武器屋のバイトが旅立たないでそのままバイトを続けたら、大儲けしました【短編Version1】
とあるRPGシリーズの仲間キャラの中に、武器商人というのがいた。
武器を売るのが商売だが、他人に武器を供給しても、肝心の自分はというと、戦闘ではそれほど役に立っていない。
セオリー通りなら、勇者とともに旅をして、魔王を倒し、世界を救ったパーティーの一員になる・・・、はずだった。
そもそも、旅をするきっかけが、ただなんとなく、遠くまで商売に行ってみようという、ただそれだけの理由だった。
私の名前は、武器屋トネリコ。
私は今日も、妻の手弁当を持って、武器屋のバイトに行く。
「さあ、今日もバイトをがんばろう。」
すると、開店と同時に客が入ってきた。
「ここは武器の店か?」
私は、冗談で答えてみた。
「いえ、違います。武器屋じゃありません。」
すると、お客さんは、
「おい、おい、冗談だろ。この店構えは、どう見ても武器屋だろ。」
お客さんは、さらに続ける。
「売っているものを見せてくれるか?」
私は売っているものを見せた。
こん棒 20ゴールド
鉄の棒 50ゴールド
短剣【脇差し】 80ゴールド
無銘の剣 100ゴールド
大したものは売っていないが、バイトの経験を積むには、ちょうどいい。
「こん棒、鉄の棒、短剣、無銘の剣、1本ずついただきたいが、よろしいか?」
しめて、250ゴールドの売上になった。
このようにして、夕方まで働いた。そして夕方、武器屋のだんなが出てきた。
「今日はもう遅いから、そろそろ店じまいだ。ご苦労だったな。
ほれ、今日の給料だ。明日もしっかり頼むよ。」
1日働いて、給料は100ゴールド。
待てよ。いいことを思い付いた。もしこのまま、ひたすらバイトし続けたら、いくら稼げるか、試してみようと思った。
単純計算して、1日100ゴールドとして、1年間、
365日働いたとしたら、36500ゴールドということになる。
ただし、土日祭日休みも入るとして、金額はいくぶん下がるな。ただ、多く稼げる日もあると考えたら、これより増える可能性もあるかもしれない。
私は、町から旅立たないで、この町の武器屋のバイトを続けていく決心をした。
そうしているうちに、この町に出張カジノなるものがやってきた。
このカジノのゲームで勝てば、所持金が何倍にもなるという。
今日の給料、100ゴールドを全額つぎ込む。
モンスター競技場 オンライン という、
最近の出張カジノで流行りのもので、その場に行かなくても、遠隔でモンスターの対戦予想をすることができるとか。
しかし、予想は外れてしまった。やっぱり、こんなもので儲かるわけ無いんだ。
そればかりか、大損すれば一文無しになってしまうばかりか、借金漬け、ギャンブル依存症になってしまう。そうなってしまったら、一攫千金どころか、一生を棒に振る。だから、手を出すな。
その後、この出張カジノの運営者は、イカサマがバレて捕まったとか。
やはり、武器屋のバイトで稼ぐ以外の方法は無いようだ。
というわけで、とりあえず1年間は、武器屋のバイトでお金を貯めることにした。
それから1年。勇者は魔王を倒し、世界を救った。私は地道に武器屋のバイトを続け、ついに目標金額の36500ゴールドに到達した。今や私が、町一番の金持ちだ。