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3一人になったフラン

戦争は2年続いた。父も兄達も戦死してしまった。

フランは4歳になっていた。母は、気落ちしてしまった。そしてフランを神の家に預けることにした。

母は実家に帰り、どこかの後添えになるか、下働きに出るという。

この世界の女性は仕事をするには厳しいようだ。

フランに対して泣いて謝っていた。だが、フランは、良かったと思っていた。

『希望通り魔術師に成れるかも知れない。』

戦争があって皆死んで仕舞ったお陰、と考えるのは余りにも冷たい考えだが、フランはまだこの家族に対して思い入れが無かった。ここに生れて4年しか経っていなく、父も兄達とも余り接点がなかったせいもあるだろう。以前の母親に対して大きな愛情が残っていたせいでもあった。

戦争は痛み分けのような結末で、魔の森は半分に分けられた。大陸の北半分に大きく広がっている魔の森は隣国タラン公国が西がわ、我が国ボーア国が東側の権利を取った。

端からその様にすれば良かったのだ、そうすれば無駄な死人を作らないで済んだものを。

兎に角戦争は終わった。フランは神の家と呼ばれている神殿に預けられた。


神殿は白と黒の建物だ。白い外壁に黒い枠の窓があり、落ち着いた雰囲気があった。

ドアや窓枠は黒の木で作られていた。黒の木は、トレントという魔木が使われているそうだ。

そこには様々な、魔法が施されていて、簡単にはここを抜け出せないようになっていた。

広い敷地は高い塀で囲まれており、その中には沢山の建物があった。フランはその中の一棟に連れて行かれた。

「君は何歳かね。」「4歳になったばかりです。」

「ほほお、ギリギリ間に合ったか。5歳を過ぎれば、君は商人か従者にしか成れなかっただろう。」

商人でも従者でも騎士以外なら何でも良かった。今のフランはそう考えるようになっていた。

何故なら、魔術師は、簡単になれない。何十年も修行しなければ成れず、なったとしても更に選別されて、才能ある者しか、中央の魔術師の塔に行けないと聞いていたからだ。


フランは神殿の中にある礼拝堂の様な場所に連れて行かれ、裸になるように言われた。

裸になったフランを、神官の格好をした人が、礼拝室の影に連れて行き水の張った浅いプールに沈め、呪文を唱え始めた。水が金色に光り、暫くして水からあげられた。フランのペニスが小さく萎んでいた。

「5歳になれば、この処置が出来なかった。魔術師になるためには必要な処置だ。」

と言われた。多分成長を抑えて、性の抑制をしたのだろう。

フランは前世から、その手のことには無頓着なので、別段ショックも受けずに素直に理解した。

フランはこれから生活するための部屋に連れて行かれた。そこには同年代の男の子供が2人すでにいた。


「エステバルだ。」「トンプソンだ」

「フランです。」

それぞれぶっきらぼうな挨拶を交わして、部屋の位置取りをしてくれた。

フランに与えられた場所は真ん中のベッド。その脇に据えられた物入れと机と椅子であった。

『真ん中は誰でも嫌だものな。僕は新参者だ。仕方がないか。』

聞いて見ると、エステバルもトンプソンも5歳だと言うことだった。背丈が同じくらいだから、同い年だとばかり思っていた。多分フランは年の割に大きいのだ。

ぶっきらぼうだった割に二人とも親切で、良くフランの世話を焼いてくれた。

彼等は孤児で、1歳の頃から孤児院にいるそうだ。親の顔は覚えていない。孤児の中でも素質のある子供だけが選ばれて4歳からこの施設に来ることが出来ると。教えてくれた。

そう言えば、神殿に来る前に、神官に何かの検査をされた。あれで調べていたのか。

ここは女の子は来ることが出来ない。女の子は別の神殿へ連れて行かれ、別の仕事を教えて貰うらしい。

前世の本の記憶から、フランは、聖女教育かな、と考えたが本当のところは分らない。

「ここに来たからには逃げられない、だから10歳まではしっかり学ばなければだめだ。その後は、個人の希望の仕事に就けるようにしてあげよう。」

と教師役の神官に言われた。フラン達には、衣食住が保証されていた。服は簡易な物を着て、その上に魔法使いのようなローブを羽織る。靴はなくサンダルを履く。

このローブには寒さや暑さ、汚れを防ぐ魔法が施されているという。

これは神殿の持ち物で、サイズが合わなくなれば交換できるが、ここを出るときは返さなければならない。買えば、かなりの高額だろう。

それから50㎝くらいの杖も渡された。この杖はあくまで仮の物で、自分に合わなくなれば、自分で作る事になる。魔木を採ってくるところから、始めるらしい。まだまだ、先の話だ。


朝起きて、まずは身の回りの掃除から始まる。それが終われば、礼拝堂の掃除、各人の受け持ちの掃除、掃除が終わって昼食となる。朝食はない。育ち盛りにはこれが一番辛い。

皆、朝食代わりのクッキーを懐に隠し持っている。それは自作の物らしかった。

後でエステバルに、作り方を聞いた。小麦粉に塩をいれ水で練って、焼いただけの物だ。

暫くしてごまのような植物を見付けて、こまめに取っておき、クッキーに練り込んで焼いて食べるようにした。卵を見付けることもある。この神の家には大きな森があったので、そこに行ったときに見付けた鳥の巣から失敬してくるのだ。エステバルとトンプソンにも分けてあげると喜ばれた。

砂糖もミルクも貴重品なので、夕食の時以外は口に入らない。それでも、偶にミルクが余っているときは貰ってくることもあった。

そんなことをして3ヶ月して、掃除の他に、授業が始まった。

授業は字を覚えないと受けることが出来ない。同室の二人に事前に教えて貰っていたので、簡単にクリアできた。これさえ出来れば直ぐに二人と同じ勉強が出来るようになる。

フランはなんとか教室で教師の神官の授業を受ける事が出来るようになったのだ。

「フラン。よく頑張ったな。これからは同じ教室で勉強だな。」

フランはやっと魔術師の一歩を踏み出せた。


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