7.影と鏡 3
子どもを見つけるのは、そう難しい事ではなかった。小さな村に、隠れる所はほとんどない。
ダートは村長の家の家畜小屋の隅で膝を抱え、小さくなっていた。ルカスが呼びかけると少年は、のろのろと顔を上げた。
「こんな所で、どうしたのだね」
少年の顔が涙でぐしゃぐしゃになっているのに気づいて、ルカスはできるだけ優しい声を出した。ダートは鼻をすすり、聞き取りにくい声で何か言った。
「何だね? 良く聞こえない。そちらへ行っても良いかな」
少年がうなずいたので、ルカスは近づいた。ダートは青ざめ、怯えていた。目からは涙がとめどなく流れている。
「俺……俺、ひどいことしちまっ……」
嗚咽まじりに少年は言った。頭が冷えると今さらながらに、大変なことを仕出かしたと気づいたらしい。
「精霊の騎士どののマントの事かね。破いたのはお前なのかい」
ルカスが言うと、少年はびくりとなった。逃げる場所を探すかのように目をきょろきょろさせ、それから諦めたようにうなずいた。
「なんでまた、そんな事をしたのかね」
ルカスは少年の様子を見て、穏やかな口調を心掛けた。ダートはしゃくりあげていたが、首を振って答えた。
「わか……、ません……、な、なんか、……かっとなって……」
「何があったか、順を追って話してもらえるかな」
そううながすと、少年はしばらく沈黙してから、ぽつりぽつりと話し出した。精霊の騎士にマントを貸してもらったこと。水探しの女と話したこと。精霊の騎士があろうことか、水探しの女に頭を下げたこと。
「ゆ、許せなくて、俺。なんでこんなことするんだって……腹が立って。それで。マントをめちゃくちゃにしてやろうって……なんでそんな風に思ったのか、わからない。でもその時は、いい考えに思えたんだ」
ルカスは小さく息をついた。水探しの女が言っていた事は、ほぼ的中していた。この子の中では怒りと悲しみがずっと渦巻いていた。そうしてこの子は、それを吐き出す術を知らなかったのだ。それが精霊の騎士と出会った事で、また水探しの女と出会った事で、爆発した。
この子はずっと、深く傷つき、苦しんでいたのだ。
(それに気づいてやれず、立ち直ったと頭から信じていたとは……)
ルカスは泣いている少年を見つめていたが、彼の横に並んで座った。
「すまないね、ダート」
そっと言う。ダートは顔を上げてルカスを見た。
「なんで、ルカスさまが、あやまるん……」
鼻をすすりながら少年が言う。ルカスは苦笑した。
「お前が苦しんでいたのに、気づいてやれなかったからさ。立ち直ったとばかり思っていた。そんなはずはないのに。なんて事だろうな。わたしは何も見えていなかったんだ」
神官の言っている事は良くわからなかったが、彼が手を伸ばしてきてダートの頭を抱き寄せてくれた時、ダートは抵抗しなかった。少年を抱き寄せると、ルカスはもう一度繰り返した。
「すまなかった。つらかったな、ダート」
それを聞くと、涙がこみ上げてきた。胸の奥から何かが溢れてきて、自分が壊れてしまうのではないかと思った。気がつくとダートはうなり声のようなものを上げながら、ルカスにしがみついて泣いていた。そのまま彼は泣き続けた。泣いて泣いて、意識を失うまで。
気がつくと、暗かった。ダートははれぼったいまぶたを押し上げるようにして、目を開けた。たくさん泣いたので、頭が重い。
周囲からいびきが聞こえる。一瞬自分がどこにいるのかわからずに混乱したが、すぐに気がついた。村長の家だ。
(あれ? さっきは朝だったのに)
ちくちくする藁の寝台の上に起き上がり、ダートは重い頭を抑えた。ルカス神官の前で泣いたのを覚えている。あの時は朝だった。なのに今は、どうしてこんなに暗い?
