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第2話 どんな状況?

どこから覚えてる…?

どこまで覚えてる…?

皆、流転の國という名だけは覚えてる。

「流転の國 〜突如として世界を統べる大魔術師になった主人公と、忠実で最強な配下達の物語〜」と同じ展開が待っていた。

今さらだけどタイトル長いな。

「影沢麗と申します。これからよろしくお願い致します」

一通り自己紹介が終わると、皆は仕事に戻る。

麗はまだ指示を受けていないので、まずは自分のデスクを整えている。

「あの……失礼ですが、影沢さんは……」

秋里は仕事が手につかない様子で、麗に話しかける。

凛々しく美しい彼女の姿が眩しくて、つい見とれてしまう。

「何でしょうか?えっと…山吹さんでしたよね?」

麗が振り向くと、肩まであるプラチナブロンドの髪が揺れる。

秋里は頷くと、ドキドキしながら続きを言おうとした。が。

そこへハスキーボイスが割って入る。

「本当に美人さんだよねぇ。その見た目だと、貴女も欧米系の血が入ってそうだね。いや、私もなんだけどさ」

秋里が躊躇いながら聞こうとしたことを瑠璃はさらっと口にする。

瑠璃は気さくな性格で誰からも好かれているが、一応このオフィスにおいては御局様ポジションである。よって、誰も逆らえない。

「はい。私の両親はフィンランド人です。正確に言うと、母が日本人とフィンランド人のハーフで…つまりはクォーターですね」

作者よ、非常に分かりづらい設定だぞ。

「では、その髪は地毛なんですね」

「はい。何度も黒髪にしようと思いましたが、私には似合わないのではないかと思って…。山吹さんの綺麗な髪が羨ましいですわ」

麗は最初に話しかけてきた秋里の真っ直ぐな黒髪ロングヘアを見つめる。

「いえ、そんな…!影沢さんの方が絶対に美しいです…!」

どうにも仕事が捗らない。

「そういえば、瑠璃さんはハーフだと仰ってましたよね?」

少し離れたデスクから舞が話に加わる。

「うん。私は日本人とオーストラリア人のハーフなんだが、この外見のせいかオーストラリア100%に見られることが多い」

そう言って瑠璃が笑う。確かに、日本人の血をどこかに置いてきたのではないかという外見をしている。

ブロンドのミディアムヘアにウェーブをかけ、色白の肌と灰色がかった碧い瞳を持つ瑠璃。その整った顔立ちはモデルではないかと思う程に美しく、立ち上がってみれば、すらりとした長い手足に豊かな胸にくびれたウエストという抜群のプロポーションである。

「麗ちゃん、かなり背高いよね。190くらいある?」

早速、名前で呼んでいる。

「はい…ちょうど190cmあります。私としては小柄な女性に憧れます」

そう言って秋里を見る。

「そ、そんなことないです。秋里は背の高い人が羨ましいです!」

「私は174cmあるけど?」

「自慢しないでよ!…ていうか、背が高い上にハイヒール履くなんて反則よ!」

瑠璃が履いているパンプスは上品なワインカラー。そしてピンヒールである。

「秋里も高い靴履けばいいじゃないか。…あ、転んじゃうんだっけ?」

「もう!瑠璃さん!!」

秋里は終始からかわれている。

「確かに、ピンヒールを履いたら転んでしまいそうですな。…瑠璃殿は美しく履きこなしていらっしゃいますが」

寧々も会話に入ってくる。彼女の背丈は社長と同じく160cmである。

(皆、全然仕事してないな…)

