目覚めの時間
あれからどれくらいの時間が流れただろうか。
……頭が痛い。でもそれを確かめるための身体が動かない。身体に力が入らない。でもいい匂いがする。これは……なんの匂いだ?俺はかろうじて動く目を開くと左右へと見やった。しかし何やら大きな布地の何かや、丸い鉄板のような何かが視界の8割ほどを奪っていてよく見えない。 何処か懐かしみのある声が聞こえるが……それが何かを知る術がない。
「っ……ぉおい!誰かいねぇのかっ……! ……。」
カアァァァン!
また乾いた音が響いた。声の主はまた意識を失ったようで空中へとうなだれたままで荷物のように運ばれている。
「や、……あのー……そいつ生きてます?流石に体力尽きてるんじゃないの?」
レインはスライムの皮をたたみつつも、とりあえずはと片手間に心配はしているようでポツリ質問をする。
「なぁに、大丈夫だよ。それに力尽きても魂と最低限の肉体が残ってればいくらでも復活できるからねっ。心配しないことさっ。」
意識のない人物の頭を軽く見ながらも致命傷ではないことを確認すれば当たり前のように返す。力尽きないとは言っていないので置物にならないように手加減はしてほしいものだけれど、現に何も問題はなさそうだからどうでも良いか。
「ところで、洞窟にはスライムや狼より強い魔物が居る、という認識で良いんだろうか。今の状態で問題ないと言えるのなら突き進むだけなんだけれど。」
私は自らの武器に目をやる。レインにトサーロは戦闘向きでは無いため、閉所なら尚更私が前で奮闘しないといけないと思ったからだ。
「大丈夫でしょ。だって貴女は勇者さまなんでしよう?勢いでなんとかなるなる! 応援はみんなに任せときなさいって!」
そう言うと各々が懐から金具を両手に持ち、カンカンと鳴らす。ときに両手を口元に寄せては、
「がんばれー、あんたが大将だー!」
だなんて声をかけてくれるが、洞窟では音が反響しそうで耳が痛くなりそうだなと思った。
やれやれと息を調え、洞窟への道を歩んでいれば日も傾き始めると暗闇が近づく。夜は本格的に魔物の時間だ。
「よし、今日はここまでにしよう。火を途絶えさせないように注意しようか。」
私はこの場をキャンプ地とすることにした。明日の朝からアタックできるように栄養をつけるべく食事にしよう。
「それじゃあここからは私の出番ね。とびっきり美味しいのを作るから待ってなさい!」
レインは意気込みを見せつつ自らが持ってきた調理道具をドカドカと広げていく。フライパンを取れば、先ほどの殴打事件を観ていたためかそのまま川へと歩みしっかりと水洗いをしていた。何か細菌がついていてはかなわないし、冷静な判断をしてくれていたようで助かる。
「よしっ、それじゃあスライムの皮も水分が抜けていい具合だし……中に具材詰め込むわよ!」
そう言えば何か加工された食材を取り出し、スライムの皮の裂けた部分から無理矢理に押し込む。まるで押しつぶされる前に戻ったかのように内側から膨らんで言った。
「あとはこれを焼いて……終わり!お手軽簡単!皮巻きライス、スライム仕立てよ!」
完成形を見ると、でろっと半ば崩れたスライムが焦げただけのように見えたが香りは悪くない。むしろ食欲が沸き立てられるようだった。が、私はとりあえずとタポルの口に押し込んだ。
「起きて。出番でしょ。」
この時、久々にタポルを頼ろうとした私がいた。