(眠っちまったのか)
赤ん坊みたいだと思い、恥ずかしくなる。けれどすっきりしているのも確かだった。ずっと重かった胸の奥が、少し軽くなった。
手さぐりで寝台を出ると、ダートは扉に向かった。外が見たかった。物にけつまずかないよう気をつけて歩く。暗くて何も見えなくても、家の中の様子は大体覚えていた。扉に手をかける。そっと開けると冷たい外気が入ってきた。
空には星が瞬いている。
(やっぱり夜だ……)
扉を後ろ手に閉めて、ダートは空を見上げた。寒い。そう思い、ふと、今まで夜の寒さに気がつかなかったと思った。
「そうか。夜は寒いんだ」
当たり前の事なのにそれが不思議で、ダートはつぶやいた。家族が生きていた時には、当然知っていた。けれどあの夜以来、ダートは暑さや寒さをどこか遠くにある事のように感じていた。感じないわけではないが、どこか遠かったのだ。それが今、ごく普通に『寒い』と感じている。頬が冷たい。指先も。
どうして?
その時、大気が震えた。ダートはぎくりとなった。何か怖いものが夜を走った。そんな感じがした。きりきりと、緊張が大気を震わせている。けれどそれは、現れたのと同じように、唐突に消えた。
「……なに。今の」
つぶやくと、光が近づいてきた。「ダート?」と呼ぶ声がした。ルカス神官の声だ。
「目が覚めたのかね。こんな夜更けに外に出るものではないよ」
神官は、手燭を持っていた。村長の家の納屋で、夜通しの祈りをしていたらしい。
「ルカス師。今、何か……」
「精霊の騎士さまが、村を守って下さっているのだよ」
ルカスは言った。
「昨夜もこんな気配がした。すぐに消えたが。クリスさまは何もおっしゃらなかったが、魔物はまだ村を狙っているのだろう。あの方は夜通し、それを防いで下さっている」
「どうして誰も気づかないんですか。あんな怖い感じがしたのに」
「さあ。たまたま起きている者にしか、わからないのかもしれないね。それに、すぐに消えてしまうから……」
ルカスはダートを手招くと、納屋に向かった。ダートはついていった。
「やれやれ。若いつもりでいるのに、寒さがこたえるようになってきたよ」
ルカスはそう言うと、納屋に入った。粗末な藁布団が一つ。パンとチーズ、水の入った碗が置いてあり、それを見るなりダートの腹が鳴った。
「若い証拠だね。食べて良いよ。お前は結局、昨日は一日何も食べなかったからね」
ルカスは笑うとパンを勧めた。ダートは床にじかに座ると、ぼそぼそと女神に感謝する言葉をとなえ、それからパンにかぶりついた。一口食べてひどく腹が減っている事に気づいてからは、夢中になって食べた。
全部食べおわってから彼は、これはルカスの夜食だったのではないかと気がついた。神官が時折、夜通しの祈りをする事は知っている。そんな時、アイラは村長の妻として、ちょっとした食事を用意しておく。
「すみません。俺、全部食べちまって……」
「良いよ。わたしが食べろと言ったのだから」
ルカスは笑って言った。
「歳を取るとあまり食べなくとも良くなってくるのさ。それに子どもが腹を減らしているのを見るのはつらい。少しは落ちついたかね」
「はい。あのう……すみません」
ダートは小さくなった。
「俺、……眠っちまったんですね」
「起こすのが忍びなくてね。そのまま家に運んだ。そっとしておくように言ったから、良く眠れただろう」
ダートはますます小さくなった。
「そう恐縮しなくても良いよ。お前がわたしに謝る事はないんだ。むしろ、わたしの方こそ謝らなければならないのに」
「ルカス師が? どうして?」
ダートが顔を上げるとルカスは小さく息をついた。
