ムソウ
狭い洞窟の中で群がっているオークは統率が取れていないためか個別で順に此方に向かってくる。振りかぶる短刀を私は切り上げては武器を跳ね飛ばし、ガラ空きになった胴へと返す剣を打ち込む。その場にうずくまり苦しむ様子の脳天へすかさず木刀を打ち振れば頭蓋を割る鈍い音を静かに立たせつつ、まずは一体と絶命させる。壁を背にすれば背後から襲われる心配もないため個別で立ち向かう中、ラティは違った。
「ほら、どんどんと来なよ?こんなんじゃ自分らの戦力を無くすだけだし、意味ないよね……とぉっ!」
狭い空間にも関わらず、オークから繰り出される攻撃を右へ左へ体勢を傾けては簡単に避けつつ、裏拳に肘に膝と自らの四肢を巧みに扱えば的確に急所を貫いていく。
「ま、ここらの魔物じゃこんな程度かなぁ……。 まとめて潰しちゃうけど……よさそ?」
洞窟の入口側を背にし、自らの正面へと握りこぶしを立てればその手に力を込めるように静かに呼吸を整えては集中を始めた。周囲は異様な冷気を放つかのように空気が重くなり、私の知る魔法とは違う何かだと思わざるをえないほどに異質なもののように思えた。
「そんじゃ……いつでも出直してきなねっ!」
一歩地面を踏みしめ、勢いよく空を叩けば風を切る拳と同時に洞窟内に嵐を巻き起こした。ラティの正面から洞窟の奥まで風が勢いよく通り抜けると密集していたオークは散り散りに吹き飛ばされ、近くにいたものは肉体が分断され先程まで動いていたとは思えないほどに肉塊と化していた。
「……。いや、……やりすぎでは?」
私はポツリと言葉をつぶやいてしまっていた。むしろこれが世界の標準だと言うのなら今の私では到底足元にも及ばないであろう。それほどに力の差があると思った。
「んー?これくらい誰だって出来るもんさ。要は使い方を知っているかいないか、それだけだよ?」
軽くウインクを返すラティを見れば嘘をつけとでも口に出して言いたかった。が、パシパシと埃をはらう様子を見せつつラティは洞窟の中へと進んでいく。先ほどの嵐で洞窟内の壁面が削れたため、深部まで進むのにそう時間はかからなさそうだった。
「ところでその使い方……っていうことだけど。どこで学んだのか教えてもらえることって可能かな。」
私はラティの後へ付きつつ疑問を投げかけた。
「可か不可かって言うのなら可能だけれど……、合うかどうかは別問題。やっぱり適正ってあるからね?それを診断士に判断してもらってたんじゃないのかい?」
そうだ。その時に診断士は何と言っただろう。素晴らしい武器を見つけろ、強大な敵を倒せ、心強い仲間と過ごせ。勇者としてもっともらしいことが聞けただろうか。
「……確か…。」
「ちょっと待って……。ここだ、青い牙が多く尖ってるねぇ。景色がいいものだろう?」
私が思い出している最中、ラティは足を止め目の前を指差す。そこには美しい青色の光が洞窟内で煌めき、星のように輝いていた。




