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アリスと出会って、半年が過ぎた。
その間に俺とアリスとの間にもいろいろな変化はあった。
あのたった一日の出来事によって俺は大きく変化した。
今思えば、尋常な精神でなければ間違いなく耐え切れなかったに違いない。
母は死んで義妹ができ、俺は記憶をなくす。
なにより、初音のことを忘れていた。
そのことだけが今となっても悪夢を呼ぶ。
いっそう、忘れられれば……否、これは俺に与えられた唯一無二の罰。
そして、それは今現在、俺の睡眠を邪魔していた。
「はつ、……」
大量の汗で地面を濡らし、俺は覚醒する。
深夜にも限らず、この美しい野原は月光を浴びより一層美しさを増す。
いったい、俺たちはこの美しい野原をどれだけ放浪したのだろうか。来た道とこれから進む道を交差して、何も変わらないこの風景にぞっとしてしまう。
アリスは隣で瞳を閉じている。その白くて美しい横顔にそっと手を添え、俺は微笑する。
「お前は俺をどこに連れて行く気だよ」
どうでもいい。
その後、俺はアリスを軽く抱きしめ、眠りにつく。抱きしめた瞬間、アリスが少しだけ微笑んだ気がする。
そんな少女の微笑みに俺は何度助けられた?
この俺とアリスだけの世界は一体、いつまで続くのか?
――いつまで、この少女の微笑みを俺は見ていられるのだろうか?
そんなこと、考えなければいい。このような結論に何回いっただろうか。
だからこそ、俺は決着をつけなければいけない。
俺に神の力が宿されているというなら。
――この力で俺は初音と再会する。そして――