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人も歩けば溝で溺れる

 「だから、料理が得意っ。疲れたときには甘いものだし、お菓子づくりを最近はしているんだっ。」

 「言われたページ数丁度で開くことができよ。あとは針に糸をスムーズに通せることかな。」


 ……甘いものを野外で作るのは手間がかかりすぎるよ。それなら豪快に生肉を火で炙るくらいでいいし。本は……しおりを使って。ましてや糸通しは何に使うつもりなのだろう。自らの腕で衣類を仕立てられるのなら……その道を勧めるよ。


 「そっ……か。わかった。じゃあレインは栄養が取れそうな料理を作ってもらうとして、トサーロは……それを手助けするために大丈夫そうな食材を調べて。各々が準備をしてまた明日、ここに集合でいいかな。」


 2人に視線を向ければコクリと頷いた。この付近の相手なら私一人でも平気だろうと、自らに言い聞かせるように少し息を吸い込めば話を切り上げその場を後にした。私にも準備はある、むしろ準備を念入りにしないと危険かもしれない、と。


 先の大災を解決したとされる人物を記した資料によると、その右腕は突き上げれば大地が割れるほどの衝撃が湧き、左腕には雷を宿す杖を持つ。ひとたび杖に向かい言葉を発せば空気を裂いたほどの轟音が響いたそうだ。


 勿論真似をしてみた。右腕を天へと向かって数度突き上げる。空気がバッ、バッ、と鳴るくらいには素早く突ける。雷を宿す杖がどこに眠るかはわからないけれど、狼の群れを威嚇する程度の声量なら難なくと出せる。要はごり押し、パワーで解決したと言うことだよね。


 身体を酷使する以上、アイテムは欠かせないだろう。私は残りの金貨を使い、近くの道具屋へ足を運んだ。決して愛想が良いとは言えない初老のおじいさんが営む店なのだけど、品揃えは良い。ちゃんと目利きしたものを置いてくれているからこそ長続きしているんだろう。とはいえ、世間話をしたこともないから何時から営業しているかもわからないし、何歳かも知らない。

 ひとつ、ふたつと商品を手にいくつか取り店主へと渡した。指折り金額をまとめると小声で金額を伝えてくれた。その要求通りに金貨を用意すると丁寧に紙袋にまとめられ交換する。この荷物を持ち帰り、明日持ち運ぶ袋に入れてしまおう。少し多く用意して損することもないだろうから。


 あとは酒場で情報収集としよう。地図をもらったとはいえ初めて行く場。だとすれば経験者に注意すべきことなど聞けるのが一番だから。

 私は荷物をかかえつつ酒場へと足を進める。日も沈み当たりに暗闇が見え始めては町に灯りがともり始めた。馴染のある景色だけれど改めて見回すと綺麗なものだ。もうすぐ旅立ちだと思えば少し感慨深い気持ちにもなる。

  

 「……よし、みんなに迷惑をかけないようにしっかりと情報集めよう。」

 意気込めば酒場へと足を踏み入れる。既に中はガヤガヤと騒がしい。……喧嘩だろうか。奥で誰かが言い争いあい、何か割れるような音もしていた。

 

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