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ぱんつは何色が好きなのぉ?


 いきなり上半身の服を脱ぎ始めたリザリィの手を慌ててとめた。


「なぁんでよー、べつにいーじゃないのー、女の子がこーして誘ってるんだからぁー」


 子供のように甘えてだだをコネながらイヤイヤをする姿は、悪魔とは思えない可愛らしさだった。

 でも、こんな風にいきなり色仕掛けをしてくるのは、悪魔だからこそだろう。


(そう言えば、縫香さんがそんな事を言ってた……)


 いきなり目の前で服を脱ぎ、その美麗な身体を好きにして良いぞと言われた。

 そして、その事について、ライザリは同じ事をしてくると言っていた。

 まさにそれが今だった。


(間違いない、この子はライザリだ)


 ライザリの目的は真結を手に入れる事。そして真結は現在俺と交際している。

 まずは俺を陥落し、真結との交際を破綻させた後に、彼女を手に入れるという手筈。

 要は俺が落ちなければ、それでいいのだ。

 腕っ節や魔法の戦いじゃなければ、なんとか頑張れる筈だ。


「ぱんつは何色が好きなのぉ?」


 今度はそう言いながら、スカートを両手で掴んでぴらっと持ち上げた。

 白くてふわふわした下着が見えたが、すぐ視線を反らした。


「いきなり下着を見せないで下さい」


 ダメかもしれない。俺だって男だし、異性への興味は旺盛だし、あの手この手で色々見せられたら心が揺らいでしまうかもしれない。

 今、視線を反らしはしたが、目の奥にはしっかりと下着の形が焼き付いていた。

 縫香さんの全裸に比べれば、まだまだ刺激は少ないが、男にとって女の子の下着は、いつだって魅力的だった。


「うーん、これは堅物だわ。よりによりってこんな男を相手に選ぶとは……いや、頬白姉妹の用意周到さはしれた事。さすがに手強いかぁ」


 なんとか諦めてくれたのか、リザリィはベッドの上でゴロゴロとくつろぎ始めてしまった。

 そうしているだけなら、可愛らしい客人なのだが。


「あー、しまったなぁ、魔法効かないとか知らなかったしなぁ、しかも色仕掛けもだめって、男としてどうなのよって感じだしぃ、もしかしてオカマ? そっち方面なの? それだと私じゃ無理だしぃ」


「オカマさんじゃないですから。ごく普通ですから」


「じゃあ、なんでよー、キスぐらい、いいじゃないのー」


「もし、俺が誰とも交際してないなら、してるかもしれませんけど」


「なんでフリーのあなたを私が落とさなきゃいけないのよ、本命は真結ちゃんなんだからね」


「知ってます」


「あ、もしかして、こうして女心をつなぎ止めて置いて、プチハーレムな感じを望んでるわけ? それって結構策士よね、沢山の女の子から告白されたいのよね」


「そんなにモテないですから。頬白とも、設定上で交際をしているって所から始まっているんですよ? 設定が無かったら交際してませんよ」


「あらそうなの? ていうかあなた達、まだ何も無し? 名字で呼んでるぐらいだし?」


「い、いえ、真結と俺は、正式に、公的に交際してますし、お弁当とか作ってもらいますし」


「ほー……お弁当……わかったわ、じゃ、それで」


 何を納得したのか、リザリィは片手をすちゃっと立てて挨拶すると、窓を開けて外に出た。


「あら、ライザリじゃない。何をしてるのかしら、そんな所で」


 窓から下を見ると、まだ買い物に行ってなかったらしい襟亜さんと頬白が、玄関先に立ってこちらを見上げていた。


「久しぶりだなクロービス、えっと、こっちの名前ではなんだっけか。まぁ、どうでも良いわ。この男は私がそのうち頂くからそのつもりでいろ。という訳だ運命の魔女よ」


「あ、どうもはじめまして、頬白真結です」


「可愛いのぅ可愛いのぅ、私と結婚しないか? 今すぐに」


「ムリ!」


「ケッ、所詮は女なんてそんな物だな! 外面だけ可愛くっても、中身はどうか分かったものではないな!」


「その言葉、全てあなた自身にブーメランしてますわよ?」


「相変わらずの口の悪さだな。コイルもどうしてこんな女が好きなのか、未だに理解できん」


「あの人、ぶった切られるのが好きだから」


「男女の中は様々な形があるものだのぅ。そのうちコイルと共にそちらの家に挨拶しにいくとしよう。シドニーに伝えておけ、シャンダウの件で話があると。ではさらば」


 リザリィは軽々と空へ跳躍すると百の蝙蝠の姿に変身し、その蝙蝠達もすぐに霧散して消えてしまった。


「ひろくん、大丈夫?」


「うん、大丈夫。いきなり部屋に来ててびっくりしたけど、それだけで何もされなかったから」


「良かった」


「色々面倒臭い子だし、ゴリ押ししてくると思うけど、頑張って耐えてね。弓塚くん、あなたなら大丈夫だから」


 いつもなら冷やかしの一言でしめる所を、真顔で俺の事を大丈夫だと言ってくれた。

 それは信頼しているという意味でもあり、今の俺にはとても助けになる一言だった。

 少なくとも、血なまぐさい戦いでなければ、俺にも頑張れる部分はあるだろう。

 それに、今は頬白以外の女の子と、特別に仲良くなりたいとも思えなかった。


 町田はそれを恋だと言った。そうなのかもしれない。

 いくら設定上の幼なじみで、交際しているという事になっていたとしても、性格があわなければ、うまくいかなかったかもしれない。

 頬白真結という女の子は、設定とは無関係に、人と人として、共に一生を添い遂げたくなる様な存在だった。


 買い物に行く襟亜さんと頬白を見送った後、窓を閉めてベッドの上に寝転んだ。

 すると、リザリィがつけていたのか、香水のような良い香りがした。

 背中の辺りに、何かが挟まっていたので、引っ張り出してみると、リザリィがつけていた下着が出てきて、思わず吹きだしてしまった。


(こんなの置いていかれても……どうすりゃいいんだよ……)


 捨てるのもなんだか嫌だし、しまっておくのもどうかと思うし、これほど処置にこまる物は無かった。

 ちなみにちょっと匂いを嗅いでみると、とても良い香りがしたが、これは秘密にしておこう。


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