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第12話 Battle of Persons




 エルドリク中尉は夢のなか。

 マクレラン少尉は勇猛なれど無謀なる奇襲作戦を敢行しつつあった、ちょうど同じ頃……。


「――ケェェェィッ!」


 シャーロット・ウォルシュ中尉は裂帛の気合と共に白刃を一閃、一息に振り下ろす。

 彼女へと跳びかからんとしていたゴブリン兵の顔面が真っ二つに裂け、緑の血が噴き出し四方へ散った。


 しかしゴブリンを一匹仕留めたからと言って彼女には安心する事許されない。

 今度は反対側より聞こえる別の雄叫び!手斧を振りかざし、ゴブリンには珍しく勇敢に跳びかかってくるのが一匹。


「小賢しいッ!」


 しかしウォルシュ中尉は既に、左手で六連発拳銃を抜き放っていた。

 重い銃声が響き、目に悪そうな白い煙が噴き出す。その厚く白い靄の向こうで、血を噴き出し叫びを上げつつ空中でひっくりかえるゴブリンの姿が見えた。

 トドメのもう一発を脳天にぶち込めば、頭蓋が爆ぜてゴブリンは動かなくなった。

 当座の敵は片付けたことを確認すると、手綱を引いて馬首を巡らし、合わせて視線も巡らせる。

 ぐるりと一通り見渡せば、目ぼしい敵は全て片付いたらしいのが解った。


「副長!当方の損害は?」


 中尉の叫ぶような問いに答えたのは、彼女から少し離れた所でゴブリンの死骸より騎槍を引き抜いていた中年のエルフ騎兵である。肩章からするに階級は曹長であるらしい。


「残念ながらこっちも何人かやられた模様!」

「何人かじゃ解らん!確認急がんか!」

「ハッ!直ちに!」


 生き残った騎兵達を並ばせ点呼を獲る為に、副長が叫びながら馬を走らせる。

 それを横目にウォルシュ中尉は、サーベルについたゴブリンの臭い血を軍服の裾で拭った。

 彼女達エリート槍騎兵自慢の華やかなる軍服も、たび重なる白兵戦と行軍のなか、血や泥で汚れきってしまっている。今更その汚れが新たにひとつ増えた所で、どうとも思わない。


「くそ忌々しい……」


 彼女は、小さく声に出して毒づいた。

 口元の刀傷が歪み、地が美しい容貌だけに却って中々な凄絶な表情になる。死線を越えたばかりの両眼にはまだ、戦闘による熱気と殺気が残っていし、加えて言うなら彼女のハスキーな声には独特の迫力があった。


(もし……こんなにも早く開戦すると解っていれば、もっとマシな装備で来たモノを……)


 彼女率いる第2エルフ槍騎兵連隊・臨時先遣小隊はせいぜい五十騎程度の戦力に過ぎず、その任務は斥候であるために武器弾薬共に潤沢とは言い難い。

 ここに至るまでに幾度かの戦闘を経た為、その貴重な兵力・弾薬も既にかなりを消耗している。

 最早、敵に対するハッタリの中ですら「当方武器弾薬充分に充実し士気も旺盛」などとは言えない現状だった。


「副長!まだか!」

「ただ今ッ!点呼取るぞ!」


 苛立たしげに叫ぶウォルシュ中尉に、副長は急いで点呼を取り始める。

 彼女が見るに、明らかに騎数が先の戦闘前より減っている。いちいち数えなくても見るだけで解る損耗ぶりだった。


(何が『今回はまだ偵察だけで済む』だ。ふざけやがって。そもそもなんで私達、槍騎兵連隊が、こんなむさ苦しいド田舎の……)


