設定&用語説明
※ ネタバレを含むものもあります。
☆★☆女神と精霊、魔物☆★☆
女神ダーナ
ダナン大陸で信仰されている、三つの顔を持つ女神。世界の母。女神教の神官は三つの輪の印を持つ。
精霊、デヴァイアーナは女神の子どもとされる。精霊の騎士は通常、女神の御使いとして認識されている。
精霊
人を依り代として顕現する。この世界と生き物に対し、好意的。しかし彼らなりの倫理や感性があるため、時に彼らとの関わりは悲劇となる。低位のものを魅妖、高位のものを貴妖と呼ぶ。さらに上に輝妃、霊王と呼ばれる存在がいる。雷、氷、炎、水、風、土、花の七つの属性がある。また精霊の中で名に称号を持つ者(位持ち)は能力が高く、その中でも名に色彩を持つ者(色付き)は抜きん出て高い。
貴妖
高位の精霊。
魅妖
低位の精霊。
フェアリ
民間における魅妖。
フェイ
民間における精霊の総称。狭義では貴妖をさす。
属性
精霊の七つの属性。それぞれ、騎士に付与される能力が違ってくる。また属性によっては、特定の資質を持つ人間を選びやすい。
雷/攻撃力は七属性中最高。人間に興味を持たない事が多く、契約は稀。
氷/雷に次いで攻撃力に優れる。自己に厳しく、孤独に強い性質の人間を選ぶ傾向にある。契約は雷と並んで稀。
炎/雷に次いで攻撃力に優れる。豪放磊落、直情血行な人物を選ぶ傾向にある。どちらかと言えば人間に関わりたがる所があり、契約はしやすい。
風/空間移動の能力に優れる。特異な能力が発現しやすい。エキセントリックな人物を選ぶ傾向にある。契約はしやすい。
水/回復能力に優れる。情緒的で容姿の美しい人間を選ぶ傾向にある。契約は比較的しやすい。
土/物質的な攻撃と防御能力に優れる。実直な人物を選ぶ傾向にある。契約はしやすい。
花/極めて契約しやすいが、特筆すべき能力は持たない。契約者以外にも、気に入れば力を貸す。花の精霊の好意を得た者は、治癒の能力を持つようになる(花の乙女)。
刻印
精霊、あるいは魔物が己の所有を示すものとして刻む印。精霊の騎士の場合は模様として体の一部に浮き上がり、あるいは体の色彩の一部が変わる。魔物の場合、大地や空間に刻まれる事が多く、目には見えない。これは精霊の騎士には、不快な臭気として感じられる事が多い。
匂い付け
魔物の刻印。精霊の騎士が使う隠語。魔物の気配を臭気として感じる者が多い事と、動物が縄張りを示すのに行う「匂い付け」行為にかけてある。
魔物
アスラ。生物及び自然物を依り代として顕現する。世界にも生き物にも容赦なく、己が意を優先し、奪うことを第一義とする。低位に怪魔や瘴鬼、中位に剛魔や鬼人、高位に将魔がいる。その上に冥姫、王魔が存在する。
魔物憑き
精霊の騎士とは真逆の存在。魔物と契約し、その身を依り代として明け渡した者。人間としての意思が残っている事はほとんどない。
☆★☆精霊の騎士☆★☆
精霊の騎士
精霊と契約し、命を重ねた戦士。剣の院に属する。
長寿と頑健な肉体、超人的な能力を持ち、魔物の掃討を行う。契約は男性のみに許されている。長く生きる騎士は人間性が磨耗し、やがて狂うのだが、この事実は公にはされていない。
カヴァリエーレ・デラ・デヴァイアーナ
精霊の騎士の正式名称。主に騎士本人や、神官が使用する。常には単純に、『ラ・カヴァリエーロ』と呼ばれる事が多い。また、民間では言い伝えと相まって、『フェイ・カヴァリエ』と呼ばれる事が多い。
作中、神官のルカスがどちらの名前も使っていたのは、村人に良くわかるようにとの配慮と、騎士本人への敬意を示そうとしていたため。
フェイ・カヴァリエ
精霊の騎士の民間名称。
ラ・カヴァリエーロ
カヴァリエーロは通常の騎士(男性)。『ラ』がつくと精霊の騎士をさす。
精霊憑き
精霊の騎士が自らをさす名称。多分に自嘲的な意味合いを含む。
狂気
精霊の騎士の宿命。長く生きれば生きるほど、陥りやすくなる。狂気に取りつかれて暴走し、正気に戻る事ができなくなった者は、「成り損ない」と同じ状態になる。騎士たちはこの状態を、「墜ちた」と呼ぶ。こうなった仲間を倒す事も、精霊の騎士の義務。女性は男性より「墜ち」やすいとされ、それが女性に精霊との契約を禁ずる根拠となった。人間としての感性をなくした者は、急速に狂気に蝕まれる。なお、「成り損ない」の場合も「墜ちた」場合も、外聞を憚る為、対外的には戦死扱いになる。
