第8話 世界は心の中にある
世界は、目に見えるものだけでできているのでしょうか。
第8話「メンタリズム」です。
最近、妙にうまくいきすぎている。
掲示板は落ち着いた。
文化祭の空気も安定。
三人との距離も近い。
「……なんで?」
俺は屋上で呟いた。
レスポンサが隣に立つ。
「あなたが変わったから」
ポラリスが腕を組む。
「極が安定してる」
カウサリスがノートをめくる。
「因果の置き方が洗練されたでござる」
ジェミナスが静かに言う。
「それだけじゃない」
風が止む。
「メンタリズム」
全員が彼を見る。
「現象世界は、THE ALL の精神による心的創造物にすぎない」
静寂。
ヴィブラティオが眉を上げる。
「急にスケールでかい」
ジェミナスは続ける。
「宇宙全体が、精神の中に存在している」
「私たちは、その精神の中で生き、動き、存在している」
俺は空を見上げる。
「つまり……」
「世界は物質が先ではない」
レスポンサが小さく呟く。
「精神が先」
カウサリスが目を輝かせる。
「ならば説明可能でござる」
「超心理現象も、引き寄せも、共鳴も」
ポラリスが言う。
「あなたが中心にいる理由も」
俺は眉を寄せる。
「中心?」
ジェミナスが微笑む。
「あなたの波動が状況を引き寄せている」
「鏡も、振動も、因果も、創造も」
「全部、精神の中で起きている」
その瞬間、胸が静かに熱を持つ。
俺が変わる。
空気が変わる。
人が動く。
「エネルギーも、力も、物質も」
ジェミナスが言う。
「精神の支配に従属している」
風が揺れる。
校舎の景色が、ほんの一瞬、淡く歪む。
「……今」
ポラリスが息を呑む。
カウサリスが震える。
「場の密度が変わったでござる」
俺は目を閉じる。
もし宇宙が精神の中にあるなら。
なら。
俺の内側が整えば、外側も整う。
「マスターキー」
ジェミナスが呟く。
「精神法則を知的に、意識的に使う力」
ラセルドゥスの声が風に混じる。
「そこに至ったか」
屋上の縁に立つ影。
「だが、理解と支配は違う」
空気が重くなる。
「世界が精神ならば、恐怖もまた精神」
その瞬間、校内に緊急アラームが鳴る。
パニック。
ざわめき。
不安。
低い振動が一気に広がる。
俺の胸が揺れる。
「精神が先なら」
俺は息を整える。
「まず、俺が落ち着く」
深く、ゆっくり。
恐怖を否定しない。
ただ観測する。
少しずつ、空気が安定する。
アラームは誤作動だった。
ざわめきが収束する。
カウサリスが震える。
「精神が現象を上書きしたでござる」
ジェミナスが静かに頷く。
「理解した者は、応用できる」
俺は気づく。
彼女たちが引かれる理由。
特別だからじゃない。
俺の内側が整い始めたから。
それが共鳴している。
ラセルドゥスが目を細める。
「精神の神殿に、足を踏み入れたか」
空が静まる。
世界は物質ではなく、精神。
なら。
盤面そのものが、心の中にある。
俺は静かに笑った。
七つの法則は、道具だ。
本体は――
心。
第8話を読んでいただきありがとうございます。
精神が先にあり、世界はあとから形を取る。
次回、七原理が交差します。
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