第12話 マスターキー
特別な力は、特別な人のものではありません。
気づいたとき、それは誰の中にもあります。
第12話「マスターキー」です。
体育館は静まり返っている。
レイガは立っている。
怒りは薄れている。
ラセルドゥスは影のまま。
俺は静かに言う。
「七つは、特別な力じゃない」
空気が澄む。
「誰でもアクセスできる」
レスポンサが微笑む。
「気づくだけ」
ヴィブラティオが頷く。
「振動は常にある」
ポラリスが言う。
「極も最初からある」
リズミアが笑う。
「揺れてるのは当たり前」
カウサリスが続ける。
「因果も常に動いているでござる」
ジェミナスが静かに言う。
「創造も、止まっていない」
俺は息を整える。
「ただ」
「目が開いた者だけが、使いこなせる」
静寂。
「師の足跡が落ちるところに」
空気がわずかに震える。
「教えを受ける準備のできた者の耳は開かれる」
ラセルドゥスの目が揺らぐ。
レイガが顔を上げる。
「準備……」
俺は続ける。
「マスターキーは特別な鍵じゃない」
「気づきだ」
空間が淡く歪む。
体育館の壁が透ける。
七つのエンブレムがゆっくり回転する。
「この鍵を持った者は」
「精神の神殿の扉を、自分で開けられる」
ラセルドゥスが笑う。
「ならば」
「私は何だ」
俺は静かに見る。
「お前も、俺の一部だ」
静寂。
体育館が完全に透明になる。
空間が、心の内側に反転する。
レイガの姿が揺れる。
「俺も……?」
俺は頷く。
「恐怖も、怒りも、物理主義も」
「全部、俺の中にある可能性」
ラセルドゥスの影がひび割れる。
「ならば」
「敵はいない」
俺は目を閉じる。
恐怖を否定しない。
怒りを否定しない。
物理も否定しない。
すべてを統合する。
七つのエンブレムが重なり、ひとつの光になる。
それは、派手ではない。
ただ、静かだ。
ラセルドゥスの輪郭が崩れる。
レイガの目から力が抜ける。
「俺は……」
レイガが小さく笑う。
「怖かっただけか」
ラセルドゥスが最後に言う。
「気づいたな」
その姿が光に溶ける。
体育館が元に戻る。
静寂。
レスポンサが言う。
「終わった?」
俺は首を振る。
「始まりだ」
七つの法則は消えない。
誰でもアクセスできる。
ただ。
準備ができた者だけが、聞こえる。
風が吹く。
屋上に立つ。
空は静かだ。
俺は笑う。
世界は、心の中にある。
そして。
心は、誰にでもある。
(THE END)
第12話まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
七つの法則は物語の中だけのものではなく、誰にでも開かれています。
もし何か一つでも持ち帰っていただけたなら嬉しいです。