契約(精霊との)
精霊と命を重ね、その身を依り代とする事。成功すれば長寿と精霊の能力を身に備えるが、失敗すれば死亡するか、狂う。失敗して狂った者は「成り損ない」と呼ばれ、速やかに命を絶たれる。通常、騎士は弱い精霊(魅妖)と最初に契約し、次に強い精霊(貴妖)と契約する。慣れのようなものができるので、生き延びやすくなるらしい。三体の精霊との契約が普通なので、二体の魅妖と一体の貴妖の組み合わせが理想的とされる。貴妖が二体の場合、よほどの幸運が味方するのでなければ、成り損なう。
外れ
民間で精霊と契約した、想定外の契約者。契約を生き延びてもほどなくして狂う事が多く、騎士にも神官にも不吉な者と見なされている。
成り損ない
契約に失敗し、狂った精霊の騎士。侮辱の言葉としても使われる。「外れ」の契約者を軽んじる時にも使われる。一応契約は完了している為、異能は発現している。力を使いやすいよう肉体を変容させ、最終的に人間とはかけ離れた姿になる事が多い。
暴走
精霊の騎士が一時的に狂気にかられ、能力が制御不能になる事。新しい契約を交わした際に起こりやすい。感情の赴くままに力をふるい続ける為、正気に戻らねば肉体が崩壊する。
☆★☆大陸と国々☆★☆
言語の違い
ダナン大陸には幾つかの国があるが、宗教上の理由から、神官、貴族階級で使用される言語はほぼ統一されている(地域によって多少の齟齬は生じる)。庶民の使用する言語は簡略化されており、国ごとに違ってきている。
聖王国ミスルティア
ダーナ女神を奉ずる女神教の総本山、ダーナ大聖堂がある。精霊の騎士の属する剣の院、花の乙女、薬師、詩人の属する琴の院、学者、医師の属する杖の院がある。魔物と最初に戦った国でもあり、国王は聖王とも呼ばれる。
十二貴族
ミスルティア建国を担った十二の家系。精霊の騎士はこの家から始まったとされる。いずれも女性上位の一族であり、当主は女性と決められている。各々が侯爵位を持ち、領土を保有している。
氷炎樹、闇百合、青薔薇の三聖花家、朱雀、白獅子、黄虎、緑鷹、藍竜の五聖獣家、紅刃、白羽、黒翼、青牙の四聖刃家に分けられる。
この内、闇百合、黄虎、藍竜の三家は本家が滅び、断絶している。
院
精霊や、精霊の騎士に関係する、三つの院。剣の院、杖の院、琴の院。
琴の院
癒しのわざを学ぶ者及び詩人の育成を行う機関。運営は詩人の長と女神官に任されている。花の乙女はここに所属する事が多い。正式に認められた詩人、薬師はここ出身。女性が医師になる事は許されていない為、杖の院に行く女性は少ない。
杖の院
歴史書の編纂、写本、医術の研究などを行う機関。神官の育成も行う。医師は琴の院で学んだ後、杖の院で学ぶ事になっているが、形骸化しており、まともに琴の院に出向く者は少ない。医師が薬師を低いものと見なし、軽蔑している事が要因。
剣の院
精霊の騎士の育成及び管理を行う機関。ダーナ女神教の直属組織。運営は神官に任されている。
巡回神官
辺境の地には村々に教会を建てる事は難しく、聖職者の数も足りていない。巡回神官は村々を回り、女神の教えを伝える聖職者。彼らはまた、精霊の騎士が任務を果たしやすくなるよう、村人に物語りを聞かせる任を持つ。神官による物語りは、精霊の騎士の存在がまだあまり知られていなかった頃、騎士の超人的な能力に恐れを抱いた村人が魔物とひとくくりにして迫害した歴史がある為に始められた。
花の乙女
花の精霊を友とし、癒しのわざを行う女性。契約を結んでいるわけではない為、寿命は人間と同じ。十二貴族の女性が多かった経緯から、「ドミナ」(身分ある女性の敬称)を贈られた。少数ながら男性も存在し、その場合はマエストロと呼ばれる。
ダァム・フェアリ
花の乙女の民間名称。
水探し(シーカー)
辺境の地で、地下の水脈を探す仕事をしている一族。結束が強く、幌馬車で移動し、同族以外にはあまり打ち解けない。何代か前の大神官により、異端の認定を受けている。村人は軽蔑しつつも恐れている。