夜明け前の夢物語
「どうしてこうなってしまったのだろう」
僕は人間に捕まってしまった。間も無く僕は殺されてしまうだろう。
それがこの世での僕の最後の記憶。
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世は京都が最も栄えたと云われる平安時代。僕は毎日を近所の友達と川で遊んだり、山へ行って日々の食料を調達したりしていた。
僕は俗に言う半妖という存在だった。このことに気がついたのは数え歳で18を越えた頃のことだった。
当時、僕はいつものように生活していたが友達の一人が京に知り合いがいるらしく、遊びに行こうと誘ったのだ。
それがきっと僕にとって人としての転換点だったのだろう。
僕たち田舎者にとって京へ行くというのは憧れそのものであった。
京には素晴らしいものがたくさんあり、僕はずっと目移りしていた。
そんな京の華やかさに目を奪われていた頃、京の人々は何やら慌ただしい様子だった。聞き耳を立てて話を聞いていた限りでは、昼間でありながら妖が京に侵入したらしいとの事であった。
京には陰陽師が張った結界により妖は京には近づくことができないようになっている。特に昼間は陽の気が強くなる為、人のいるところに出てくる、ということがそもそもないらしい。妖は陰の気を好む為、月が輝く夜中に出現しやすいらしい。
そんな結界が張られているにも関わらず妖が昼間から京に侵入している。これは前代未聞の出来事だったようだ。
京の全ての出入り口と高貴な身分の人たちの元に陰陽師が集められ守りが強化されていた。
僕たちは京にいることが安全なのか、外に行った方が安全なのかわからず友達の一人が知り合いの家に行くと言いだし京に留まることが決まった。
僕は初めて感じる違和感とえも言われぬ寒気で吐き気を催していた為、友達のその提案はすごくありがたかった。
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夜になった。
夜の京は結界が緩みやすくなるらしく、結界できた穴を潜ってくる妖は多々いるらしい。今宵も守りは強化されているみたいだが、全ての穴を塞ぐことはできないみたいだ。
僕たちは友達の知り合いの家で夜ご飯をご馳走になり、翌朝すぐに帰れるよう早くに床に着いていた。
僕は強くなる吐き気と寒気に襲われながらも全身の血が熱くなっていくのを感じていた。 夜の京は危険であると言われていたが身体を冷ます為にも近くを散歩しようと外に出た。
一番強い理由としては好奇心によるものであるが。
夜の京は昼の京よりも空気が心地よいと感じた。それと同時に全身の血はまた熱くなり、思い切り走りたい。という欲が生まれた。
僕は走った。京の都を思い切り走った。
僕は驚いた。まるで風のように速く、風のように自在に走れたのだ。
僕の身体能力は並みの人たちよりも少し高いくらいでこんなに速く走れるとは思ってもいなかったのだ。あまりにも速く走れるので、これは空だって飛ぶことができるのではないかと思った。
僕は助走をつけて、屋根に向かって跳び上がった。すると、とんでもない高さまで上がり屋根の高さを遥かに超え、京の都を一望できる高さまで上がったのだ。
僕は付近の風を集め操り、大きな池の側へ静かに着地した。
僕は池に映る自分の姿が今までの僕の姿と違っているのを見て、思わず二度見した。
そこには、顔のパーツはあまり変わっていないものの髪は灰色に、目の色は赤色に、口からは二本の長い犬歯が見えていた。
僕はもうただの人間ではないということを悟らざるを得なかった。友達の元に帰ることもできなくなったということも悟った。
僕はこの日を境に友達から姿を消し、京の都からも姿を消した。
お目汚しで申し訳ございません。
ご指摘が、あればどんどんください。成長する為にお願いします。