 点呼の様子を横目に見ながら彼女が思い出すのは、

彼女達をこの場へと送りだした、アバークロンビー連隊長の澄まし顔である。

 そもそもことの始まりは――……。




◇勇/魔◆




『既に噂ぐらいは耳にしているかもしれないが、北部辺境に不穏な動きが確認されている。よって、いずれかの部隊が偵察を行う必要性が生じた』

『そこで我らが第2エルフ槍騎兵連隊に特命が下されたのだが……私は君の小隊に、挺進偵察を命じようと思う』


 二週間程前、連隊本部へと召集されたウォルシュ中尉へと、第2エルフ槍騎兵連隊長アバークロンビー中佐はそんな風に話を切り出した。


『現代においては魔族の脅威など、魔帝国の正規軍であってもタカが知れているが。問題は、センラックは既に「ゴロワ連合国」を南に控えているということだ。連中が魔族共の動きを幸いに、火事場泥棒に走らんとも限らん。精強を以て知られる我らが連邦共和国軍であろうとも、挟み討ちをされるのは好ましいとは言い難い。故に、本偵察をして魔族共の状況を探り、場合によっては機先を制すための準備が必要となる』


 そこで中佐は一旦話を切って、相変わらず静かな声で、しかしハッキリと強調するように告げた。


『つまるところ、本任務は極めて重要だということだ』


 エルフ的な整った美貌のアバークロンビー中佐は、恐ろしい鉄面皮の男であった。

 せっかくのキレイな顔も、まるで演劇の仮面のようにまるで表情が動かない。

 二年前のゴロワ連合国との国境紛争にも従軍した時も、流れ弾で傍らの副官が頭をザクロの様に吹っ飛ばされたのを目の当たりにしながら眉ひとつ動かさなかったらしい。


 士官には二種類いるという。

 『戦う士官』と『殺す士官』だ。

 前者は麾下の兵士たちの先頭に立ち、自ら銃と剣を手にして戦う士官。

 後者は兵を駒と見て、戦略目標を達する為に合理的に使い潰す士官。

 アバークロンビー中佐は、間違いなく後者だった。

 優秀ではあるが冷酷無慈悲。使われる部下にとっては余りありがたい種類の上官では無い。

 だからウォルシュ中尉は、この極めて重要な任務の指令を受けた時、即座に嫌な予感を覚えた。


 ――そもそも斥候任務と言えば通常、軽騎兵か竜騎兵の仕事である。

 それをわざわざ槍騎兵、それも精鋭部隊たるエルフ槍騎兵連隊に任せようとしている時点で、この任務は普通ではないと言っているも同然だ。

 今しがた受けたばかりの説明からも、この任務の重要性は理解できる。

 だが、この連隊長殿が直々に下した命令など重要である以上に碌なモノである訳が無い。


 しかし兵隊とは、上が死ねと言われれば死んで来るのが仕事である。

 よって彼女に許された返答などは――。


『ハッ!喜んで拝命致します!』


 ――ぐらいのものであった。


 しかるにウォルシュ中尉率いる五十騎の槍騎兵は、偵察任務用の装備を整えて北部辺境へと出発した。

 派遣の名目は『当該地における演習に先立っての視察』であった。

 偵察任務というやつは多くが機密任務であり、今度の場合もそうであった。


 彼女は国境付近へと部下と共に赴き、そして目撃した。

 不穏なる情勢などと、そんな生易しいものではない。

 魔帝国との『開戦』。その瞬間を間近で目撃する破目になったのだった。




◇勇/魔◆




 点呼した所、生き残っているのは三十三騎に過ぎなかった。

 無理も無い。あくまで偵察任務の為の装備が主であり、戦闘を行う事は想定していなかったのだ。

 敵を出来るだけ避けつつの行軍ではあったが、魔軍は北部辺境のあちこちに分遣隊を出していて、遭遇戦を完全に回避するのは不可能であった。


(調達隊ごときにこの損害……魔族の化け物どもは兵站のヘの字も知らんのか糞ッ垂れめッ!)


