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エスケープ・アタック

 スライムの悪夢を見た気がする。

 「おはよう私。生きてたら身体を起こさせてほしい。」

 そう伝えてれば上体をゆっくりと起こしていく。流石に気絶していたとは思わないが、夢に見るほどに脳内に焼き付いていたのだろう。トラウマを植え付けられた気がする。

 

 「レインにトサーロ……あとタポルは……まだあるか。」

 寝ぼける瞳を軽く擦りつつも辺りを見回せば皆寝静まっているようだ。周りを警戒することもなくのんびりとした光景はこのあたりはまだまだ平和なのだろうと思わせるに十分だった。


 それとは別にラティは朝から元気に水浴び……いや、はつらつと魚を捕らえていた。既に串に打たれている魚類が五、六本と立ち並んでいる。

 調達方法はワイルドに手掴みときた。あれほど奇怪な術を使うなら他にも方法はあるだろうに。


 「お?起きたかい?元気そうならそこの魚を適当に焼いておいておくれよ!」

 串に刺さる魚類を指で示しながら声をあげた。幸いに昨夜灯した火は消えずに残っている。

 私はその串を両手で持ち、火でうまく炙れる位置へと突き刺し一息ついた。敵はたいしたことはない、ただ食事面。これはもう少し気を使ったほうが良さそうだ。ただでさえ野宿が多くなりそうな旅だ、途中で食あたりにでもなり全滅するのは避けたい。

 「……レインに料理教室に通ってもらおうか……いや、そんな時間も場所もないか。」

 私はひとりでにぼやいてしまった。


 「なぁに。腹が膨れたら一緒だよ。それともグルメすぎて舌に合わなかったとかかい?」

 半分ずぶ濡れな服を両の手で絞りながら背後へとラティがやってくる。見知らぬ生物を運ぶべく宙に浮かせていれば器用に火へと寄せると焦げぬ程度の位置でじっくりと火を通してみせた。


 「そんなつもりは……ないよ。ただ味の好みはそれぞれだからこそ、慣れないといけないなと思っただけ。」

 串に刺さる魚の半身も焼くように位置を調整し、ぐるっと回しつつ刺し直した。


 「ま、王都だろうが辺境の村だろうが。うまけりゃ良いんじゃないかい?それに、新しい魅力に気づけるチャンスだと思えば多少は楽になるんじゃないの?」

 絞りきった上着をその場で脱いでは乾かすようにと火に寄せ温める。火はやはり万能か。


 ……しかし思い悩んでも何も前には進まないのは事実に違いない。私はまず目の前の事に努力をすることを決めた。

 

 そう、この得体のしれない魚類を食べなければいけないかもしれないという事実からだ。

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