そう思って聞いている純も流転の國から日本のオフィスに顕現した皆のことが気になって仕事どころではない。

そこへ、

「皆、仕事は捗っているかしら?」

社長が現れる。

日本名は神崎真綾。

「社長…!」

「魅力的な新人さんが来て嬉しい気持ちは分かるけれど、彼女にも仕事を覚えてもらわなければならないの。…寧々、こっちに来て」

「はっ!失礼致します」

「仕事の内容的には貴女が教えるのが一番良いと思うわ。…それと、秋里」

「はいっ!社長!!」

「お昼休みが終わってからでいいから、麗さんに会社の中を案内してあげて頂戴。よろしく頼むわよ」

「はいっ!畏まりました!!」

先程まで麗に見とれていた秋里も、社長を前にするとこんな感じである。

秋里は入社した時から真綾に憧れていた。

気高く美しい才色兼備の女社長。

優しく可愛らしい声。整った顔立ち。

洗練された立ち居振る舞い。

そして、彼女の動きに合わせてさらさらと軽やかに揺れる短い髪。

髪の短い女性に惹かれたのは初めてだった。

一目惚れだった。

社長のベリーショートに憧れ、黒髪ロングをバッサリ切ろうとしたら、瑠璃にやんわり止められた。彼女のセンスは口惜しいが的確だから、黙って従った。

「…でも、憧れの女性と同じ髪型なんて、素敵だと思わない?」

大先輩の瑠璃に対してこんな口が利けるのは秋里だけである。

「それはそうだが、秋里はベリショよりショートボブとかの方が似合うと思うよ。…まぁ、私の好みも含まれているけどな」

「瑠璃さんも…女性が好きなの?」

秋里は同性愛者。これは皆が知っている。

「うーん…私はどっちでもイケる。バイ・セクシャルというやつだ」

「じゃあ、やっぱり…社長のことを本気で好きなのね…?」

「当然だ。真綾様に恋をしない人間などいるはずがないじゃないか」

瑠璃は見目麗しい社長の姿を思い浮かべる。

そして、深く頷くと、

「うん、確かに秋里の気持ちも分かる。じゃあ、いっそのこと二人でベリショにしようか」

そんなことを言い出す。絶世の美女と言っても過言ではない瑠璃から見ても、社長は美しい女性だ。同じ髪型にしたいという秋里の気持ちはよく分かる。

「…ちょっと、何の話してるの?二人共」

二人が喋っていると、休憩室に純が現れた。

「お疲れ、純。…今、二人で真綾様のヘアスタイルを真似しようと計画を立てていたところだ」

「社長の髪型って…二人してベリーショートにするってこと?」

「ええ。…でも、実は秋里、一度もショートにしたことないの。似合うかしら。玉木はどう思う?」

「いや、僕に聞かれても…」

玉木純は困惑しつつ、

「社長は山吹の綺麗な黒髪を褒めてたけどね」

「えっ!?そうなの…?」

「ああ。真っ直ぐで美しいロングヘアだって、仰ってたよ」

秋里はそれを聞いて自分の世界に入る。

「社長…!秋里の髪をそんな風に見ていて下さったなんて…!感激です!ってことは…秋里はこれからも黒髪ロングでいるべき…?ああ、一度でいいから社長に髪を触ってもらいたい…!」

「やれやれ。本当に面倒な奴だ」

瑠璃はそう言いつつ、恋する乙女な秋里が少し可愛いと思った。

「…それで?私の髪に関しては何か仰っていなかったか?そもそも、真綾様はどんなヘアスタイルがお好みなのだろう。私は普段なんとなく巻いているが、実はストレートの方がお好きだったりするだろうか?」

金城瑠璃。誰もが見とれる美貌の持ち主であり、30代と偽っても気付かれなさそうな49歳美魔女。なぜか恋愛に縁がないが、本人は全く気にしていない。色々と謎の多い人物だ。

「直接聞くのも烏滸がましいし…私はどうしたらいいのかな…」

秋里ワールドの横で瑠璃は悩む。

二人を横目で見ながら、純はこの状況について分析しようとする。

作者もこの状況について分析しようと思う。


一体、皆は「流転の國 〜突如として世界を統べる大魔術師になった主人公と、忠実で最強な配下達の物語〜」の中のどこの時間軸でここに飛ばされたのだろう。

皆、自分達が流転の國からこの日本という不思議な世界に飛ばされたことは分かっている。

そして、流転の國で魔術師だったことは覚えているが、詳しいことまでは覚えていない。


一方、彼女だけは全てを知っていた。

(瑠璃…。近々貴女をプライベートな用事で呼び出すわ。そしたら…流転の國で私達がどういう関係だったか、思い出させてあげる…)

しかし、覚えているだけでどうやって戻るのかは全く分からないでいる。


(瑠璃…。いえ、ルーリ。流転の國に戻る鍵はきっと貴女が持っているはずよ)


マヤリィは玉座の間にいた時と全く変わらない姿で、社長室の椅子に腰掛けていた。

『闇堕ち編』はどこにもなかった物語なので、当然の如く誰一人としてその記憶はありません。

このスピンオフは一応、現実。なのかな…?

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