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重い想い

 あれからどれだけの時間がたっただろう。装備の希望をあれやこれやと付けていたらあっという間に時が進んだ。でも後悔はない、むしろとても有意義な時間だったと思う。やはり筋肉は正義なのだな、って。

 「じゃあ…次はこう…腕の力が入りやすいように可動域を…」

 自らの手でもひとつとポージングを取ってもらうように動いてみる。自分には無いものを見られるこの瞬間、たまらないものがある。


 「ちょ…いと待ったっ。こだわりは勿論大事だがよ、そこまでハイセンスなものとなりゃあ材料も時間も足りねぇんだよなぁ…。それとなく案は形に出来るようにしておくからよ、材料を取ってきちゃくれねぇか?勇者、目指してんだろ?」

 危ない。少しと自我を出しすぎていたのか話に夢中になるあまりに迷惑をかけたのかもしれない。しかしこれは自らの腕を確認するのにバッチリな試練。任せろとばかりにひとつ頷いては今まで自らと共に耐えてきた木刀を手に意気込みを見せた。 


 「んじゃあ今から言う素材を持ってきてくれ。ひとつはここから北へ少しと向かった町外れにある川から【赤い泥】それでそこから西へ2日ほど歩んだ洞窟にある【青い牙】正式な名前じゃねぇが特徴的なもんだから見つけたらすぐにわかると思うぜ?」

 そう言えば近くにあった適当な図面を過去のものにするようにと行き先の地図を書いてくれた。やはり優しい、丁寧なこの心遣いはやはり必要だろう。 


 「行ってきます。晩ごはんまでには帰ると思う。」

 まず無理だがその冗談は面白いな、だなんて豪快な笑い声を背に受けつつ。クルクルと地図を丸めては懐に忍ばせ、店を後にする。せっかくの時間を切り上げるのは名残惜しいが期待に応えるためだ、我慢。


 「あとは…そろそろ時間か。もう集まっているかな。」

 魔法学校の鐘はまだ鳴らない。昼に一度、夕方の17時に一度と鳴るため時間にはまだ余裕があるがそのままに向かうことにした。言い出しが遅れては申し訳もないから。


胸元で地図の温もりを感じながらも広場へ着くと先程までテント周辺にいた人たちはまばらになっていた。とはいえ数名残って居ることからまだ診断士は仕事をしているのだろうか。限られた間とはいえ忙しい仕事だ。

 そんなことを呟きながらも集合場所に着いた時には既に知った顔が見えた。いつも綺麗な衣装を着てはどこかの姫と間違えるかのようで、凛と姿勢も正している。綺麗な金色の髪はゆるりと内へと巻きふわふわとして、撫でると羊の毛のように安心するんだ。


 「レイン?随分と早いけど……、無理を聞いてもらってごめん。時間は平気だった?」

 私は静かに寄り声をかけた。

 「……!? く、くぁひす! あ、えー……と、だいじょうぶだよっ。む、むしろ……お誘いありがとうございます。嬉しかったからつい、早めに着いちゃっただけ、だからっ!」

 声をかけた途端にびくんと肩をすくめては驚かせてしまったようだ。しかしこんな反応がとても可愛く思える。背も私より低いことがあってか昔から妹のように接していたっけ。


 「そっか…ありがとう。レインは優しいね?」

 無意識のうちに相手の髪へと手を伸ばしては撫でていた。少しと走っても来たのだろうか、所々跳ねてしまっている髪の毛を丁寧に整えていればそれを素直に受け入れているのか顔を伏せて黙ってしまった。 

 「あとは……トサーロか。時間に間に合うように来るかな。」

 私はそんな相手の耳元でポツリと呟いた。


 「トサーロ…?トサーロって何?」

先程まで静かに俯いていた相手が何を思ってかゆっくりと顔を上げ、私へと視線を向けてきた。

 

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