体育―外
三題噺もどき―はっぴゃくなな。
頭上には、晴れた空が広がっている。
水彩画のように、水色に白が滲むその景色は、いい写真の材料になりそうだ。
日が暮れた橙も好きだが、この水色も嫌いではない。
……後は、風さえなければ完璧だったのだけど。
「……さむ」
強い風が吹く中、私は外に立っていた。
手には、慣れないグローブを付けて、球がこちらに飛んでこないようにと祈りながら。
どうしてこんな寒い中で体育をしないといけないのかと、疑問を抱えながら。
「……」
少し離れた位置には、クラスメイトの女子が楽しそうにソフトボールをしている。
教師が言うには、一応、やるべきことはある程度終わっていて、他にすることもないので、外でソフトボールでもしようとなったらしい。……ならばせめて室内競技にしてくれ。どうせ学期末にクラスマッチとかあるんだから……。
「……」
まぁ、どうせ、そのクラスマッチの種目にソフトボールがあるからさせているのだろう。
一応、バレーとバスケ、サッカーとソフトボールがあるらしい。
私は多分、バレーかバスケになるが、基本的にカメラを持って動き回っているので、そのまま出ずに済まないだろうかと願っている。人数は足りているからな。
「……」
今目の前で繰り広げられている、ゆるゆるの試合には、一応私も参加者ではあるが、どうぞそのまま忘れていてくれと思う。
こちらに人が居ることが分かれば、こっちに球が飛んでくるかもしれない。
ただでさえ、運動が苦手でとくに球技は嫌いなのに、普段からしているわけでもない自分専用の物でもないグローブを付けて、寒さの中で震えて、何ができる。
「……」
どれだけジャージを着ていても、寒いものは寒い。
ガタガタと震える体をさすりながら、来るな来るなと思いながら、試合を眺めている。
どうせなら、カメラでももって写真を撮る練習をさせてもらいたいものだ。
動いているものを撮るのはそれなりに難しいんだぞ。
「……」
ありがたいことに、教師も気づいていないようで。
まぁ、視界には入って……いないかもしれない。あの人どちらかと言うと熱血というか熱いお方なので、離れて居ればすぐに声を掛けられるだろうから。本人も多少気が緩んでいるのかもしれない。だってもう授業終わってるし。……それはそれでどうかと思うが。
「……」
あぁ、寒い。
ホントに寒い。
半袖の上にジャージ着たくらいじゃ、そりゃ寒いに決まっている。風がこれだけ強ければ当たり前だろう。陽があっても、風のせいですべて台無しになる。
「……、」
寒さに耐えながらも、目の前の景色を見つつ、こちらに来るなと願いつつ、寒い寒いと凍えながら、1人立っていると。
視界の端で、何かの物音が聞こえた。
風が強いから、それのせいだと思ったが、その音と同時に何かの影が動いたのだ。
「……猫」
物陰から出てきたのは、野良猫だった。
……野良猫の割には毛艶がよく見える。黒猫の、まぁ、少々細身だろうか。しかし猫らしいと言えば猫らしい、しなやかな体をしている。どこかで餌でも貰ってるんだろう。地域猫というやつだろうか。
「……」
ぱちりと、目が合い、黒猫が足を止める。うん、可愛いなおまえ。
あぁでも、おいおい、こんな所に来たら「あ、あれ猫?」ほら。
女子という生き物は、いくつになっても猫を見ると反応せずにはいられないらしい。
理由はそれぞれだろうけど。ホントに猫が好きなのか、単に可愛いもの見つけたくらいなのか。私には分からないが。
「あ、――ちゃん、こっちおいでぇ」
「……」
ついでに、私の存在までバレたじゃないか。
猫様。どうしてくれる。
そう思い、振り返ったが、もう既にその姿はなかった。いいなぁ、逃げられて。私はもう逃げ道を失った。
「……はーい」
別に、クラスで浮いている……だろうけど、いい人達ばかりなのだ。ただ私が馴染もうとしてないだけであって、それなりに話はする。
昼休みに毎回教室に居ないだけで、放課後はさっさと教室から出て行くだけで。
修学旅行だって、このクラスのメンバーで行ったのだから。まぁ、テーマパークはあの子と回ったけれど。
「……」
あぁ、でも、もうすぐでチャイムが鳴る。
ようやくこの地獄から抜け出せる。
お題:猫・グローブ・水彩




