露草
恋愛小説です。
切ないお話にできたらいいなぁと思い書きました。
是非読んで感想を
頂けるとありがたいです。よろしくお願いします。
彼女は透き通った白い肌と整った顔立ち柔らかな笑顔そして、とても優しい心を持っていた。僕はその日、幽霊に恋をした。
第1話
露草
謎の声「秋陽!秋陽!こっち来て!」
「!」僕は目を覚ます。どうやら夢を見ていたようだ。
昔の初恋の夢。最近良くこの夢を見る。今日この夢を見たのは馴染み深いこの街に戻って来たせいもあるかも知れないが。
転校初日、新しい世界に胸を膨らませ僕は母に挨拶をし家を出る。
そして、僕が通う高校に向けて歩を進める。真新しくも何処か懐かしい景色を見ながら大通りを進み目的地に向かっていると、ふと自宅付近に向かって伸びる路地を見つける。その路地は沢山の桜の木が植えられていた。春になれば満開の桜並木になるかもしれない。帰りはここを通って帰れるか試してみよう!。そう思いながらその場所を通り過ぎ高校へ向かった。
そして長い坂を登るとようやく目的地に着く。
今日から通う高校だ。早速職員室に行き担任である先生に挨拶した。
女性の先生は少し緊張している僕の事を気遣って色々話掛けてくれた。
「そういえば、秋陽君は昔この近くにすんでいたのよね!こっちに戻って来てどうだった?昔と比べて変わった所とかあった?」
「昔は大きい建物そんなに無かったのに増えたりとか、景色が少し都会になった位ですね。でも昔の面影が残ってる所は残ってるのでホッとしました」
「そっかぁ。私ここに来て3年目で最初来た時は都会だなぁって思ったんだよね。私の地元田舎だから。発展して都会になったんだねこの街は」
「そうですね」と僕は笑顔で答える。
「そっかぁ。私の地元帰ったら都会になってたりしないかなぁー。なんてね!冗談!冗談!そういえば秋陽君は部活とかどうするか決めた?」
「いえ、まだですけど」
「それなら決める前に色々と見学すると良いわよ!うちの高校部活に力を入れてて部活が多いのよ」
「そうなんですね。ちょっと考えてみます」
そんな会話をしているうちに教室に着いた。
「じゃあ、少し待っててね。合図したら教室に入ってきてね!」
そう言い先生は先に教室に入っていった。しばらくすると、
「入ってきて!」と先生の声と手招きの影が見えたので教室に入る。
教室の中は初対面の人しか居なかった。
好奇の目に晒される。
「じゃあ自己紹介!」と先生が背中をトンと叩く。
「初めてまして、柊秋陽と言います。昔ですけどこの街に住んでいました。戻って来て分からない事だらけで、皆さんに聞こうと思っています。よろしくお願い致します!」と緊張している割に上手くまとめた無難な挨拶した。
「じゃあ、秋陽君の席はあそこね!」先生が指を指してくれた開いている席に座る。
その日は、よくある転校初日みたいな感じで休み時間に何処から来たの?とか趣味はなに?とか彼女いる?とか部活何処入る?とかの質問攻めで終わった。
そしてようやく授業が終わった。
今日は疲れたので部活とかは渡された資料を見て別の日に見学しようと思い日が落ちてないうちにそのまま帰宅する事にした。
そして長い坂を下ると例の桜並木になっている路地を見つける。
もしやこっちからのが近道になるのでは?と思いその路地を歩く。
しばらく歩くと小さな交差点に出た。人通りが少なく少し寂しげな交差点その道路の端に花瓶があった。花瓶の中には露草の花が添えられていた。
誰かがここで亡くなったのだろうか。僕はその場所に手を合わせお辞儀をした。
そしてその場所が気になりつつも自宅へと向かう。幸い桜並木は思っていた通り近道になっていた為今朝家から高校に行った道のりよりも10分ほど早く自宅に到着した。
僕は自分の部屋で部活の案内を見ていた。そして見学に行きたいと思った所に印を付けていく。明日時間があれば部活を見学する為だ。
一通り目星をつけたところでいい時間になっており片付けたところで眠りについた。
謎の声「秋陽、やっと見つけた!」
「!」
また、あの夢を見た。
もう何度目だろう。僕は初恋なんてものを未だに引き摺っているのだろうか?だとしたら相当こじらせていいるな。なんて自分の事を思いながら、時計を見る。丁度目覚しをセットした時間の5分前だった。
僕は布団から出て高校に行く支度をする。今日は昨日見れなかった部活動の見学もあるから遅くなるかもしれない。支度が終わり朝のご飯を食べ終わりいい時間になったので学校に行く。
あの近道を使って向かう。しばらく歩くと花瓶のある所に、少し気になりつつも通り過ぎ、高校へ向かった。
