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レイライン(直線配置構造物)

「さて、どれだけ私達が頭を付き合わせた所で、所詮は魔女と悪魔。シャンダウ・ローがいい気になるのは嫌だけど、どうする事もできないのよね」


 リザリィが席に戻り、飲み直しとばかりに缶酎ハイを空けていた。


「まぁ、龍脈の流れを少しずつ探っていくしかないな。この街周辺の龍脈の流れで、おかしな所は今の所100箇所ほど」


 縫香さんも缶の焼酎を飲み、コイルはビールを飲んでいた。


「共通点らしきものもみつからなければ、なにかの法則性がある様にも見えませんな」


「まぁ、一つ可能性があるとすれば……」


「やはり、レイラインの可能性を考えますかね」


 コイルが口元を歪めてニヤレと笑った。


「レイラインって何ですか?」


「世界の遺跡とかはね、時々、真っ直ぐ並んで立てられている事があるの。例えばピラミッドが三つ並んでいる写真、お兄ちゃんは見た事ない?」


「そう言えば、風水の本にそんな事が書かれていたような……」


 先日買った風水の本、まだまともには読んでないが、古代の建物が規則正しく並んでいるのは、龍脈にそって建てられたからだとか書かれていた。


「人間が魔力を活用する為に、龍脈に沿って作られた建物達は健全な魔力の使い方だ。逆に、魔力をコントロールする為に、複数の建造物を並べて作り、力を押さえ込むとなると、かなり大がかりな事になるな」


「宗教関係なら、人材と資金には困らないでしょうしな」


「あんた達さー、人間の探偵とかに知り合いは居ないのー? そういう宗教関係の裏を探ってくれそうなやつー」


「居ないねぇ」


 縫香さんが目を大きくあけ、コイルみたいに笑っておどけた顔を見せた。

 つまり、お手上げって事だった。


「十年近く調べてきて、何の情報も無いんだなこれが。俺達なんて、そのうちのほんの数年。他の魔法使いや悪魔達も嗅ぎ回って収穫ゼロ、やれやれだ」


「明らかに隠されてるって事じゃないですか?」


「明らかに隠されてるっていうなら、1箇所、心当たりがある」


「それってどこよー?」


 縫香さんがテレビの側のマガジンラックから一冊の本を取り出して、テーブルの上に置いた。

 それは毎年、最新のデートコースが紹介されている本だった。


「この街と隣の町に跨がる様に作られた、一連のリゾートエリア」


「かのしまファミリーパーク、わんわん動物ランド、かのしまスパガーデン、ですか」


 これらのデートスポットは有名だが、それぞれは全く別の所に作られていて、一貫性は無いと思っていた。

 かのしまファミリーパークは、昔この地に博覧会を誘致しようとして失敗し、空き地に建てられた遊園地だった。

 そしてそこから少し離れて山側に行った所に天然温泉が湧き出す所があり、大浴場が建てられた。動物ランドに至っては、なぜそんな所に建てたのかもよく分からなかった。


 そしてそれらの所には、俺もそれぞれ一度ずつ、両親と共に行った事があり、良い想い出のある場所だった。


「よーし、わかったぁ! あとは私にまかせてー」


 何を思ったのか、リザリィが本をぶんどって、いきり立った。

 皆も何の事やら分からず、唖然としてリザリィを見ていた。


「ダーリン! 真結ちゃん! 泊まり込みでデートするわよ! もちろん混浴でね!」


「スパガーデンに混浴は無いし、ファミリーパークもそんなには大きくないよ……」


「デートなんてぇ、口実はなんだっていいのよ、一緒にイチャイチャできればそれでいいのよー。あとは獲物の隙をねらってチューできればそれでいいのよ」


(相変わらず、リザリィは最後に本音を言うんだなぁ……)


「いいんじゃないか? 三人で行ってみな、私達が一人で行ってもつまらない所だし」


「それじゃあ、デートコースとスケジュールはぁ、リザリィが考えてくるわねぇ。楽しい事になりそうだわぁ、フフフフフ」


「真結ちゃん、どうする?」


「えっ、行くんじゃないの?」


 その答えを聞いて頬白の方を見ると、行く気満々で目を輝かせていた。


「そ、そうだね、行こうか」


 一応これは、リザリィが俺と頬白を陥れようとして考えついた事であって、下心に満ち溢れている提案だった。

 それなのに、頬白までもがやる気になっているのは、どういう事だろう。


「私、頑張ってお弁当作るからね!」


(ああ、お弁当のリベンジか……)


 今、頬白が意気込んでいるのは、今度こそうまくやってやる、という事なのだろう。


「ねぇ、町田君達も誘わない?」


「そうだね、一緒の方が楽しそうだね」


「ダメ、これはリザリィと真結ちゃん達との、ラブラブデートなの」


「じゃあいかない」


 珍しく、頬白がムスッとした顔をしてそう言った。初めて見る、彼女のわがままだった。


「チッ、これだから女ってほんと、わがままよなー、思い通りにいかないと全否定なのなー、弘則もこれから色々大変なー!」


「リザリィ、ただのよっぱらったオッサンみたいな口調になってる」


「あらやだ。もう仕方ないわねぇ、かしこ達も誘っていいけど、レイラインの調査って事も忘れないでよね」


「やった! かしこちゃんともデートできるね!」


「えっ、何それ、どーいう事?」


「頬白は、来島さんが好きなんだよ」


「レズなの!? リザリィはかしこも落とさないとダメなの!? でもかしこは絶対レズじゃないわよ!?」


「さすが悪魔というべきか……好きだからって肉体関係には繋がらないよ」


 こちらが和気藹々とデートの相談をしている時、その向こうでは硯ちゃん、縫香さん、襟亜さんとコイルが何かを相談していた。

 おそらくは、向こうは向こうで龍脈の事を調査をするのだろう。


 頬白は、皆で楽しくデートができる予定ができて、とても嬉しそうだった。

 俺も頬白とデートをするのはこれが初めてで、自分一人では誘う事なんて、いつになるかわからなかったから、これで良かったように思えた。


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