5/10
裏切り
裏切り、妬み、誹謗、中傷、
俺は -お前- が嫌いだった。
「生きてる価値なんかない」
そう教えてくれたのは、 -お前- だった。
苦しい、辛い、呆れた、 そして、諦め。
くだらない。 そう思うことすら、そう。
笑うしかない、この感覚。
お前との差は広がるばかり。
昔の俺のポジションが、
いつの間にか -お前- のモノに変わっていて、
気が付けば、俺は部屋の中にいた。
ここはどこだ?
考えてみて、すぐにわからなかった。
つい先日まで、俺を中心に世界が廻ってると思っていた。
だけど、実際は違った。
俺が部屋に引き籠ったところで、
俺の家に訪ねてくる奴は誰もいないし、
ましてや、メールも電話さえもなかった。
あぁ、俺はこんなにも惨めな人生を歩んでいたんだ。
そこで初めて思い知らされた。
いや、 -お前- に教わった。
教えてくれてありがとう。
-お前- にはただ、感謝の言葉が思い浮かぶ。
これでもう、こんな世の中で生きなくても済む。
俺は、これから先、何も考えなくても済む。
ありがとう。
それだけは、 -お前- に感謝してる。