第10話 逆転する世界
世界は物質が先か、精神が先か。
どちらの立場にも、理屈があります。
第10話「逆転する世界」です。
空気が変わった。
廊下の視線が冷たい。
体育館での出来事の後。
「高度は維持できるか?」
ラセルドゥスの言葉が残っている。
その翌日。
校内掲示板に新しい思想が広がる。
「精神なんて幻想」
「脳が作る副産物」
「物理が先、意識はあと」
カウサリスが顔をしかめる。
「逆メンタリズムでござる」
ポラリスが呟く。
「極を反転させた」
ジェミナスが静かに言う。
「集団無意識を刺激している」
体育館に全校が集められる。
壇上に立つのは――
刃堂 玲牙。
長髪が揺れる。
三白眼が鋭く光る。
「お前ら、目を覚ませ」
低い声。
「物質が先だ」
「脳があるから意識がある」
「精神が宇宙? 笑わせるな」
ざわめきが広がる。
ラセルドゥスが影のように立つ。
「集団意識は強い」
「多数が信じるものが、現実を支配する」
空気が重くなる。
ジェミナスが震える。
「高度が落ちている」
【100】恐怖
【150】怒り
【175】プライド
体育館の空間が歪む。
レイガが拳を握る。
「精神なんて弱者の逃げだ!」
歓声が上がる。
振動が一気に低下する。
俺の胸が締めつけられる。
視界が重くなる。
「現実は物質だ」
レイガ。
「殴れば痛い。壊せば終わる」
その瞬間。
床がひび割れたように見える。
精神が後退する。
「副産物説を集団に植え付けている」
カウサリス。
「精神を下位に置くことで、振動を固定するでござる」
ラセルドゥスが微笑む。
「精神が副産物なら、制御も不要」
「恐怖は正当化される」
空気が冷える。
レイガがこちらを見る。
「お前らの理屈、ここで証明してみろよ」
拳を振り上げる。
衝撃。
俺は吹き飛ばされる。
痛み。
物理的現実。
「どうした? 精神で治せよ」
笑いが広がる。
振動が落ちる。
【75】悲嘆
【50】無気力
ジェミナスの声が遠くなる。
「高度を保って」
でも。
集団無意識が重い。
ラセルドゥスが言う。
「物理世界が先にあり、その副産物として意識が現れる」
「それを信じれば、精神は従属する」
視界が暗くなる。
俺は地面に手をつく。
確かに、痛い。
物理はある。
だが。
痛みを“どう見るか”は?
呼吸を整える。
恐怖を否定しない。
観測する。
レイガの目が揺れる。
「……何で笑ってる」
俺は立ち上がる。
「物質が先でも、いい」
ラセルドゥスが目を細める。
「だが、その解釈を決めるのは精神だ」
一瞬、空気が止まる。
ポラリスが叫ぶ。
「極を戻して!」
ヴィブラティオが共鳴を広げる。
カウサリスが叫ぶ。
「原因を置け!」
ジェミナスが囁く。
「内側へ」
俺は目を閉じる。
痛みを拒絶しない。
でも、恐怖を選ばない。
【200】勇気
体育館の歪みがわずかに戻る。
レイガが後ずさる。
ラセルドゥスが小さく笑う。
「面白い」
「だが、集団意識は強い」
空気はまだ重い。
これは試練。
物理か、精神か。
副産物か、創造か。
俺は息を整える。
盤面は揺れている。
次は。
統合だ。
第10話を読んでいただきありがとうございます。
物質と精神。
どちらか一方だけでは語れないのかもしれません。
次回、統合へ。




