14リスの魔法袋
フランは、闇リスを解体して中の魔石を取り出した。
小さい魔石だ。ビー玉くらいの真っ黒い魔石で、大きくはないが闇の魔力が非常に濃い。リスの革は頬袋が非常に伸びる。
『これは良いかもしれない。』
小さな魔石に魔方陣を刻むのは神経を使ったが、なんとか仕上がった。
なめしたリスの皮にも魔方陣を組み込んでみた。相乗効果で性能が高まって欲しいと願いを込めて。
仕上がった魔法袋は10㎝四方の小さな物だが、容量は馬鹿みたいな量になった。
「これは凄い物が出来た。これなら今までの魔法袋よりも使いやすい。戦闘の邪魔にならないし、懐に入れておける。」
早速6個作って、エステバル達に使い心地を試して貰う。
「フラン。凄いぞ、絶対高値で売れる。」
バスが冒険者ギルドに持ち込んで売ってくると言ったが、クリンから待ったが掛かった。
「バス。あんたみたいなお人好しは、足下を見られて買いたたかれるわ。私に任せなさい!」
結局バスは只の護衛としてクリンに付いていくだけになった。
確かにクリンは商売が向いているようだ。闇リスの魔法袋はかなりの高値で売れ、更に注文まで取ってきた。エステバルとバスは暫く闇リスを刈り続けなければならなくなり、フランは、魔法袋を作り続けなければならなくなった。
クリンは、魔法袋の営業をして歩く。そしてとうとう店まで作ってしまった。
エステバルは、
「何で皆に相談もしないで、勝手に決めた?僕らはここには長くは居ないんだぞ。」
凄く怒って強く抗議した。
「あら、良いわよ。私に分け前をくれたら、後は一人で商売をするわ。」
と図々しくも分け前を要求する始末だ。これでは仲間とは言えない。
フラン達はここを旅立つことにした。権利はクリンにやることにする。
彼女は喜んで一人で商売をするそうだ。
バスは彼女と離れることが出来てホッとしたようだ。
フラン達は、前々から聞いていた、南の森に行くことにした。
魔法袋のお陰でお金はたっぷりある。
ゆっくりとこの国の村を回り、そこここで魔獣を倒し、色んな薬草を採って知識を増やして行く。
旅の途中で、バスは20歳になりエステバルは13歳にフランは12歳になっていた。
もう直ぐ南の森に付くところで大きな村に着いた。
人口は町ほども居て、高い石壁に取り囲まれていた。この村を治めているのは魔術師だそうだ。森の入り口に塔を造りそこに弟子達と住んでいる。森からの魔物を防ぎ、魔物の素材を村に納め、その素材を元に色々な加工をしている村だった。冒険者ギルドも村の割に大きかった。
バスはここに落ち着きたいと言い、
「エステバルとフランはもう成人だから、僕の役目は終わった。」と言った。
バスはここで食べ物やか、宿屋をして暮らすそうだ。フラン達は、寂しかったが、今まで世話を掛けたお礼に宿屋を買ってバスに恩返しをした。
「こんなことして貰ういわれはない。」
と初めは断っていたバスだったが、どうやら好きな人が出来たようだった。彼女と一緒になるためには必要だろうと言って説き伏せたのだった。
「これから魔術師の塔に行ってみるか。」
「エステバル、今更弟子は取らないだろう。僕らはもう大人だ。」
「いや、弟子ではない。彼はどんな術を使うか、興味がある。」
確かにこちらの魔術師の力を見る機会は余り無かった。見せて貰えるなら見てみたい気もする。
塔についたフラン達は、門兵に
「僕達は、ボーア国の魔術師です。こちらの魔術師にご挨拶したいのです。」
と伺いを立てたら、あっさり中に通して貰えた。