 古来より、戦における物資の調達は現地調達が基本であった。

 現地調達と、言えば聞こえも良いが要するに略奪の事である。

 センラック軍を始めとした人類国家に属する軍の多くは、鉄道の導入と道路網の整備によってこの忌わしき悪習から解放されつつあるが、しかしそれでもなお、必要に応じて現地調達は行われている。


 まこと、戦争の基本中の基本でありながら、兵站ほど難儀なものも無い。

 兵員の数では人間国家の軍隊の多くを上回る魔王軍にとって、兵站は余計に難儀な代物である。

 よって彼らは、昔ながらのやり方を貫く道を採っている。やはり略奪は、ある意味一番手間が掛らない手軽な手段だった。魔族にとって戦争の相手と言えばほぼ人間であるから、後腐れは全くない。むしろ、人間から物資を奪い取るのは立派な戦略の一環とすら言えるのだ。


(そのお陰で……こっちは碌な目にあってない!)


 つまり小規模な略奪部隊が北部辺境一帯に分散して展開しているのである。殆どは小規模なゴブリン部隊に過ぎないが、それでも、戦えば必ず何かを消耗する。


(こっちには余裕が無いんだ……)


 今になって後悔するのは、あのいけ好かない騎馬警官の中尉と合流しておけば、と言う事だ。

 しかし自分のみならず、隊員の心情を考えても『勇者』のいる部隊と共同作戦が困難であったのは事実。

 

(『裏切り者』風情と手を組んで生き残ったとあらば、一族末代までの恥だ……自力で、何とかするしかあるまい)


 だとすれば向かう先は一つ。『アントナム』である。あそこを護る、第20歩兵連隊と合流せねばなるまい。


(あの勇者野郎も、向かう先は同じ、か?まぁ今からその事を気にしても仕方あるまい。何にもまして重要なのは)


 生き残ることを措いて、他には無い。




◇勇/魔◆




 屋根に登って、敵の様子を窺う。

 敵のオークには気取られぬ様に、切妻屋根の頂きの直ぐ裏側に身を隠す。僅かに頭を出して、望遠鏡を覗き込む。

 鋼の甲冑が日を受けてキラキラと光る様子が見える。体躯の大きいオーク達が完全武装で馬に跨り、横列を為している様子は、敵ながら威風堂々として立派なものだった。


(いつぞやの時とは逆か……)


 望遠鏡を覗きこみながらケヴィン・パトリック曹長が思いだすのは、過去に彼が従軍した戦争の事だ。

 『藩王戦争』と、センラックでは呼ばれている人魔の戦い。曹長の胸にぶら下がっている勲章の一つは、その戦争で手に入れたモノだった。


「……」


 無意識の内に、左わき腹に手が伸びていた。

 その事に気付き、セイウチみたいな髭の下で思わず苦笑いが漏れる。

 件の戦争の時に、オーク兵士の槍に貫かれた古傷だった。今でもその痕が消えない古傷は、出来たばかりの頃は随分と疼いたものだった。

 果たして今度の戦争では、この傷程度で済んでくれるものだろうか。

 もっと言えば、そもそも生きて帰れるのだろうか。


(こちとらもう歳だと言うのになぁ……)


 そもそも曹長がこの辺境地域に移って来たのは、もう老兵といって良い歳になっていたからだ。

 騎馬警官としての仕事も、最後のひと働きのつもりだったのだ。それが、よもやこんな大仕事になるとは予想外だった。


「……」


 曹長がまだ伍長だった頃に従軍した『藩王戦争』は、センラックから仕掛けた戦争だった。

 敵は『イルティファー藩王国』あるいは『イルティファー土侯国』と呼ばれていた国で、魔帝国を除けば数少ない、と言うよりも殆ど唯一の有力な魔族国家であった。

 魔族が人間によって北へと追いやられて行く過程で、飛び地的に生き残っていた魔族国家であり、それだけになかなかの実力を持った戦闘国家であった。

 国家元首は藩王、あるいは土侯を名乗っていた。

 これは魔王によってその自治権を委託された者のみが名乗ることを許される称号である。

 魔族世界において真の王は魔王のみであるが故、単に王と名乗るのではなく、一段低い藩王、土侯という称号になっている。しかしどう名乗っていようとも、実質的には魔帝国から分離した独立勢力であったのがイルティファーという国であった。


