告げられた真実
あの日、僕は幽霊に恋をした。
幽霊の少女と普通の男子高校生の青春ストーリー
主人公 秋陽
幽霊 露草
2話 告げられた事実
僕は彼女の事を自分の部屋で考えていた。
あの透き通った笑顔。
無垢な性格。
そして何よりも幽霊であること。
彼女はなぜ幽霊になってしまったのだろう。
彼女は他の人には見えないのだろうか。
そんな事を考え僕は眠りについた。
「秋陽、秋陽、秋陽、私を助けて」
「!!!」
またあの夢だ。
目を覚まし冷静に考える。
助けて、彼女はそう言った。
でも、どうやってどうすればいいのだ。
分からない。夢の意味も。どうすればいいのかも。
しばらく考えに浸りぼーっとしていると高校へ行く時間が近くなった為、支度をして家出た。
いつもと変わらない桜並木。
やはり朝では彼女は姿を表さないらしい。
彼女の亡くなった証である花瓶の横に昨日の猫が寄り添い寝ていた。
今日もまた帰りに寄ろう。
そうして高校に着いた。
授業は相変わらず退屈な物だった。
後ろの席の男子生徒の欠伸の音が聞こえる。
そうして昼休みを迎えた。
「あーー、ちょう眠い。死ぬ」
欠伸の主であり少し前に仲良くなった男子生徒、真田が話掛けてきた。後ろの席でなおかつ適度なゆるさを持つこいつとはすぐに打ち解けられた。
「お前、欠伸の音聞こえたぞ」
真田の為を思い呆れながら言った。
「ヘーキヘーキ、そんなん注意してこないでしょ。授業ちゃんと受けてるし」
「まぁ、確かに」
「こら、誤魔化されるな」
僕が納得しかけたところに、隣の席の女子、玉木が鋭いツッコミを入れてきた。
玉木は目は釣り目だが美人で童顔からか、その性格からなのかただのツンデレ系女子にしか見えないのである。
「でもしょうがないだろ。昨日夜遅くまで心霊特集を見ててさ、近所にも心霊スポット無いかなって調べてたから眠いんだよ」
真田はしょうがないというふうに言い訳をした。
「はぁ、あんまり夜ふかししない方がいいわよ」
そう言うと玉木はどこかに行ってしまった。
「で、近所には心霊スポットあったのか?」
僕は興味本位で聞いて見た。
「いや、全く無い。少し離れた隣町なら死を引き寄せる踏切やら、悪魔の住むマンションやらあるが、この街には無いな」
「ふーんそうなんだ」
僕は少し安心した。彼女を思い出して。彼女はどうやら、怖がられたり、人々の騒ぎの的にはなっていないみたいだ。
「てか、隣町凄いな」
「何の話?もしかして隣町に出来たショッピングモールの話?」
どこからともなく玉木が戻ってきて興味津々で話を聞いてきた。
「ショッピングモールなんて出来たの隣町?」
僕はびっくりして聞き返した。
「え、あ、ショッピングモールの話じゃないのか。
出来たよ。なんでも県内最大級のモールなんだって。これモールのチラシね。ポストに入ってた。はぁ」
玉木はモールの話じゃないと分かるとあからさまにガッカリした様子だった。
「そんなあからさまにガッカリしなくても」
「私行きたかったのよ。でもまだ時間なくて。そうだ、秋陽行ってきて感想教えて」
そう言うと玉木はモールのチラシをこちらへ渡してきた。
「てか、そろそろ時間だぞ」
真田に言われ次の授業の準備をしている時にちょうど講師が入ってきたのでこの話はお開きになった。
ようやく授業が終わり下校の時間になった。
僕は例の桜並木の所に向かっていた。
がいない。まだ日が落ちていないからだろうか。
そういえば真田が言ってたっけ。なんでも幽霊は明るいところが苦手で日が落ちないと現れないらしい。
なんとなく日が落ちるまで時間があったので、花瓶にお供える花を花屋さんで買った。そして桜並木に戻る途中とてもキレイな花を見つけた青く小さい花そして一本だけポツンと咲き誇っていた。
その花をちぎりお供えの花と一緒にして、僕は桜並木へと向かった。
日はすっかり落ちていた。
例の桜並木に到着すると彼女はいた。
月明かりに照らされた、彼女の姿は神々しく輝いて見えた。
彼女の傍らにはあの助けた猫がいた。
楽しそうに抱っこしてじゃれあっている。
僕は彼女に声を掛けた。
「こんばんは。昨日ぶりだね」
「うん、今日も来てくれた」
彼女はキラキラとかがやく笑顔でそう言ってくれた。
「私ね、ホントはもう怖がって来ないんじゃないかって思ってたの、ほら幽霊って怖いものでしょ。だから気味悪がって、怖がって来てくれないんじゃないのかって」
彼女は不安そうな顔でそう言う。
「そんな事、ありえないよ僕は君の事、怖いなんて思った事も無いよ、むしろとてもキレイだと…」
言っていて恥ずかしいことを言いかけている自分に気づいた。
思わず口籠っでしまう。
「えへへ、そっか。ありがとう」
彼女は照れ臭そうに笑った。
「うん。それよりお供えの花を買ってきたんだ。花瓶に挿そうと思って」
僕は誤魔化すようにそう言うと花瓶にお供えの花を挿した
