第6話 原因を置く
人は流れに乗ることもできますが、
流れに向きを与えることもできます。
第6話「原因を置く」です。
最近、視線が増えた。
廊下を歩けばひそひそ声。
「文化祭のときの…」
「ラセルドゥスに対抗したって」
「特別扱い?」
俺はため息をついた。
「流れ、来てるね」
ヴィブラティオが笑う。
「流されるな」
ポラリスが腕を組む。
「検証が必要でござる」
カウサリスがノートを構える。
「ちょっと待て」
俺は言う。
三人が同時に腕を掴んだ。
「話がある」
「確認がある」
「重大でござる」
周囲がざわつく。
「……人気者」
誰かが呟く。
俺は思う。
また流れだ。
◆
屋上。
風が強い。
レスポンサが先に口を開く。
「あなた、自分のことどう思ってるの?」
「どうって?」
「特別だと思ってる?」
ポラリスが割って入る。
「どこに立つつもり?」
カウサリスが腕を組む。
「今のままでは受動的でござる」
「掲示板の件も、放置は因果を固定するでござる」
俺は目を閉じる。
掲示板にはこう書かれていた。
“アニムスは特別扱いされている”
“七法則の中心気取り”
確かに、反応しなかった。
流していた。
「それが原因を置いていない状態でござる」
カウサリスが言う。
「駒は流れに従うだけ」
レスポンサが少し怒る。
「あなたは、どうしたいの?」
ポラリスが小さく言う。
「中央に立つって言ったじゃない」
風が吹く。
俺は今まで、“探して”いた。
自分が何者か。
記憶がないから。
でも。
カウサリスの言葉が響く。
――原因を置け。
「探すんじゃなくて」
三人がこちらを見る。
「決める」
静寂。
「俺は、流れない」
それは大きな宣言じゃない。
でも、確かな選択。
レスポンサが微笑む。
「それ、初めて」
ポラリスが少しだけ頬を赤くする。
「……悪くない」
カウサリスが頷く。
「主体的選択でござる」
「それ自体が原因でござる」
俺は続ける。
「掲示板は放置しない」
「明日、全校ミーティングで話す」
三人が同時に固まる。
「は?」
「マジで?」
「大胆でござる」
「誤解があるなら、俺が説明する」
「俺は特別じゃない」
「でも、逃げない」
風が止む。
◆
翌日。
全校集会。
ざわつく体育館。
俺はマイクの前に立つ。
「特別扱いなんて、されてない」
「でも、七法則を使うことは選んでいる」
「俺は流されない」
短い言葉。
沈黙。
そして。
拍手が、少し。
空気が変わる。
掲示板の流れが止まる。
カウサリスが小声で言う。
「因果が動いたでござる」
ポラリスが腕を組む。
「度合いが中央に戻った」
レスポンサが笑う。
「鏡、変わった」
俺は気づく。
原因は大きな行動じゃない。
意図。
選択。
決断。
それが盤面を変える。
屋上。
ラセルドゥスが静かに見下ろしている。
「自覚したか」
小さく笑う。
「ならば次は、創造だ」
風が強く吹いた。
七つ。
何かが、揃い始めている。
俺は初めて、自分で一歩を置いた。
盤上に。
第6話を読んでいただきありがとうございます。
小さな選択が、盤面を動かし始めました。
次回は「創造」。
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