 人間の世界の一角に残された魔族の世界、イルティファー藩王国。人間にとってそれは白いシーツに浮かんだ黒い染みのような存在だった。魔族と終わりの無い『生存競争』を繰り広げてきた人間の国家にとって、自分たちの領域に座り込んだ魔族勢力の存在は許容しがたいものであったのだ。

 イルティファーと直接国境を接するセンラックの間には長らく不穏な空気がくすぶり続け、いつ火が着いたとしてもおかしく無い状態が続いた。

 そして先に喧嘩を吹っ掛けたのはセンラックのほうだった。

 国境付近の草原地帯では牧畜業が営まれていたが、その牧畜牛が五頭、魔族に盗まれた、というのが開戦の口実であった。

 殆ど、いや完全に難癖の言いがかりであったが、そもそも人間と魔族の間柄においては、道端で目と目が合ったというだけで殺し合いの始まる理由としては充分なのだ。

 戦争は、いずれにせよ不可避であった。


 イルティファーとは魔族の言葉で『高地』を意味する。そんな名前だけあって、この魔族国家には山や丘、それに台地が多い。高低差の多いそんな地形を活かし、魔族はゲリラ戦法でセンラック陸軍を翻弄した。


 俯瞰する限りにおいては、この藩王戦争はセンラック軍の、つまり人間側の圧勝であった。

 魔帝国以外の最後の魔族国家は滅亡し、難民と化した魔族は命からがら魔帝国領内へと逃げ込んだものだった。センラック国内の新聞も、さかんに陸軍の勝利ばかりを書き立てた。


 しかし最前線に眼をやれば、やはり現場で戦う兵士の生活は相変わらず地獄であった。

 当時はまだ『椎の実弾』は開発されたばかりで前線には普及しておらず、旧式のマスケット銃と銃剣だけがパトリックたち歩兵の武器であったのだ。

 この戦争で曹長は、多くの魔族の脳天を銃床でカチ割り、銃剣で臓腑を抉り殺した。

 その傍らで戦友たちは、首を刎ねられ、腕を引っこ抜かれ、足を潰され、腸を地にぶちまけた。

 旧式のマスケット銃は威力はあっても射程は短く、戦闘は常に白兵戦にもつれこんだ。

 同胞の死を乗り越え、負傷をモノともせず曹長は戦い続けた。

 勲章は、あの地獄を生き延びた証だった。


 ――だがそれはもう、昔の話だ。


 曹長の手にする兵器の性能は格段に進歩したが、それを操る曹長の肉体には昔日の能力は無い。

 同じ魔族が相手であっても、今度は不意を攻められ寡兵で守りという最悪の状況だ。

 そして魔帝国軍はイルティファー藩王国の軍隊とは規模も質も比較にならないほど強大で、さらに連中は技術革新まで成し遂げている。


(まぁ……それでも戦うがね)


 曹長はセイウチ染みた髭の下で微笑んだ。その微笑は、殺気に満ちたものだった。


 何処であろうと何時であろうと誰が相手であろうと関係無い。人生の殆どは陸軍とともにあった。退役するその日まで、自分はただひたすらに兵士なのだ。この場においても兵士の義務を為すだけだ。

 例え指揮官が意識を失って倒れていようとも、隊長や副官の代役ぐらいは、老兵たる自分にも務まるだろう。


「かかってこい、相手になってやる」


 魔族共を見据えながら、呟く。


「……!」


 そうこう言っている内に望遠鏡の向こうで動きが見える。

 何人かのオークが振り向き――銃声が響いた!


