じゃぶじゃぶ
「さて、と。もう皆準備はいいよね。そろそろいこうか。」
私は荷物を背に持つと周りを見回す。今からなら夕飯時には任務を終えて帰路につけるだろうと思い急かしてみた。
「そうだねぇ、このまま向かって私は問題ないけれど。……大丈夫かい? 周りが付いてこられてないと駄なんじゃないかな?」
ラティはすくと立ち上がり背伸びをしつつもひと息つくと、意識を手放しているものや本に夢中になっているもの、食の改良に熱を注いでいるもの。まとまりがない。それもそうだろう、この依頼がこなせないと困るのは私だけだろうからだ。
「……そう。じゃあ私一人でなんとかする。道案内だけ頼んでいいかな。」
無理を言うことも出来ず、ここで一度明確に役割を分けることにした。
キャンプ地での見張り件、洗濯担当レイン。火番件、タイムキーパーのトサーロ。荷物番件、毒見のタポル、そして案内人のラティだ。各々に役割を伝えればグッ、とやる気はあるように見えるも本当に伝わっているかはわからない。タポルは聞いていない。
「よし、じゃあ行こうか。なぁにそこまで苦戦するほどじゃないしなんとかなるよ。」
パチリとウインクを此方に投げかけながらも、実力は確かにあると私は思った。場馴れをしているように思えたのもあるだろう、私はその言葉を信じて案内人の後に続く。
「よーし、ここだね……。それでなんだっけ、青い牙、だっけ?きっと長い年月で伸びた鍾乳石だと思うけど……そんな貴重なもの何に使うと言うんだい?」
2人で洞窟の入口に立てば早速と答えが聞けた。
「依頼の話だから何に使うか、どうなるかとまでは聞いていない。でも必要だと言われたから集めるだけ。」
装備のひとつになるだろうとは思っていながらも具体的にどうとはわからない。でも素晴らしいものが出来るのだとは思っている。なぜならオッズさんが言ってくれていたから。
そう思っていればあの香りが懐かしく思ってきた。早く帰りたい、いっそここに居てくればいいのにと思い考えれば考えるほどに気持ちが沈んでいった。
「ふーん……、まぁ良いけれどさ。取り扱いには注意しなよ?私の予感が正しければ厄介事に巻き込まれることになるだろうから、ね!」
そう言い切ると同時に私の目の前に一閃、何かが横切ると同時に洞窟内に音が響き渡る。その先を視線で追うと壁に押し付けられた何かの血飛沫に残された死骸があった。小型のオークのようだが手には小刀を携えており、武装しているのは明らかだった。
「ほぅら。団体さんのお出ましだ。青い牙……これは魔力の結晶でね。それを狙った魔物が寝床にして集まることが多くあるのさ。無事に持って帰りたけりゃ……ちゃんと自分の身は守るんだね!」
勢いよく地面を蹴り、相手に駆けると懐に身体を滑り込ませ鳩尾へ肘をねじ込む。するとその勢いのままに壁面へと吹き飛ばされ洞窟内に轟音を響かせた。
土煙が舞う中、軽やかな足で淡々とリズムを刻みながらも敵へと視線を向ければ臨戦態勢を整える。魔術が使えるのにもかかわらず彼女の攻撃は……単純な暴力がだった。




