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酔い止めにもパワー

 ……なるほど。話を聞けば聞くほど謎が深まるもので、あれから何度質問をしただろう。様々な答えをもらっただろう。

 感じたことはあれだ、意味がわからん。ということだ。


 「つまりはだよ、楽して最短で勇者を目指しているのならドンと根城にでも突撃していけば良いんじゃないの?実力が足りないと言うのなら物量で押すとか、毒でも使って弱らすとか、寝込みを襲うとか、爆破するとか。なに、最終的に勝てばそれなりの評価をしてくれるはずだよ?」

 言えることは……そう、中々に危ない考えを持っているらしい。真正面から戦うのが全てではないとは思うが、からめ手が多すぎる。それは勇者と言うよりはむしろ悪の組織サイドの思考ではないだろうか。


 確か私は素材の在処を聞きたかったのと、その場への案内役にとでも思ったのだが。同じ質問をしてもまともな返事が返ってこない。適当な所で退散としたほうが良さそうだが変に目をつけられると厄介かもしれないな。


 「そう……そう?でもありがとう。参考になった。代金はいらないから……良い旅を。」

 私はその場を後にするべく立ち上がる。そして背を向けてはすぐに立ち去ろうと歩みを進めた。はずだった。


 「んー……?話しかけておいて勝手に切り上げるのは感心しないなぁ?ほら、悩み事あるなら吐き出しちゃいな?なんでも聞けるとは思うぞぅ?」

 酔っぱらいが私の肩を掴み逃がしてくれない。そのまま力づくで席へと着席させるべく肩を引いた。眼は虚ろで、柔らかな笑みを向けつつも力なくテーブルへ身体を預けたまま追加の酒を注文する。


 「私だってねぇ……憧れがないわけじゃないんだよなぁ……。ま、各々役目があるからこそ、やらなきゃならないよねぇ……って。」

 うわ言のように呟く。その言葉を最後に顔を伏せては寝息を立て深い眠りに入ったようだ。……いびきがうるさい。しかしこれでこの場を去ることが出来そうだ。


 肩へと置かれた手をサッと払えばテーブルへひょいと投げ置いた。幸い酒場にはまだまだ人がいる。他の人たちがなんとかしてくれるだろうと思い私は酒代を店主へと渡した。先ほどの喧嘩は解決したのかと軽く質問した所、あまりにも聞き分けが悪かったので頬を平手で振り抜いたらしい。やはり力は万事を解決するようだ、からめ手よりすっきりする。


 そうして店主に見送られながらも私は自宅へ戻ることにした。月も浮かび夜道を照らす。明日から過酷な旅になるなとポツリと呟きつつ、自らを鼓舞するようにと小さく握りこぶしを作り天へと突き上げてみた。

 

 私が一番。この世界を照らす英雄になる、と一言誓いを立てて。


 そう言えば何かを忘れている気もするが、忘れる程度の事だ。何も問題はない。

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