高校へは少し早めに着いた。昨日より近道を考えて遅めに出たのだが、まだゆっくりできたなぁと思っているうちに、他の子達も来て昨日と同じように話した。そのうち先生が来て授業が始まる。そうして何事もなく今日の授業は全て終わった。
そして放課後になった。
僕は部活の案内を手に目星を付けた部活動の見学に向かう。
そうして目星を付けた所を一通り見学した。
ようやく目星を付けた所全てを見学し終わった時にはすっかり日が暮れていた。
帰り支度をして、部活の事を考えながら校門を出る。
日はすっかり落ち、辺りは真っ暗闇に染まっていた。
坂を下ると例の桜並木に、そのまましばらく歩くと子猫がいた。
どうやら足を怪我してるらしかった。近づいて保護しようとすると、怪我した方の足を引きずりながら、逃げられてしまう。どうにか追っても痛々しく逃げられてしまう。そうして例の花瓶が置いてある交差点近くまで来た。どうしようと困っていた所、花瓶置いてある方から、「ニャーニャーニャア」
と甘く優しい声が聞こえた。
すると猫は声の聞えた方へ走って行ってしまった。
声のした方へ行くと一人の美少女がそこにいた。
「ニャー怖かったね。痛かったね。今治してあげるね。私には応急処置位しかできないけどって今布持って無いんだった。どうしよう」
僕は思わず声をかける。
「あの、ハンカチならここにありますけど」
「え!、びっくりした。私の事見えるんだ!」
「え?ええ、まぁ。てかハンカチ」
「そだった。ありがとう」
彼女にハンカチを手渡した。彼女はハンカチを猫の怪我している所を保護する様に結んだ。猫は彼女の膝の上でじっとしていた。
僕は疑問に思った事を言った。
「見えるだって何ですか?」
「私ね幽霊なの」
「え?幽霊?」
「そう、幽霊。あそこにお花が添えられいるでしょ。あれは私があそこで亡くなった証なの。交通事故だった」
僕は呆然とした。それと同時に現実感の無い目の前の彼女の言葉に半信半疑になっていた。彼女は猫の頭を撫でながら続ける。
「それ以来、幽霊になっちゃてこの辺りを彷徨ってるの。どうやら地縛霊って奴でね、この辺りから出ようとしても出れないんだ」
彼女は優しく微笑みながら、そう語った。月明かりに照らされた彼女はとても綺麗だった。
僕はまだ半信半疑で「いや、嘘でしょ!こうやって話もしてるのに」
「嘘なら良かったんだけどね。本当だよ。幽霊になって初めて分かったんだけど、私ね、私の事を認識してくる人や動物以外触れる事ができないの。すり抜けちゃうんだ。ほら!」
そう言うと彼女は供えてあった花瓶に触れようとする。しかし月明かりで輝く彼女の手は花瓶をすり抜けてしまう。「でも君には触れられるよ、私を認識してくれたから。ほら!」そう言うと彼女は僕の手に触れた。彼女の体温が伝わる。冷たくも柔らかく包み込まれる様な温もりを感じる。僕は胸の鼓動が高鳴るのを感じながらじっとして、彼女に心音が聞かれないように必死に抑えた。すると彼女はそのまま自分の頬に僕の手を持っていった。
心音がより一層激しくなるのを感じた。心臓が爆発しそうだった。
彼女は微笑みながら、僕を見て、「どうしたの?」と笑った。
僕は咄嗟に気持ちが悟られないように必死に誤魔化した。
「そっかぁ」と彼女は納得した様子だった。
彼女は微笑みながら、続ける。
「私が幽霊だって事信じてくれた?」
「うん、信じるよ。てか、信じるしかないよ。そんなの見せられたら」
「よかったー」
「僕みたいに見えた人って他にいるの?」
「君が初めてだよ」
「そうなんだ」
「私ね普段、この辺りを一人でずっとうろうろして退屈だったんだ。でも、君がこうして私の事を認識してくれて凄く嬉しい。だからもし嫌じゃ無かったらこうして私とお話して欲しいかなって思っているんだけど、、、」
彼女は照れくさそうに微笑んだ。
「うん、もちろん」と僕は答えた。
彼女は心底嬉しそうに「ありがとう!」と微笑んだ。
「約束ね」
「うん!」
その時自分のケータイがなった。母からの着信だった。
「ごめん、そろそろ帰らないと」
「そっか、家族が心配しちゃうよね。じゃあまた。ニャーちゃんの事は任せて」
「ニャーちゃん?」
「そう、この猫の名前。ニャーちゃん!可愛いでしょ」
そう言うと彼女は猫の頭を撫でた。
「うん!いい名前だね、じゃあ任せた!また明日ね」
「うん!」彼女は月明かりに照らされながら、微笑んでくれた。
その姿はとても綺麗だった。
そうして僕は急いで家路に着く。まだ心臓は高鳴り続けている。
家に帰り自分の部屋に入り彼女の事ばかり考える。心臓は鳴り止まなかった
僕は人生で2度目の恋をした。
設定
主人公 名前 柊秋陽 高校2年生
ヒロイン 名前 ??? ???「次回などで徐々に明らかになる予定」