「精霊の騎士さまと、水探しのご婦人にしかられたよ。お前が心に傷を負ったままなのに、それに気づかなかったとね」
ダートはぴくりと肩を揺らした。水探しのご婦人、という言葉に何かもやもやしたものを感じる。けれども激しい怒りや憎しみはもう、沸いてこなかった。不思議だった。あの時は、あんなに腹が立ったのに。
「ダート。どちらも二人とも、お前の事を案じていたよ」
ルカスが言った。
「目の前で家族を殺された人間は、泣いたりわめいたりするのが普通だと言われた。だがお前はそれをしていないように見えるとね。その分、深い所が傷ついているのだろうと。その通りだったのだろう? お前は泣く事もできなかったんだね。今まで」
「ルカス師……」
「すまなかったね。気がついてやれなくて」
ダートは首を振った。彼が詫びる事などなかった。
「謝る事ないです。だって俺にもわけわかんなくて……泣いてなかったんですね、俺」
今気がついた。そんな顔でダートは言った。
「涙、出てなかったんだ。俺。ひどいな。おれ、ひどいやつだったんだ」
「そうじゃない。お前は泣きたかったんだ。ずっと泣きたかったんだよ。ただどうしたら良いのか、わからなくなっていただけだ。心の奥ではずっと泣いていたんだよ」
ルカスは言った。また泣き出しそうになったダートを抱き寄せる。
「精霊の騎士さまに謝るね?」
「はい。俺……ひどい事しちまった」
「大丈夫だよ。わかっておられたから。謝ったら許して下さるよ。……それから、水探しのご婦人にも謝るんだよ」
最後の一言は苦かったが、ルカスは言った。
「迷惑をかけたんだろう?」
彼女は何も言わなかったが、この子どもが彼女に何か、悪態をついただろう事は見当がついた。ダートは顔を伏せた。
「謝らなきゃ、いけませんか」
「自分のした事を思い返してごらん。それから自分の心を見てごらん。お前のした事は正しい事かい? 女神さまの前で胸を張って、自分は正しいと言えるかい」
ルカスが言うと、ダートはびくりとなった。
「でも……」
「何もしなかったのかい。水探しのご婦人に対して。何も言わなかったのかな」
「……いいえ」
「何をしたんだい」
ダートはしばらく黙ってから、ぼそぼそと「腹が立ったので……悪口を」と言った。
「何と?」
少年は身を縮めるようにした。明らかに気が進まないようだ。それでもルカスがじっと見つめると、不承不承という風に答えた。
「汚らしい、鼠喰い、と」
「……それだけかい」
「魔物と……畜生の間に生まれた、と。女神も顔を背ける、呪われた者、だと。あと……犬と寝る、と……」
顔を背けると、言いたくなさそうにダートは言った。ルカスは目を閉じ、嘆息したくなる衝動と戦った。そこまで言われて良く、サラは我慢したものだ。その上で、ダートは傷ついているからしかるなと自分に言った。
かなわない。
あの女性には、かなわない……。
目を開けるとダートは、こちらをうかがうような顔をしていた。ルカスは言った。
「お前が言ったのは、正しい事かい」
ダートは顔を歪めた。
「あいつは、鼠喰いです!」
「わたしが尋ねているのはそういう事じゃないよ。ダート。あのご婦人は水探しだ。けれど村に悪意をもって何かしたわけではない。罪もおかしていない。むしろ、彼女は村に良い事をもたらしてくれた。精霊の騎士を連れてきてくれたのだからね。お前に対しても、何かしたわけではないだろう。
それとも何かしたのかね。あのご婦人は、お前を武器でもって傷つけ、お前の持ち物を盗もうとしたのかね。それともお前をさらって、どこかに売り飛ばそうとでもしたのかね」
違うだろうという顔をして、ルカスは言った。ダートは何も答えない。
