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三題噺もどき5

体育―外

作者: 狐彪

三題噺もどき―はっぴゃくなな。

 



 頭上には、晴れた空が広がっている。

 水彩画のように、水色に白が滲むその景色は、いい写真の材料になりそうだ。

 日が暮れた橙も好きだが、この水色も嫌いではない。

 ……後は、風さえなければ完璧だったのだけど。

「……さむ」

 強い風が吹く中、私は外に立っていた。

 手には、慣れないグローブを付けて、球がこちらに飛んでこないようにと祈りながら。

 どうしてこんな寒い中で体育をしないといけないのかと、疑問を抱えながら。

「……」

 少し離れた位置には、クラスメイトの女子が楽しそうにソフトボールをしている。

 教師が言うには、一応、やるべきことはある程度終わっていて、他にすることもないので、外でソフトボールでもしようとなったらしい。……ならばせめて室内競技にしてくれ。どうせ学期末にクラスマッチとかあるんだから……。

「……」

 まぁ、どうせ、そのクラスマッチの種目にソフトボールがあるからさせているのだろう。

 一応、バレーとバスケ、サッカーとソフトボールがあるらしい。

 私は多分、バレーかバスケになるが、基本的にカメラを持って動き回っているので、そのまま出ずに済まないだろうかと願っている。人数は足りているからな。

「……」

 今目の前で繰り広げられている、ゆるゆるの試合には、一応私も参加者ではあるが、どうぞそのまま忘れていてくれと思う。

 こちらに人が居ることが分かれば、こっちに球が飛んでくるかもしれない。

 ただでさえ、運動が苦手でとくに球技は嫌いなのに、普段からしているわけでもない自分専用の物でもないグローブを付けて、寒さの中で震えて、何ができる。

「……」

 どれだけジャージを着ていても、寒いものは寒い。

 ガタガタと震える体をさすりながら、来るな来るなと思いながら、試合を眺めている。

 どうせなら、カメラでももって写真を撮る練習をさせてもらいたいものだ。

 動いているものを撮るのはそれなりに難しいんだぞ。

「……」

 ありがたいことに、教師も気づいていないようで。

 まぁ、視界には入って……いないかもしれない。あの人どちらかと言うと熱血というか熱いお方なので、離れて居ればすぐに声を掛けられるだろうから。本人も多少気が緩んでいるのかもしれない。だってもう授業終わってるし。……それはそれでどうかと思うが。

「……」

 あぁ、寒い。

 ホントに寒い。

 半袖の上にジャージ着たくらいじゃ、そりゃ寒いに決まっている。風がこれだけ強ければ当たり前だろう。陽があっても、風のせいですべて台無しになる。

「……、」

 寒さに耐えながらも、目の前の景色を見つつ、こちらに来るなと願いつつ、寒い寒いと凍えながら、1人立っていると。

 視界の端で、何かの物音が聞こえた。

 風が強いから、それのせいだと思ったが、その音と同時に何かの影が動いたのだ。

「……猫」

 物陰から出てきたのは、野良猫だった。

 ……野良猫の割には毛艶がよく見える。黒猫の、まぁ、少々細身だろうか。しかし猫らしいと言えば猫らしい、しなやかな体をしている。どこかで餌でも貰ってるんだろう。地域猫というやつだろうか。

「……」

 ぱちりと、目が合い、黒猫が足を止める。うん、可愛いなおまえ。

 あぁでも、おいおい、こんな所に来たら「あ、あれ猫?」ほら。

 女子という生き物は、いくつになっても猫を見ると反応せずにはいられないらしい。

 理由はそれぞれだろうけど。ホントに猫が好きなのか、単に可愛いもの見つけたくらいなのか。私には分からないが。

「あ、――ちゃん、こっちおいでぇ」

「……」

 ついでに、私の存在までバレたじゃないか。

 猫様。どうしてくれる。

 そう思い、振り返ったが、もう既にその姿はなかった。いいなぁ、逃げられて。私はもう逃げ道を失った。

「……はーい」

 別に、クラスで浮いている……だろうけど、いい人達ばかりなのだ。ただ私が馴染もうとしてないだけであって、それなりに話はする。

 昼休みに毎回教室に居ないだけで、放課後はさっさと教室から出て行くだけで。

 修学旅行だって、このクラスのメンバーで行ったのだから。まぁ、テーマパークはあの子と回ったけれど。

「……」

 あぁ、でも、もうすぐでチャイムが鳴る。

 ようやくこの地獄から抜け出せる。












 お題:猫・グローブ・水彩

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