

カイラスさんにはお部屋にでも消えない何かでかいておきましょうかね。

出口にしたい場所があったら、教えてくださいね。

アスラが間違えて踏んだらいけないので、

鍵がかかる部屋がいいんですが。


あ、あと、お着替えマジックは今回限りのオプションですから、必要があれば予め変装していって下さいね。

帰り道は、破くだけで戻ってこれる携帯用魔方陣をお渡ししますから…。』


カイラスはため息をついた。


『ありがとうございます。

でも、この方法は、漏らしてはダメです。

ただでさえ、あなたは恐れられているんだから。』


『ですよねー。』


オリバーも苦笑した。



















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