19エステバルが帰ってきた
塔が完成してそこにフランが落ち着いた頃、エステバルが帰ってきた。
彼は9人の孤児を連れてきた。バスの言っていたとおりにりに成った。
孤児達は皆魔術師の才能のある子供で、院長に託されたのだとか。あのまま国に置いておけないとエステバルはつれて来たのだ。
4歳から8歳までの子供だ。彼等は院長の最後の弟子だそうだ。
それぞれが魔法袋を持ち院長から持たされた、本やらお金やらが入っていた。
院長は最後まで子供のために生きたのだ。孤児院は其の侭残るだろうが、今までのような孤児院ではなくなるだろう。
「エステバル、ここだと精霊樹の恩恵が受けられないよ。」
「もう精霊樹はない。国王が亡くなる前に燃やして仕舞った。」
「なんだって!何と言うことをしたんだ。王は狂っていたのか?」
「フラン。大丈夫さ。苗木が残っていた。俺がコッソリ持ってきた。」
と言って、エステバルはにやりと笑ったのだった。魔法袋は時間が止る。そのまま持ってきたようだ。
では何処に植えようか。悩んだ結果、リザードマンに聞くことにした。
村にはリザードマンが度々来ている。良く知るフランとも馴染みになっていた。フランは自分の小屋を度々リザードマンに貸していた。
「北の国の植物は沼には合わないと思う。若しかしたら山の方には良い場所があるかも。」
と言う事で、森に入って、リザードマンに案内して貰い、森の山側へ行って見ることにした。
南の森は熱帯のような気候だが、標高が高くなるにつれ、北の森と似たような気温になっていった。
「ここなら良いだろう。」
リザードマンが案内してくれた所は、標高は高いが、谷間になっていて側には小川が流れていた。
そこから広がっている平地を見付けた。
「ここは土地の地力が濃い場所だ。魔獣も強いが、この奥まった場所には滅多に来ない。」
確かに人間も見付けることは難しそうだ。小さい魔獣は一杯居るが、大きいのは居ない。良い場所だ。
フランは土魔法で大きく広く土を耕し、そこに精霊樹の苗木を植えた。
そして皆で魔力を注いだ。小さかった精霊樹はみるみる大きくなっていく。
まるで最初からその場所にあったように大きく根を張り、北の森に在った通りの姿になった。
不思議な木だ。エステバルは院長に聞いた話をしてくれた。
「精霊樹は世界に一本しか育たない。もし死んでもまた生き返る。」
あそこに置けばまた同じ所に生えて居ただろうが、エステバルがこちらに持ってきてしまったのだ。
もう北の魔の森には精霊樹は生えなくなって、簡単には見付けることは出来ない場所に移してしまった。
「ここはこの国の魔術師に教えてもいい?」
「いや、暫く様子を見よう。精霊樹の利権を巡って戦争する様な国が出てきたりするかも知れない。兎に角精霊樹は、ここで生きていける。それだけで今は良いじゃないか。」
「そうだね。でもエステバルが連れてきた子は如何する?」
「未だ1、2年はこのままで、子供が大きくなってから考える。それに他の方法が出来たじゃないか。」
そう言えば、トーマスマンがやったような方法なら大丈夫かも知れないが、精霊樹から貰った枝の方が魔法には良いのだが。戦争になるよりは、自分たちの工夫で乗り切る方が良いかもしれない。
子供達とエステバルはフランの作った塔で暮らすことになった。
「大きく作っておいて良かった。ここは魔獣も多いから、素材集めも楽だし、村へ行けば作った物を買い取っても貰える。最高の場所だ。」
子供達のレベル上げも出来る。勿論フラン達もだ。
エステバルはここを孤児院のようにすると言った。
「良いよ。好きに使ってくれ。」
フランは、今度は何を作ろうかと考えた。