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スタースタート

 「そう、ここが青い牙。純度が高い魔力が溜まっている場所なのさ。」

 ラティは少しばかり自慢げに口を走らせては壁面から伸びるそれをもぎ取る。すると内包されていたであろう魔力がラティの身体の中へと取り込まれ青白いオーラとなって姿を覆った。

 「これを素材として持ち帰るのは普通の人には難しいだろうけれど、吸い込まないように此方からも魔力を同じ力でぶつければ形が保てるんだよ、……こうやって、ね?」

 誰もいない洞窟の奥側へと手を伸ばし自らの手の先へと魔力を込めていくと、先ほど自らが取り込んだ物質を瞬く間に発現させてみせた。むしろ何か加工がされた刃先に見えれば、無から有を作り出すのはこういうことなのだろうかと私は感心してしまった。

 

 「ほら、ものは試しだ……一度やってみたらどうだい?」 

 私は言われるがままに床から伸びる【青い牙】に触れた。握るだけでも自らの体内に染み渡るかのような感覚にとらわれながらも、それに応えるように魔力をその手に込めようしてみせた。そして物質の形を保たせるように願いを込めながら牙を引き抜いてみる。    

 「……、あれ。……手に何も……残らないんだけれど。」

 掴んで引き抜くまではその手に感覚があったものの、いざ抜ききった時にはその手に残るものは何もなく、ただ身体に染み渡った感覚だけ覚えてしまった。2度、3度と触れては消え、周囲に残る青い結晶体は徐々に減っていく。

 「んー……やっぱり常に魔力に触れてないと難しいのかな……。ほら、慣れって大事だって言うだろう?」

 勇者だとしても万能だとは言えない、そんなことはわかってはいるもののやはり頭では追いつかないものだ。私ならなんでも出来る、苦難があれど乗り越えられると思っていた考えがいとも簡単に跳ね除けられてしまったのだから。


 「っと……とりあえず後回しだ。さっきの物音が奥にも響いていたようだね。追加で戦闘になるよっ。」

 ラティが先に反応し身構える中、私は納得できずにその場に立ち尽くしていた。自分の力で何も出来ないのがもどかしい、誰かに手助けをしてもらわないと思うように進めない。そんな自分に嫌気が差していた。しかし敵はその感情など知るすべもなく、死角から私に容赦なく襲いかかってきた。

 「ッ……!危ないっ!」

 「うるさいッ!邪魔をするなぁ!!」

 私は言葉を荒げ、襲いかかる魔物へと言葉を発する。すると先ほどまで此方に敵意を剥き出しにしていた魔物が勢いよく静止し、ゆっくりと一歩一歩と足を戻し始めた。近くにいた1体は耳から血を流し、眼球が骨格から飛び出て膨らませすぎた風船のように顔面が膨張してしまって既に絶命しているようだった。

 「いったい……何が……っ!ラティ……!」

 私は咄嗟の事で何が起こったかわからないものの、未知の敵からの攻撃だとするのならラティも無事ではないのではと辺りを見回した。

 

「おー……いたた……。ちゃんと聞こえてるよ。大丈夫、安心しな?」

 両耳を手で塞ぎながらも意識ははっきりとしており答えが返っては来たものの、鼻からは少し流血をしてしまっているようだった。

 「大丈夫……?一度出直したほうが安全だろうか……。」

 「……いんや、ちゃんとした武器があるようで助かった。まだまだ荒削りなんだろうけどね?」

 そう言うとラティは私の唇をそっと人差し指で触れた。その指は先ほど魔力に反応したときのように青白く光輝きながらも薄ら暗い洞窟を照らしていた。

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