「そうなんだ。ありがとう。嬉しい」
彼女はキラキラした笑顔でお礼を言った。
自分の顔が少し熱くなるのを感じながら僕は昨日聞けなかったことを聞く。
「君、名前なんて言うの」
「名前かぁ」
彼女は少し考え込んでこう答えた。
「うーん。そうだ露草それが私の名前」
そう僕がお供えした花をみて答えた。
「え、つゆくさ?」
「そう、露草」
「それってあの花の名前?」
僕は聞いた。
「そう、そして私の名前。私ね事故にあった時に自分の名前とかの記憶忘れちゃて。てへ。だからあなたがくれたあのお花の名前が私の名前なの。それにピッタリだと思って私に」
と答えた。キラキラ笑顔で。
「ピッタリ?」
「そう、露草のお花ってね、朝に咲いて午後には萎むの。そう言う儚いところがピッタリかなって思って」
「確かに」
「って、納得しないで。言ってた自分が恥ずかしいよ。もう。そんな事じゃなくて単純にキレイだと思ったからだよ」
「うん、確かにそうだね」
僕はそう答えた。彼女は冗談だったかもしれないけど確かに、儚さや露草の花のキレイさは、彼女にピッタリだと思った。
そしてふと疑問に思った事を聞いてみた。
「露草はさ、ここにずっと居るの?退屈じゃない?」
「私ね、ここから離れると体が苦しくなって消えちゃいそうになるの。だからここから離れられないんだ。」
彼女は悲しい顔でそう答えた。
僕は聞いてはいけない事を聞いてしまった。
「そうなんだ。ごめん。気とかその使えなくて。ほんとにごめん」
「いいの、いいの。私こそ変な事言ってごめんね。体無いのに消えちゃうとか。でもまぁ、少し退屈かな。でも君と話せた事がなによりの暇潰しだよ」
「そっか、良かった」
僕は照れ臭くて誤魔化した。
「でも、確かにここの周りから動けないのは退屈だよね」
「うん、だからね、君が面白い話して♡」
「えっ!」
僕は突然の無茶振りに素っ頓狂な声をあげてしまった。
「お、面白い話。そうだ」
僕は昼休みの話を思い出し玉木から貰ったチラシを露草に見せる。
「これ、隣町に県内最大級のモールができたらしい」
「ふへー、凄い。なにこれ、こんなに田舎にこんなものが!!!」
露草は食いついてチラシをキラキラと輝いた目で見ていた。
「凄い。行ってみたい。あ、でも駄目だ、隣町は無理だ」
彼女はガッカリした様子で呟いた。
「確かにそうだね」
僕もそれに気づいてしょんぼりと肩を落とした。
「でも、一度でいいから見てみたいなぁ」
彼女はガッカリしながらも夢を語る少女風に呟いた。
「そうだね。どうにかできればいいのに」
「うん」
彼女は神妙な面持ちで頷いた。
「そういえば時間は大丈夫なの?」
彼女に言われ時計を見る。
時刻は22時を回っていた。
「ヤバ、もう帰らないと」
「ふふふ、また明日ね」
「うん、また明日」
そうして僕は慌てて帰宅した。
家につき、部屋のベットで僕は考えていた。
どうすれば露草にモールを見せる事ができるかを。
テレビでは新しいデバートの特集をやっていた。
カメラを回しデバート内部を撮影している。
待てよ!動画でなら彼女に見せられるではないか!!
早速ネットでモール内の動画を探すが見つからない。
そこで昼の玉木との会話を思い出す。
(そうだ、秋陽行ってきて感想教えて)
自分で行って動画を取ればいいんだ。
そして日曜。
僕は例のショッピングモールにいた。
そして入り口から動画を撮影する。これは盗撮の疑いを掛けられそう。
なるべく人が映らない様に、かつ楽しげな所と雰囲気が分かるように。なんとか苦労しながらモール内を歩き撮影した。
モール内はとても広く歩くだけで半日かかる。
そうして苦労の末モールを撮影した。
あけて月曜日。
僕は日が沈んでからここに来た。
例の桜並木。
いつもの様に居る露草。
「露草」
「わ、びっくりした。昨日来ないから寂しかったよ」
「ご、ごめん。でも露草にいいものを見せてあげようと思って用意してた」
「いいもの?」
「そう。これ見て」
そう言うと僕はスマホで撮影したモールの動画を見せた。
「これって!!」
露草はキラキラした表情で動画を見ながら聞いた。
「そう、あのモールだよ。素人撮影であれだけどね」
「うんん、凄く嬉しい。見れないと思ってたから」
露草は感動して目に涙を浮かべながら動画をみてくれた。
そして色々な、モール内のものに露草は感動していた。
そうして僕が撮影した映像は終わった。
「ありがとう。凄く面白かった」
露草は笑顔で言った。
「どういたしまして」
露草に喜んで貰えてなによりだ。
「お礼しないとね」
そう言うと露草は、
「こっち見ないでね」
「ちゅ」
ほっぺにキスをした。
「へ、へ、へ」
パニクる僕を尻目に露草は、
「ちょっと恥ずかしいけど、これがお礼」
と笑顔で言ってきた。
僕は露草の為にもっと何かをしてあげようと思った。