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【第二章開始】 転生したら戦闘民族だった~スパルタで物理極振りな僕がおっきな猫と征く世界戦場旅行。ついでに五大先史文明も調査検討中~  作者: 四季 訪
継いだ命

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第12話 投石のちピッチャーライナー

 明らかに人間ではない毛むくじゃらの猿のような見た目のなにか。

 鼻は大きく突き出て、ギョロリとした目から凶悪犯のような印象を受ける。

 性格は人相に出ると言うが、これほど如何にもな見た目をされると逆に良い奴なんじゃないかとすら錯覚してしまいそうだ。

 しかし、そんな僕の希望的観測も、振り上げられた棍棒を前に儚く散った。


「うわっ!」


 僕は慌てて、滑落の痛みが残る体に鞭を打って飛び退いた。

 父の攻撃に比べれば早さも鋭さもまるでたりない。

 単純に避けるくらいならなんてことはなかった。


 僕は距離を取った所で腰の剣に手を掛けた。

 毛むくじゃらたちがその動きに警戒の色を見せる。


「よし」


 警戒したその姿を僕は見逃さない。

 そして僕は目を開き、毛むくじゃらたちの近くの岩壁へと視線を移した。


「あっ!危ない!」


 奴らの頭上を指さして、切羽詰まった声を張り上げた。

 この立地の危険要素をしっかり抑えているのか、奴らはそれだけで僕の言わんとすることを察して、その方向へと慌てて振り向き、防御の姿勢を取り始めた。


 しーん。


「縺ェ縲√↑縺ォ繧りオキ縺阪↑縺?◇窶ヲ窶ヲ?」


「バカめっ」


 僕は奴らに背中を向けてその場から逃げ出した。


「騾?£縺溘◇?」


「霑ス縺茨シ?」滓侭繧帝??′縺吶↑?」


 後ろからわーきゃーと上がる非難の声を無視して僕は渓谷の中を走って逃げた。 


 少し走った所にある岩陰に僕は身を潜め、体を休ませていた。

 大きな怪我はないとはいえ、あの高さから落とされて、いきなり戦えだなんて無茶だ。

 少しは体と気持ちを落ち着かせる時間があったっていいだろう。


 状況を整理し、十分息を整え終えた僕は、岩陰から顔を出して前方の様子を窺う。

 自分が来た道から当然奴らがやってくる。

 逃げ続けても、意味はない。

 これは父が僕に課した訓練だ。

 奴らを倒さずにこのまま崖を登って逃げれば、すぐさま怒り心頭の父に再び蹴落とされる未来が見える。

 今度は無事に着地できる保証はどこにもない。


 僕は肺の中にある空気を全て吐き出して、再びスッと息を吸った。

 僕なりの覚悟の決め方だ。


 澄んだ頭で僕は剣の柄に手を伸ばして……


「縺薙%繧峨↓縺?k縺ィ諤昴≧繧薙□縺後↑」


 岩陰の裏から奴らのしわがれた声が僕の耳まで届いた。

 無駄に大きい声はこの渓谷の中ではとても反響する。

 それでも距離はとても近いことくらいは分かった。


 岩陰の裏、その隅の窪みに僕は入り込んだ。

 小さな体だからできることだった。


 奴らが僕の前を通りすぎていく。

 倒さなければ。


 剣で不意打ちをするには絶好の距離。

 この機会を逃せば、一対一の状況を作れる機会はもう訪れない。


 僕は震える手で柄を握る。

 飛び出して、後ろから先手を取る。

 そうして確実に一体を倒せば、不利な状況ではなくなる。


 しかし、そう考えている内に、奴らとの距離は離れてしまった。

 もう、不意打ちが成立する距離じゃない。


 僕は今思い出したかのように呼吸を再開し、自分の失態を恥じる。

 二体一は恐らく厳しい。

 一対一の訓練しか積んでいない僕に、同時に二体を相手する技量は持ち合わせていないからだ。


 どうするか。


 ここから取れる最適な手段を必死に探す中、手に何かが当たった。

 なんてことのない、そこらにある石。

 この渓谷ではごろごろと僕の周りにも転がっている。

 ただ一つ、今手に当たった石を見て思ったのは、僕の手に丁度いいサイズの石だということだ。


 ピンときた僕はそれを手に取った。

 距離なんて関係ないじゃないか。

 わざわざ相手の武器が届く範囲で殺し合いに付き合う必要はない。

 遠くから一方的にやっつけることができるなら、それに越したことはない。


 僕は前世の地球の太古から続く、原始的な武器を手に取った。


 全身の魔力の流れを早くする。

 お手軽に肉体を強化し、僕は奴らの片割れに目標を定めて投球フォームを構えた。

 狙うは頭へのヒットバイピッチ(故意死球)

 野球なら間違いなく乱闘騒ぎになる危険球を僕は全力で投じた。


「ッ……」


 狙いは外れ、僕の投げた石は頭でなく背中に当たった。

 それでも苦しかったのか、そいつは地面に転がって悶え苦しんでいる。


「縺昴%縺九=?√h縺上b繧?j繧?′縺」縺溘↑繧ッ繧ス繧ャ繧ュ?」


 もう片方が怒り狂っているが、僕はそれに付き合うつもりはない。

 

 ふふん。投石スキルを会得した僕がわざわざ危険な接近戦に付き合う訳がないじゃないか。

 まだまだ遠距離から好き勝手させてもらおう。

 威力も十分のようだしね。


 僕は距離を取りながら、手ごろな石を拾い、また構える。

 今度は外さない。

 魔力を調整し、制球を意識。

 僕は野球選手を見よう見まねで石を再び投じた。

 投げた瞬間、またも石が上体付近に飛んでいくのが見えてしまう。

 練習が必要なようだ。

 しかし、速度は十分、当たれば今倒れている奴同様に、無事では済まないはずだ。


 フォロースルーの中、僕は勝利を確信し、投石が相手に当たるその瞬間を待ち望む。


「ん?」


 石が当たる直前、奴が素早く慣れた動作で半身になる。

 投石の軌道から自分の体を逃がしたのを僕は見逃さなかった。


 くそ。器用に避けやがって。


 僕は再び攻撃のための石を拾うため視線を周囲に移そうとした時、視界の隅で奴が妙な動きをしていることに気付いた。


 嫌な予感がした。


 奴の動きを目で追う。

 胸はこちらに見せる事無く半身のまま。

 こん棒は胸の前で両手でしっかりと握られ、その得物の頭を天に向けてゆらゆらと揺らしている。


 日本人にとって馴染み深いその構えに僕は自分の目を疑った。


「うそでしょ?」


 片足を上げ、胸を引き─────


「ちょっ!」


 ─────ぱっかーーーーん!


 見事なフルスイングで僕の石を捉えた。

 そして芯に上手く乗せた石は角度5度~10度の向きで僕へと返された。


 ヒュンッ


 殺人的なピッチャーライナーが僕の頬を掠め、遥か後方へと消えて行った。


「チッ」


 言語じゃないから、あいつが舌打ちしたのは僕でも分かった。

 僕は僅か二球で、新スキルを封じられてしまったらしい。


「うそやん」


 頬から血をたらりと流して僕はそう呟いた。

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