あの占い師いわく
「おお……貴女はこの世界を救う者となるだろう……」
と、伝えられたのが私がまだ小さい頃……いくつだったかな。あれからひたすらに身体を鍛えて、木刀を振ってときて、確実にとは言えないけれど10年程は修行をしてきた。
占い師の言葉が本当にこの未来を見通して出た結果なのか、子どもを喜ばせるための嘘だったのか、今は知る術もないんだけれど。
その時の私は単純で、歳が近い友人を誘ってはおとぎ話の中の勇者ごっこにあけくれ。夏場には額に垂れる汗を、冬場には白い吐息を溢れさせながらと、一人の時でも必死に修行してきた。
そして15歳になった冬。
私の町では毎年この時期に診断士による適性検査が行われており、その結果を聞いて今後を自らで決めていくのだ。大きな簡易式のテントを広場の隅に立てられていれば、その中に順番に呼ばれ診断を待つ。
家業を継ぐもの、知識をつけに町を離れていくもの。自分の体力を活かして早速と生きて行くもの、様々だった。
私は勿論決まっている。なぜならこの世界を救う勇者になるのだから……!
先に診断された子たちがテントから出ていくなり自らの希望通りだった、むしろもっと素晴らしい道を診断された。と、それぞれの答えを家族や友人と意見を交換し賑わっていたようだが私の心はそんなことよりも。
この先どんな困難があるのだろうか。
この先どんな巡り合いがあるのだろうか。
と、未来のことばかり考えて心が落ち着かなかった気がする。
「次の方、えー……と。クラリスさん、ですか?」
そんな中、すでに順番が回ってきていたようで診断士の方から声がかかるとテントに入るより先に
「……ええ。私の適性はすでに知っているのだけれど、この先まずは何をすればいいのかってわかるかしら。」
そう、私の名前はクラリス。クラリス・マーシェ。
母は私が物心を付く前に亡くなっており、父一人で私をここまで育ててくれた。決して裕福ではなかったもののしっかりとした愛情を持って育ててくれたっけ。旅立ちの前にはちゃんとした挨拶をしないとな……
「そうですね、とりあえずはしっかりとした発声練習をしてからだと思います。無理に声を出していませんか?喉を痛めると治るまでに時間もかかりますよ。」
「え?」
「え?」
診断士が言っている意味が理解できず、少しの間があいた。ふと思いついたことは今日は雲がひとつない天気の良い日だ、洗濯日和だなと言ったくらいだ。