言いたいことも言えない
タポルは……起きない。よほどダメージが出ないように思える。
「仕方ない。回復させるには栄養を取らないといけないし、少し別にいただくね。」
私はそう言うとスライム仕立ての何かを手に取り両の手で割っていく。
パリ、といい音を立てはするものの、中を見れば真っ赤な断面。こぼれ落ちる具材を見れば、やはり初手に口に入れる勢いが持てない。意識がないタポルの口を片手で無理矢理に開かせては割ったスライムもどきをそのままにねじ込み口を閉ざせた。咀嚼をさせ、しっかりと味見をしてもらうようにガシガシと頭を動かすも意識のない相手はピクリともしない。
「……、トサーロ。食べないの?」
私は第2の候補へ優しく問いかけた。読書に集中しているためか料理には目を向けていない。今がチャンスだと私はスライムの片割れを相手の口元へと寄せる。
「じゃあ、もらおうかな。どういった料理なんだい?」
視線は文字へと向いたまま、片手はこちらへ手のひらを見せると静かに置けばスッと押し付けた。するとそのままゆっくりと口へと運べば、歯で身をちぎり体内へと取り入れる。二度、三度と咀嚼をしつつも本を閉じ自らのリュックへとしまっていく。流石にマナーが悪いとでも思ったのだろうか。
「味が……。 え、むしろ舌……ある?」
何を言うかと思ったら戸惑ったかのように周囲を見回す。水でとりあえずすすごうと川へ向かい立ち上がろうとしたとたん、急にバタリと前のめりに倒れ込んだ。嗚呼、これは危ない倒れ方かもしれない。
犠牲者が出てしまった以上、食すことは出来ないと調理者に伝えようと視線を向けたところ。レインにラティ両名は何事も無いように口をつけ食べている。
「中々珍しい味付けだねぇ…これが家庭の味、ってやつかい?」
「知らないわよ、私はこれが普通。他の味なんてむしろあるの?」
……
…………、うん。私は食べた。ひとつ処理すればお腹も満たされたし。話だけ合わせたほうが良さそうだ。
「ごちそうさま、ところでこれは何か刺激物でも入ってるのかな。」
それとなく今後のことも兼ねて私は質問を投げかけるも、奇抜なことは何もしていないと首を横にふる。いや、スライムトークン作るだけでも奇抜なんだが。
「これはあれだよ、地方独自で作られてきた伝統料理だね。具材に皮にと各々の家庭が準備して、客人にもてなすんだ。そこで話のタネを提供しつつ会話を増やす目論見もあるからさ。」
ラティは知ったような口で知識を出しながらも食を止めない。迷惑な家庭料理だ。そんなギャンブルをされてしまうと食も進まないし、お呼ばれされたくもない。むしろ見たことも食べたこともないんだが。
「あれ、クラリス足りなかった?ごめん、また明日使えそうな食材あれば用意するから……今夜はこれだけで我慢してね?」
知らぬ間に無くなっていたスライムに申し訳無さそうに視線を下げる。むしろありがとう、よくやったと言いたい。私一人では処理しきれなかったどころか致命傷になっていたと思うから。




