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11どっちに付くか

このボーア国の国王は今八十八歳になる。彼には世継ぎがいないため,遠縁に次代を決めていた。

彼は幼い時大変な魔法の才能があると言われ,当時の教育係の魔術師について修行することにした。

しかし思ったほど才能は伸びず,其の侭王となったが、子供に恵まれなかった。

彼は,幼い時の術の影響だと思い込んでいる。

自己顕示欲の強い彼は,自分が不能だとは認められないでいる。彼の政策の影響で,ここ70年は魔術師の地位は最底辺になっている。

昔のことを知っている人はごく僅かだ。そして知っていても、口には出さない。

このまま、意固地な政策が続けば、直ぐにでも国は終わってしまうだろう。

目端の利く貴族や大商人はすでにこの国を見限り始めている。

後は時間の問題だった。何も、隣国が小細工などしなくても、いずれ終焉は来たのだ。


リスト辺境伯デスコバル・リストは今悩んでいた。寝返るか,ここで踏ん張るか。

明日にでも王が死ねば,好転するかも知れないが、次代がどんな人物かは分っていた。

一言で言えば無能だ。期待は持てないだろう。王の性格のせいで,王の周りにいる側近は王の言葉に唯々諾々と従うイエスマンばかりになって仕舞っている。

そして、隣国タラン公国。こちらは公国といえど、ボーア国とさして規模は変わらない。魔術師を育てる政策を推し進め、近年は魔術師の数はボーア国と拮抗してきた。

戦争での痛い失敗に学んだ容だ。精霊樹はその魔術師の力を更に押し上げることになる。

自分がタランに転べば,確実にこの国は滅びるが,裏切り者のそしりは避けられないだろう。


「エステバル、辺境伯の言葉は,どういうことだと思う?」

「まるで俺に戦争の発端をさせたいみたいだったな。」

エステバルは、苦虫を潰したような顔で答えた。やはりエステバルも、そう感じたのか。辺境伯は、この戦争で僕達を捨て駒にしようとしている。

ここで、其の侭良いように使われてしまうのは,嫌だ。私怨はあるが,今それを晴らさなくても良いではないか。時を見て、敵を討っても良し、打たなくても良いのだ。

「敵は,如何しても打ちたい?エステバル。」

「この頃は,分らなくなってきた。国も貴族も、皆自分たちの勝手で動いている。そのせいで、トンプソンが死んだような物だ。そんな物に翻弄されるのは,嫌になった。」

「僕も同じだ。この国を出たい。ここでなくても生きて行けるし,この世界にはもっと違う考えの場所もあると思うんだ。」

「そうだな。俺達には国の存続なんて関係ない。家族なんていないのだから。」

お互いの,気持ちを確認し合い、バスに相談した。バスは、

「エステバル,フラン、違う国へ行って仕舞うのか?」

「行きたいと思っている。」

「じゃあ、俺も行く。」

バスは,この間好きな人と一緒になるって言ってなかったか?若しかして,振られた?

バスが来てくれれば、心強い。何と言ってもフラン達は未だ未成年だ。

フラン達はリスト辺境伯をでて、南に向かった。

南は孤児院が有る方角だが、孤児院には寄らず迂回して国境を越えていく。


それぞれの魔法袋に荷物を入れているので、旅は身軽だ。院長から貰った、かさばる本だって入ってしまう。皆でスッキリした気持ちで旅を楽しんでいた。




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