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勇者

ー彼らこそ魔王を倒す勇者だー

ホムンの中で何度も響き渡る声。

自慢げな彼を生み出した魔術師たちの声。

自分たちの製品に対する自画自賛の拍手。歓声。

だがホムンにはそれしかなかった。彼らエルフはその為に作られた人工生命体だ。

彼らが生み出される前、ある国の領主は人々が見たこともない生物を生み出し、この世界を恐怖に陥れた。

トカゲのような鳥のような頭、

熊、虎、ワニ、またあるものからはサイのような胴体

虫の、鳥の、またあるときは蝙蝠のような羽 

小さいものは家、多きものは砦のような大きさ

まるでこの世界の様々な生き物の特徴を併せ持ったその不死の生物はドラゴンと呼称されるようになった。

そしてドラゴンを従えた領主はいつしか魔王と呼ばれるようになった。

魔王の軍勢はドラゴンだけではなかった。だがそれは彼の国の騎士や農民ではない。

彼らは魔王が戦争を始める前に忽然と姿を消した。

その代わりに弓や剣 時には魔力を備えた攻撃をも弾く協力な皮膚を持つ屈強な戦士のような緑色の皮膚の生物 ゴブリン が彼の兵力を担っていた。

各国の王およびそれに仕える魔術師たちは彼らの血筋が生まれて初めての脅威を目の当たりにした。

まるで神話にある終末が訪れたかのようだった。

王たちはある決断をした。魔王の軍勢を滅ぼすために様々な国の王が自国の利益を超えて手を結んだのだ。彼らの世界が始まって以来のことであった。

魔王を倒すためありとあらゆる技術や情報の交流が図られた。ドラゴンやゴブリンの生態、それを倒す戦術、武装とりわけ目立つのは魔術師たちの活躍だった。

彼らはドラゴンやゴブリンが彼らの魔術の延長線上にあることを見抜いた。そしてそれまで閉鎖的であった自分たちの技術を普及させ始めた。

彼らは絡繰り職人のギルドの強力を得て 魔力を灯す鉱石 魔鉱石で動く鋼鉄の機械人形 マーキナス を生み出した。

そして医者と共にドラゴンやゴブリンを倒すことのできる人工生命体 エルフを生み出した。

マーキナスを駆る機鋼兵と呼ばれる騎士たち 

そして実戦投入されたエルフたちの活躍により魔王の軍勢は打ち砕かれ

世界に平和が訪れた。それが彼らの世界の歴史である。

ホムンは魔術師たちの研究施設で生み出された。そして彼は魔王の軍勢を倒すために戦った

彼と同じ目的で生み出された存在と そして改善点があれば彼の体に修繕が加えられた。

彼は文字通り魔王を倒す勇者として作られていった。彼は何も感じなかった訳ではない。

だが彼は魔王を倒す勇者となり英雄となる そのためだけに生まれた存在だと自覚し誇りや幸福まで覚えるよう育てられていた。

ホムンが戦場へ向かう少し前 魔王が討ち倒され 戦争は終結した。彼の目的は消え去った。

だが、魔王の軍勢が消えても問題は残っていた。ドラゴンだ。

この不死の生物は封印魔術により生命活動を半永久的に止めることはできても殺すことはできなかった。

そしてドラゴンは魔王が支配した領土に製造拠点があり 人の手が介さずに製造されていた。

魔王が討ち倒されたときに多くの拠点が封印され活動を停止したが中には封印が不完全なものや、まだ発見されていないものもあった。

ホムンは騎士の位と新たな目的を与えられた。

ドラゴンの製造拠点の調査と、残存しているドラゴンに対する封印であった。

彼は魔王との戦いの中製造されたエルフ用のマーキナス、クリケット

そして彼の相棒としてやってきたドリーと名乗るエルフと共に

主を失いさまよい歩く獣 ドラゴンを封印するために各地を渡り歩いていた。

ー彼らこそ魔王を倒す勇者だー

ホムンは彼の心に響く空しい励ましを聞きながら心の中で叫ぶ。

やつらは俺たちが邪魔なんだ 騎士の位を渡して、ドラゴンの再封印を押し付けた。

わざわざ旧式のマーキナスを宛がって。

連中は願ってるのさ。俺たちがドラゴンと共に消えてくれることを。


「お~い、ホムン」

能天気な声が聞こえてくる。相棒のドリーだ。

焚火の音、そして干しトマトを煮たような匂いがしてくる 微かにニンニクのにおいがする。

声のするほうを振り向くとドリーが青空の下で陽気に歌いながらお玉で鍋をかき混ぜている。

彼女の前ではこの話はやめておくか。

ホムンはドリーを見つめながら思った。










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