「その上で尋ねるよ。お前がそのご婦人に言った言葉は、女神さまの前でも胸を張って、自分は正しいと言える事なのか」
顔を歪め、ダートは「だってあいつ、鼠喰いなのに」とつぶやいた。ルカスは厳しい顔になった。
「たとえ『鼠喰い』であっても、悪い事をしたのなら、相手に謝るのが人間のしなければならない事だよ。相手が誰でも同じだ。ダート。どの命も女神さまがこの世に送られたものだ。どの命もだ。わたしが尋ねているのはただこれだけだ。お前のした事は正しい事だったのか。それともそうではなかったのか」
ダートは逡巡し、唇を噛みしめた。長い間黙り込み、何か考えていた。ルカスは邪魔をしなかった。ただ少年の答を待った。
やがてついに少年は、小さな声で「正しくありません」と答えた。
「では、どうすれば良いのかね」
ルカスが問うと、ダートはうつむいた。長い沈黙の後、少年は嫌そうに「謝ります」とつぶやいた。
「精霊の騎士さまにかね?」
「騎士さまにも、だけど。鼠喰いの女、にも……」
「水探しのご婦人と言いなさい」
ルカスが言うと、ダートは言い直した。
「水探しのご婦人、に」
「そうだ。女性には礼儀正しくあらねばな」
微笑んでルカスは言った。
「では明日の朝、二人で謝りに行こう。わたしも一緒について行ってあげるから」
顔を上げたダートにルカスは言った。ダートはほっとしたような、困ったような顔をした。
あくる朝。陽が昇るとすぐに、二人は村の外の幌馬車の所へ行った。白い鎧を身につけた精霊の騎士は、穏やかな様子でサラと語らっていた。ダートは彼らの前に出ると、口ごもって下を向いた。はげますようにルカスが肩に手を置いてくれたので、やっと小さな声で言う。
「あの……ごめんなさい」
「何に対してのごめんなさいかね?」
サラが言う。ダートは小さくなって答えた。
「マント、破ったのは俺です。それから、水探しのご婦人、には、ひどい事を言いました。ごめんなさい」
頭を下げると、サラが微笑んだ。
「良いよ。前よりはましな顔になったね。そうだろ、クリス?」
精霊の騎士が「そうですね」と言い、ダートの前に立った。
「マントは大丈夫。繕えば直ります。でももう、自分の怒りを他の人にぶつけてはいけませんよ。
怒ってはいけないとは言いません。人間が持つ感情は、女神さまからの贈り物。怒りや悲しみもまた、そうなのですから。
けれど関係のない人にぶつけて、うさを晴らす真似だけはしないで下さい。それは相手を傷つけるだけでなく、自分自身をも貶める行為ですから」
静かに言われる言葉にダートはうつむいた。恥ずかしさが全身を火照らせる。精霊の騎士にはどうしてわかったのだろう。自分が八つ当たりをした事が。
「あなたの怒りと悲しみは、わたしが引き受けます」
クリスの言葉にダートは顔を上げた。
「だからあなたは、……あなたらしく生きて下さい。家族の分まで」
淡々と語られる言葉。けれどその内容はひどく重いように思われた。ダートは精霊の騎士を見つめた。細く、脆く見えるのに、魔物と戦う戦士でもある。冷淡に見えて、温かい。彼の表情は変わらない。冷たいと思えるほどに。けれどその目に、気づかわしげな光がある。言葉の裏に、優しさが見える。
ダートはその時、初めて彼を見たような気がした。彼が村にやって来てから、何度も顔を合わせた。言葉を交わしもした。それなのに。彼が全く違った存在に見える。
綺麗だ。唐突にダートは思った。この人は、すごく綺麗だ。
顔が赤くなった。心臓が早鐘を打ち始める。
「あの……はい。ええと……すみません。あの俺、畑仕事の手伝いがあるから!」
