17山脈の探索
「わたしの得意の魔法を見せてあげよう。」
といって、トーマスマンがフラン達を山脈の探索につれて来た。
彼は山の地下に眠る鉱脈を探せるのだという。この力で国に貢献して、認められている。
山頂まで行き、そこで杖を持ったままじっと佇んで居たと思ったら、やにわに杖を地面に向けて呪文を唱え魔力を流す。すると少し離れた地面が発光し始めた。
そこに行ってまた同じ動作を繰り返した。そして、
「地下50メートルの所に銅の鉱脈があるな。」
と言って、今度は地面を魔法で掘り始めた。1メートルほどの丸い穴が深く掘り進められてゆく。
フラン達は、ただただ驚き、その光景に見入っていた。
余りに深いので降りてゆくには勇気がいる。しかも地下というのは、危険なガスが発生する恐れがあるのだ。これは只のデモンストレーションだから、気にするなと言われホッとする。
「この場所に印を付けておこう。後で国に報告すれば誰か掘削しに来るだろう。」
トーマスマンは、杖などいらないだろう。こんなに力の有る魔術師なのだから。とエステバルは思った。
「君たちのお陰で杖の改良に成功した。この杖は今までよりも威力がある。」
そうだったのか。これは杖の試し打ちの様な物だったか。
「凄いですね。少しのアイデアを、もう形にしてしまうとは。」
「いや、アイデアこそが命だ。君には何と言ってお礼をすれば良いか。何か欲しいものはないか?」
「いえ、あ、そうだ、土属性の最も顕著な使い方はなんですか?僕は土属性も得意なのですが、教科書に載っているほかは思い浮かばなくて。」
「土属性で一般的なのは建物を作ることだが。私の塔も自分で、何年もかかったが作ったのだ。この杖があればもっと早く作れるようになっただろう。」
あの塔を作ったとは。フランにも出来るかもしれない。そう思っていると、トーマスマンが
「只、建物を作る場合は、建物の構造を勉強しなければ危険だ。まず建築の基礎を勉強するべきだ。」
そうか。そうに決まっている。鑑定だって万能ではなかった。自分の知識が無ければだめなのか。
トーマスマンの書庫に建築の本があるから、持って行くと良いと言われ、早速見に行った。
同じ物が何冊かあったので2冊ほど頂くことにした。基礎の本だけだが、取り敢えずこれで勉強してからだ。その後必要ならば、自分で買えば良い。そう思っていたら、
「なんだ、もっと持って行きなさい。これと、これも必要だ。こんな本は二束三文だ。幾らでも手に入るのだから。」
そう言って何冊も積み上げて行くのだった。
ありがたく頂き、エステバルとフランは、村へ帰ることにした。バスの宿屋が気になったからだ。
「ここに来てみて良かったな。」
エステバルは感慨深げに言ってきた。確かに、殆どフランのためになったような物だが。
「エステバルは何か知りたいことは他にないの?」
「俺は、タラン公国が如何したか気になる。あと、孤児院がその後どうなったかも。」
「そうか。」
フランも気にはなっていたが、帰りたいとは思わない。エステバルは、まだ敵を討ちたいのだろうか。
バスの宿屋は結構繁盛していた。フラン達が行くと、一番良い部屋を用意してくれた。
「お前達のお陰だ。今は俺の得意料理がはやっているんだ。今喰わせてやるからな。」
そう言えばバスは孤児院では食堂の係だったな。得意だったんだ。
暫くはここで冒険者の仕事に精を出した。半年ほどして、エステバルが決心したように、
「俺は孤児院へ行ってくる。」
「僕も付いていくよ。」
「いや、フランは他にやりたいことがあるだろう。お前が行きたくないことは分っている。俺一人で決着を付けてくる。」
エステバルの決心は固かった。如何しても一人で行くと言ってきかなかった。
フランは心配だ。何か直ぐに連絡が付く方法を考えなければ。自分が行っても手助けになるとは限らないが、一緒に行くことを断られてしまったのだ。
トーマスマンが言ったように、何か良いアイデアが浮かんでこない物か。
連絡が着くと言えば、電話か?光は?
それから部屋に籠もって、フランは連絡が付く魔道具を作っていた。
エステバルがここを出て行く前の日、やっと形になった。小さな腕輪の形にした通信機だ。光の属性を仕込んだ。腕輪に向かい魔力を流す。すると相手の声が聞こえる。お互いの魔力を登録しておくと通じるようにしたのだ。エステバルは喜んでくれた。
「これも一杯作って売れば良いんじゃないか?」バスが言ったが、
これは通信機としては使えないだろう。相手が一人しか登録出来ない。その内改良するけど今のところこれでエステバルには連絡が付く。
「じゃあ、行ってくる。無事に仕事が片づいたら帰ってくるよ。」
そう言ってエステバルは旅だって言った。