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7自分の杖

教師が2人、その内の1人が老人。

子供は5人。大丈夫なのだろうか。魔の森は危険な魔獣がいる。

フランは不安だった。教師達は前を歩きフランが真ん中で、年上の子供達が後ろを歩いている。

彼等の内2人が戦闘科だ。後の2人は薬師科で、フランだけが錬金術師科だった。

だがフランと皆同じような背丈だ。彼等はもう十歳になるはずだ。やはりフランはかなり大柄なのだろう。

普段から,フランは鍛えていたので、自作の木剣を持ち周りに眼を光らせ、気を抜くことなく森の中を進んでいく。教師の一人が,『静かに』のジェスチャーをして,その場にうずくまる。

皆その後に続く。しかし、老人は飄々としていて,その場に立ったままだ。

徐に杖をかざし、もごもごとした口調で呪文を唱えた。

杖から,鋭い氷の刃が無数に飛び出し,前方にいた魔獣を切り刻んだ。

熊の魔獣だ。鑑定では,ワイルドベアとでた。赤い毛皮で火を吐く魔獣だが,気付かれる前に倒してしまったようだ。教師は,袋にそれを入れた。

どう考えても,容量が合わない。あれは高価な魔法袋だったのか。

フランは老人の放った魔法を見て,これなら安心だと胸をなで下ろした。

また老人は歩き始め、どんどん森の奥へと入った行った。その後を、フラン達は付いていった。


毎年の魔法学校の卒業生は15人ほどだ。入学してくる子供は18人。学校としては大きくはないが、魔術師を育てている人数としては、それでも多い方なのだとか。魔術師とはそれほど希少なのだ。

その中でも此処に居る子供達は優秀なのだろう。卒業まで未だ期間があるのに、杖を作り替えなければならないほどに。

小物は子供達にも倒して良いと許可が出たので,嬉々として倒して廻る。フランも魔法を使ったり木剣で殴ったりと活躍した。魔法袋の中身は大量の魔獣が収まった。

結構楽しかった。冒険者に成りたがっていたバスはこれをしたかったのか、とフランは納得していた。

かなり森の奥まで来た時、止まれの合図が出た。

そこには大きな木がそびえていた。今まで倒した、トレントという魔木とは違う種類だ。

『これは魔木とは出ない、鑑定では,精霊樹だ』

精霊樹とは,初めて見る。本では知識としてはあったが,こんなにも大きかったのか。

「さあ、皆。この木に魔力を捧げなさい。そうすれば自分に合った枝を落としてくれる。」

子供達は順番に魔力を注ぐ。その度に色々な大きさの枝が上から落ちてくる。色も形もまちまちだ。不思議な木だった。

フランもやってみた。フランの枝は大きくも小さくもない,50㎝の枝だった。太さはやや太めで,節はなくつるりとしていた。先端に向かって細くなっている。黒と金と銀色のストライプ。そして細かく点々と赤、緑、青、黄色と模様があった。

「おおっ!これは珍しい。全属性の杖ではないか。」

全属性?魔術師はそもそも全属性だ。総ての属性が有ったはずだ。

「疑問であろう?皆持っている属性だが,得意不得意があってな。杖を新しくして、初めて自分に合った属性を成長させることが出来るのじゃ。じゃが,君は総て得意そうじゃぞ。これからが大変だ。は、は、は。」

総て得意とは総てを成長させて初めて使い物になる。逆に言えば、使いこなせなければ器用貧乏となってしまう。ありがたくないなと思ってしまったフランだった。

「その様に不満そうな顔をするでない。君は錬金術師科であろう?これほど便利な物は無いぞ。誰にも手伝って貰わずに,自分一人で総ての作業が出来るのだぞ。まあ、使いこなせればの話だがな。ふぉっ、ふぉっ。」

やっぱり使い勝手が悪いじゃないか。でも、これが僕の杖だ。頑張って使いこなせるように成らなければ。


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