4魔法の才能
「この間の戦災孤児はどうしている?」
「はい?4名いますが、どの子でしょうか?」
「4歳で、魔法学科に途中編入した子供だ。」
ああ、そういえばいたな。あと6ヶ月で初等科が終わるため迷って、取り敢えず入れてしまった子供が。
魔力が多いので一か八か上の子供達に押しつけて。
「どうでしょう、確認して参りますか?」
「いや、いい。もうすこし様子を見てから、教えてくれ。」
「は。注意して見ておきましょう。」
院長が気に掛けるほど魔力が多かったとは,知らなかった。そう言えば,院長が能力の診断をしたのだったな。
院長は、魔術師にしては能力はそんなに高くはないが,ここを作った方だ。
私財をなげうって、孤児の中から才能を見いだし、魔術師を育成し始めた方だ。
未だに王都の魔術師達は,弟子を取って次代を育てているが、なり手を見付けるのが難しい。
人買いから買ってこなければならないほどだ。孤児ならば,勝手に集まってくる。
この間の戦争で、戦災孤児が大量に出てしまった。大半は、親族や知り合いに引き取られていったが、孤児院は、それでも満杯状態だった。
国が対策に苦慮してこの際、なり手のない魔法使いの育成に力を入れることになった。国が王都の魔術師達に割り振ったのだ。残った子供達はこちらに回されてきた。
だが、才能がありそうな5歳以下の子供は5人に満たなかった。それ以上の子供にも才能はあったが、もう手遅れだ。年齢が高くなれば魔力はそこで伸びなくなってしまうからだ。
魔術師になるためには、避けられない身体的に施さなければならない術がある。身体に施す術は思春期が終われば自然に解けるのだが、男なら、恐ろしいと感じるのも分る。
それを忌み嫌い、孤児以外はなり手はいない。かくいう私も孤児だった。
孤児の総てが魔術師に成れるわけもない。才能が無ければ無理なのだ。我が国に魔術師はそれなりにいるが、あまり地位が高いとは言えない。
しかし、この間の戦争で活躍したのは、戦闘科出身の魔術師だった。半分は死んで仕舞ったが、彼等の頑張りでなんとか五分に持ち込んだのだ。
もっとなり手が多ければ魔術師も増え、今回の戦いでも勝てたはずなのだ。
ここに来た孤児は3歳以下が殆どだ。その子らにはこれから教育していくが、4歳の子は確かフランという子だったはずだ。彼は、魔力が大きく身体も年齢の割には大きかった。
彼は自分から入りたいと母親に言ったそうだ。変わった子供だ。
「あれが、フランです。」
ああ、あの子だな。もう同じクラスと一緒になって勉強していた。優秀な子供だ。
「君、フラン君。」
「はい。神官様。」
「どうかね、勉強は難しいかね。」
「いえ、楽しくて仕方ありません。ここに来れて僕は幸せです。」
「・・そうか。がんばりたまえ。」
やはり、変わった子供だな。勉強が楽しいとは、このくらいの子供は一番遊びたい盛りだろうに。