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Death or Dead 《血塗られた聖戦》  作者: 佐島黎介
・1章 紅蓮の剣士
3/4

─1─

「啓太、後ろ!!」



その声に応じて背後の男を斬りつける。予想外だったらしい。斬られた男の顔は驚愕に包まれていた。



しかし、男の体は切断されることもなく、ただ意識を失った。



「なんとか今日も生き残れたな」



一段落したところで相棒である逢に声を掛ける。逢の顔には汗一つない。かくいう俺も息一つ乱れてないが。



「そうね。それにしても啓太。何か最近動きが鈍くなってない?何かあったの?」



「ん?そんなことはない。それより帰って明日の準備しないとな」



「……うん。そうね。帰りましょ!」



逢は一瞬怪訝な表情をしたものの、直ぐに元の笑顔に戻った。そして俺達は今の住み処であるホテルへむかった。



今の質問は少し危なかった。もう少しでアレがバレるところだった。アレはまだ気づかれてはいけない。絶対に。逢にだけは。



◆◇◆◇◆◇



現実世界に戻るという出来事があってから1ヶ月が過ぎた。



俺は殆どの記憶を取り戻していた。ここでの戦いかた。この剣の使い方。体術。



だが、まだ思い出せない記憶がある。思い出すのを避けているって言ったほうが正解かもしれない。


何回か思い出そうとしたが、その度に強烈な吐き気に見舞われ、何かに胸を黒く塗り潰されそうになった。思い出したら絶対正気ではいられない。

そんな気がした。



ここはテグラスから少し離れた町・シルド。鍛冶で栄えているこの町は多くの剣士のような服装をした人たちで賑わっていた。



いや、賑わってはいない。



表情はみんな酷く疲れているか、死んでいた。それもそうであろう。誰もが現実世界で並み一通りでない苦しみを味わい、あまつさえこんな訳のわからない世界に送られていたのだから。



だが俺にはその苦しみの記憶がないのだ。苦しみは強ければ強いほど強力な能力を生み出す。それゆえに最近の俺の動きが逢には力なく感じたのだろう。



俺は今能力を使えないのだから。


◆◇◆◇◆◇


ホテルに戻った俺達の耳にロビーのほうから男の怒号、そして女の子の悲鳴が聞こえた。急いでそのばしょに向かう。



ロビーに着いた俺達は少女が男数人に囲まれているのを見つけた。少女は怯え、男達はそれを面白がっているように感じた。



先に動いたのは逢だった。逢は瞬動を使い、一人の男を後ろから殴り倒した。他の男も一瞬怯んだものの、すぐさま攻撃に転じた。



俺も逢を援護するために瞬動を使い、男達の目の前に立ち、その勢いで二人を蹴りとばす。



男達は直ぐに起き上がり、そして、一人は手が獣のように変形し、もう一人は銃口が通常の何倍もあるマシンガンをもち攻撃を仕掛けてくる。



二人ともはっきりとした能力をもっていた。俺は厄介なことにならないように一瞬で終わらせることにした。



愛剣・リライトを抜く。刀身は蒼く澄んでいて見るたびに心が洗われる。



俺は襲い掛かってくる二人の間を瞬動でくぐり、マシンガン男の意識を刈り取った。獣男の顔が一瞬怯む。戦場ではその一瞬が命取りだ。



俺はもう一人の頭上に瞬動し、上から両断した。ように獣男は感じただろう。



久しぶりの能力持ちとの戦闘だった。逢のほうも一段落したようで、先ほどの少女と一緒にこっちに歩いてきた。



「本当にありがとうございました!!」



「いいって。気にするな」



少女はこれでもかというほど頭を下げてきたので、焦ったが今は一応落ち着いている。



少女の背丈は百五十後半。髪は茶色く、ショートで笑顔に曇りがなく活発なように感じられた。



「とりあえず部屋に戻ろう。えーっと……」



「雅です。新條雅しんじょうみやび。」




「わかった。俺は一城啓太。啓太でいいぞ」


「私は桐島逢。私も逢でいいよ!」



「啓太さんと逢さんですね。よろしくお願いします」



雅は大きく頭を下げた。俯け気味にした雅が笑みをこぼす。


ニヤリ、と。


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