「今だ!撃ち方用意!」


 曹長が叫ぶと、屋根の上の射撃班が一斉に起き上がり切妻屋根の頂きから姿を現す。

 割られた民家の窓からも銃身が突き出され、オーク達を狙う。


「撃てーー!」


 曹長の号令のもと、ライフル銃が一斉に火を吹いた。




◇勇/魔◆




 本来であれば、民家の曹長達の方から攻撃を始める手筈だった。

 しかし実際に戦闘の口火を切ったのは、僕の部隊の方だった。


 背を屈め、息を殺し、上手くスィパーヒー部隊の背後へと回りこんだ時、僕はあるものの存在に気がついた。


(……楡の木か)


 背の高い、葉も生い茂った楡の木が見えたのだ。

 農地と農地の間を走る道の交差点に聳え立つ楡は、平時であれば木陰で農民たちが涼む憩いの場であったろうと想像出来た。


「……」


 僕はハンドシグナルで、引き連れて来た射手達に身を沈めて草などに身を隠す事を命じ、僕自身は身を屈めながら、ゆっくりと楡の木の方へと近づいて行く。

 あの楡の木の上に登れば、スィパーヒー連中を上から見下ろす事が出来る筈だ。餓鬼の時分、果樹農園で下働きをしていたこともあるから木登りはかなり自信があった。

 装填済みのカービン銃を背の方に回し、スリングの長さを調節して体に密着させた。

 こうすれば落としたり、ぶつけて音を立てたりといった心配はない。

 準備が終われば、僕は楡の木を登り始めた。


「……」


 冷や汗が流れ、額や鼻の上を伝う。

 もしも木より落ちたり、うっかり枝の一本でも折ってしまえばスィパーヒーに気付かれてしまう。

 敵はオークの騎士だ。白兵戦になれば、勝ち目は無い。


(……よっしゃ)


 何とか気付かれずに登り切った。

 思いの外時間が掛ってしまった為に、スィパーヒー連中が妙な動きでも始めやしないかと冷や冷やしたが、どうにかなったみたいだ。


 楡の茂った葉の間より眼を眇め、敵の様子を窺う。


 磨き上げられた鋼の鎧は一級品の代物で、それを纏う体躯は威風堂々としている。

 その意匠は人間用甲冑のソレとは大きく異なっている。正直文化が違いすぎて、刻まれた文様などか意味している所はまるで解らない。それでも一級品の威容だけは、半分エルフ半分人間の僕にも感じ取ることができた。

 そのまま、首都で軍事パレードに出ても大丈夫そうだった。


 望遠鏡を取り出して、さらに詳細に様子を窺う。


(……あれは)


 見つけたのは、煌びやかな甲冑の中にあって特に意匠の凝ったヤツを一つ。

 赤色の、何の毛で出来ているかはよく解らない房飾りがついている。

 人間だろうと魔族だろうと、ああいう派手なのは士官だと相場が決まっている。


(士官狙いは……狙撃の常道)


 望遠鏡を仕舞い、背のカービン銃をゆっくりと正面へと回す。

 できるだけ静かにゆるやかに撃鉄を起こす。雷管は既に取りつけられ、弾丸弾薬の装填も済んでいる。

 彼我の距離を目測し、照尺の目盛りを動かして照門の高さを合わせる。

 不安定な木の上である事を計算しながら姿勢を整え、構え、片眼を瞑る。


 視線の先には、赤い房飾りのオーク騎士。息を止めて、手の震えを止める。


 僕は狙撃兵では無いし、その為の訓練も受けてはいない。

 しかしこの距離で、ライフルカービンを使うのならば――。


(当てられる!)


 ――今だ!そう思うや否や、僕は引き金を引いた。


「ッ!?」


 慣れない事をした為か、この距離で外した!

 弾丸は兜の房飾りを吹き飛ばしたが、それだけだ。

 僕は木から急いで飛び降りる。途中の枝を使って落下の速度を押さえつつ、転がる様に着地する。

 そして立ちあがって、大声で部下達に叫んだ。


「みんな立つんだ!そしてぶっ放せ!」


 叫びつつ、僕は腰より拳銃を引き抜いた。



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