12新しい国
南の国はサミア国。暖かい気候だ。
この大陸の最南には、魔の森と似たような森がある。気候が違うので,生息している魔獣や植物の種類は全く違うらしい。
サミア国は東が海、西が山脈南が森に囲まれている。
山脈からは大河が流れて豊かな土壌に恵まれていた。大陸の中では一番大きな国だそうだ。山脈を挟んだ所には小さい国が乱立していて,紛争が絶えないと聞いたので。取り敢えずサミア国へ行くことにした。
サミア国の東の海にはまた違う国があるそうだ。大小様々な島の連なりでそこはまた違う国だ。
その島国とは海運で交流がある。ボーア国もこの海に面していたが,余り交流はなかった。
考えてみればボーア国もタラン公国も小さな国だ。そんなところで悩んでいたんだと、今更ながらフラン達はおかしくなってしまった。
世界は広かった。国を出てみて初めて知ったのだ。
「俺がまず、冒険者ギルドに行ってみる。雰囲気が良かったらお前等を呼ぶよ。」
バスが,まず先陣を切った。フラン達は宿で留守番だ。
エステバルは、剣術の自主練をして時間を潰している。フランは魔法袋を作ろうといる。これがここでも売れれば暫くは楽が出来るだろう。
フラン達がいるのは海側にあるこの国の王都だ。
余り魔獣がいないため素材が尽きてきた。フランが必要とする素材は買うとしたら凄く高い。
魔法袋を作りたくても、もう素材がなくなってしまい、諦めた。
他に何か良い物は無いだろうか。フランは錬金術師の本をじっくり読み始めた。
火属性の加熱器、水属性の水流器、土属性の皿、なんというか総てありきたりだ。
作る事は出来るが、敢えて買いたいものだろうか?手間が掛かる割には価格が安い。
後は、手持ちの素材で作れる物は、誰でも魔法が出来るステッキ?これは売れるかもしれない。
小さな魔石とトレントの木で出来る。
早速作ってみた。水、火、風、土、光それぞれ1つずつ。これをバスに使って貰って使用感を試して貰う。後は売れ筋で、治癒のスクロール。くらいか。
色々作っている内にバスが帰ってきた。
「どうだった?僕らが行っても登録出来そう?」
「大丈夫そうだ。この国は12歳から登録出来る。」
と言う事はエステバルは普通に登録出来る。僕は少し足りないが、背丈はエステバルと同じだから、ごまかせる。明日からはまた冒険者をしていける。
「でも、魔獣がいない。登録だけして場所を変えるか。」
バスの一言で、早速登録して、南に移動することになった。南の森には魔獣が一杯いるそうだ。
三人で山脈側にある街を目指す事にした。
山脈には、山羊の魔獣、トカゲの魔獣、蛇の魔獣などがいると言う。
「蛇の魔獣、若しかしてダークスネイクがいるかも知れない。魔法袋が作れるよ。」
早く売れる物を作りたい。フランは少し焦っていた。路銀が尽きそうだ。皆のお金を管理している身としては気が気では無い。
「この魔法のステッキ。売れなかったしな。俺は魔法が全く使えなかったから、嬉しいけど。」
そうなのだ。これくらいの魔法は誰でも使える。全く魔法が使えない人にしか売れないのだ。一般の人は魔法がなくても不便はないし、冒険者は、少しなら魔法が使えていた。ステッキの魔法は微妙だ。こんなのは態々買わなくてもなんとかなって仕舞う。一本につき属性が1つなので、何本も持って歩くわけにも行かない。魔法袋を持っているバスなら問題ないが、そんな冒険者はいないし。
治癒のスクロールもあまり売れなかった。薬師の作る水薬やタブレットの方が安価で携帯し易くよく売れた。フランも作って少し売ったのだ。
まあ、魔法ステッキはバスには喜ばれたから、それでいいとしよう。
「もう直ぐゴモの街に着く。」
この国の中間にあるゴモの街は山側に位置していた。ここは冒険者も多くいそうだ。
門番に、冒険者のタグを見せると直ぐに通してくれた。
「エステバル、宿は大部屋にしてくれ路銀が足りなくなってきた。」
「そうか、じゃあ急いで冒険者ギルドへ言って稼がないとな。」
冒険者ギルドは混み合っていた。
「初めての人はこちらに集まってください。」
何でも、新人が冒険者に成る季節なのだとか。周りはフランと似たような年齢の子供で賑わっていた。
新人は講習を受けないと狩りに行ってはいけない仕組みだ。フラン達は新人ではないと言っても信じて貰えない。仕方がないのでエステバルとフランは講習を受けることにした。
狩りはバス一人で行くことになった。