うろうろとして言ってから、ダートは赤くなった顔を手で覆った。ぺこりと頭を下げてから、その場を駆け出す。驚いたようにルカスが呼ぶ声が聞こえたが、立ち止まらなかった。そのまま走って、村外れまで行く。建物の陰に回り込んで、息をついた。まだ胸がどきどきしている。
(どうしちゃったんだ、俺)
真っ赤になった顔を抑えて、ダートはその場にしゃがみ込んだ。
(何なんだよ、これ。おかしいよ)
納まらない動悸に困惑していると、背後からルカスがやって来た。ダートは慌てて立ち上がった。
「大丈夫かね、ダート」
「あ、いえ、平気です」
まだ顔が赤かったがそう言うと、ルカスはちらと微笑んだ。
「それなら良いが……慌てたり、顔を赤くしているお前を久しぶりに見たよ」
「赤くなんかなってません」
口をへの字に曲げて言うと、「そうか」と言ってルカスは笑った。
「許してもらえて良かったな」
「はい」
「クリスさまは精霊の騎士だ。お前の家族の仇を取って下さる……怒りと悲しみを引き受けるとおっしゃったのは、その意味だろう。あの方はきっと、魔物を倒してくれるよ」
「はい」
そうだ。あの人がきっと、魔物を倒してくれる。ダートはそう思った。それと同時に不安になった。血を流していた彼を思い出す。
『精霊の騎士さまでも、怪我ぐらいはするさ』
サラの言葉を思い出した。そこではっとなる。怪我をしていたのではないのか、あの時。マントを渡してくれたあの時。夜の間に魔物と戦って、どこか……。
『誰だって、知ってる相手が危ない時には心配するものじゃないかい』
「ルカス師」
「何だね」
「精霊の騎士さまも……怪我をしたり、死んだりするんですか」
ルカスは真顔になった。しばらく何も言わずにダートを見つめていたが、やがて用心深い口調で言った。
「魔物と戦う以上は、そういう事もあるだろう」
「じゃあ、あいつ……クリスさま、は。大丈夫、なんでしょうか」
「大丈夫だ」
ルカスは安心させるように言った。
「話をしていてわかったが、あの方は思慮深い。無理はなさらないよ。それにもうお一方がこちらに向かっているからね。精霊の騎士が二人も揃えば、魔物はすぐに倒されるさ」
大丈夫だろうかという懸念は消えなかったが、ダートはうなずいた。死んで欲しくないと彼は思った。あの騎士に、死んで欲しくない……。
「何か俺にできる事、ないでしょうか」
少年の言葉にルカスは微笑んだ。
「では今夜から、わたしと共に祈ろう。あの方が無事であるよう、正しく力を使えるよう。魔物と戦うあの方の、わずかなりとも助けになるように。祈りは力になるのだよ、ダート。その時には無力に見えてもね。目に見えなくとも、意味がないように思えても。継続する祈りは力になる」
「俺なんかの祈りが、何かの役に立つんですか……?」
「われらは小さく、力なく、砂粒のような存在だ。風に吹かれては転がり、吹き飛ばされ、来し方も行く方も知らぬ。それでも誰かを喜ばせようとする事はできる。お前が祈れば、クリスさまは喜ばれるよ。それはきっとあの方を、支える力になるだろう」
ルカスが離れ、ダートは一人残った。ぼんやりと佇み、村を、そこに暮らす人々を眺める。
朝餉の支度をする煙が、家々から上がっていた。家畜の鳴く声。にぎやかなおしゃべりが漏れ聞こえてくる。どこかの家の戸がばたんと開き、水を汲みに行く子どもの姿が見えた。埃っぽい風が大地を吹き渡り、太陽が赤みを残す東の空に輝く。
久しぶりに見る風景の気がした。
こんな風だったっけ。そう彼は思った。この村、……向こうに見える荒れ地や川。畑やそこにある作物。人の声。動物の声。吹いてくる風。空。土の色。
こんな、綺麗な色をしてたっけ……。
なぜか、涙が出た。胸の奥が痛い。拳でぐいと涙をぬぐうと、ダートは村長の家の手伝いをしに戻った。