表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お払い箱の聖女は占いで食べていく 〜冷徹な騎士団長が、なぜか毎日来る〜  作者: 丸ノ内きみこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/24

09.

レオンとカイエンが隅っこでせっせと書類を捌いている、ある日の午後。

カランカラン、と軽やかな鈴の音と共に、以前よりもずっと足取りの軽い「常連」が姿を見せる。


「ミコトさん! こんにちは!」


フードを外し、透き通るような若草色のオーラを振りまきながら入ってきたのは、エルフの青年・ルニ。以前の青ざめた顔が嘘のように、今の彼は内側から発光しているような瑞々しさに満ちている。


「あら、ルニくん。顔色が良くなったわね。……その様子だと、何かいいことがあったのかしら?」


ミコトが微笑みながら尋ねると、ルニは頬を赤らめ、大事そうに抱えていた小さな花束をカウンターに置く。


「はい! あの後、ミコトさんに言われた通り、自分を磨くことから始めたんです。魔法で気を引こうとするんじゃなく、毎日彼女の仕事を手伝って、自分の言葉で想いを伝えて……。そうしたら昨日、彼女から『最近のあなた、とても素敵ね』って言ってもらえたんです!」


「あら、良かったじゃない。おめでとう」


「それで、来週の星祭り、彼女と一緒に回ることになりました! これ、そのお礼です。僕の里でしか咲かない、浄化の力がある花なんです」


ルニが嬉しそうに報告する傍らで、鑑定室の隅から「……ミコト」と、低く地を這うような声が響く。


見れば、レオンがペンを握りつぶさんばかりの勢いでルニを凝視している。その頭上では、せっかく落ち着いていたピンク色のオーラが、再び「どす黒い嫉妬の紫」を帯びて渦巻いていた。


「……星祭り、だと? 私はその日、夜通しの警備が入っているのだが。なぜその男があなたに花を贈り、祭りの報告をしているのだ」


「レオンさん、ルニくんは純粋にお礼に来てくれただけよ。……ルニくん、気にしないで。この人、最近ちょっと情緒が不安定なの」


「あ、あの……団長閣下、お久しぶりです」


ルニは、帝国最強の騎士が放つ「本物の威圧感」に身を縮めた。けれど、今の彼には自分を信じる強さがある。


「団長閣下、僕、ミコトさんに救われたんです。だから、僕が彼女と幸せになることが、ミコトさんへの一番の恩返しだと思ってます!」


真っ直ぐなルニの言葉に、レオンは毒気を抜かれたように毒々しいオーラを霧散させる。


「……。……ふん、精々その幼馴染を泣かせぬことだ」


レオンがぶっきらぼうに視線を書類に戻すと、ミコトはルニにそっとお守り代わりの「お清めハーブ」を渡す。


「良かったわね、ルニくん。恋を叶えるのは魔法じゃなくて、あなたのその誠実さよ。星祭り、楽しんできなさいな」


「はい! ありがとうございます!」


ルニが軽やかに店を出ていくと、店内には再び、ペンが紙を走る音と、レオンの深い溜息だけが残る。


「……ミコト。星祭り、警備の合間に少しだけなら時間が作れるかもしれない。……その、あなたの店に屋台の菓子でも持ってきても、迷惑ではないか?」


「ふふ、あなたって本当に……。いいわよ、待ってるから。ただし、最高級の塩じゃなくて、たまには普通の綿菓子でも買ってきてちょうだいね」


ミコトの言葉に、レオンのオーラは瞬く間に「直視できないほどのハッピーピンク」に染まり、彼は猛烈な勢いで残りの書類を片付け始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