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序 始まりの歌
そのころ世界には妖魔、魍魎のたぐいがあふれ、人々は恐怖と共に暮らしていた。しかしある時、一人の男が現れた。光輝の騎士アルゲンタス。ミスルティア初代の王である。彼は精霊の力をその身に宿し、魔のものども と戦ってこれを打ち払った。そうして己に近しい十二の騎士に、魔を退ける役目を与えた。彼らは王国の礎となり、魔を退け、民を安んじた。
《ミスルティア史記》
聖なる王国ミスルティアには、十二の高貴なる家あり。王を助け、魔を退ける役割を担う。
氷炎樹、闇百合、青薔薇の三家をもって三聖花、
朱雀、白獅子、黄虎、緑鷹、藍竜の五家をもって五聖獣、
紅刃、白羽、黒翼、青牙の四家をもって四聖刃と称する。
いずれも精霊に愛されし血筋なり。母から娘へと家は継がれ、その兄弟は精霊の騎士となり、魔と戦うものとならん。
《詩人の歌う十二貴族の歌》