1話 都市部へ
「ミラ様、お気をつけて」
メイドたちに送り出されて、私は馬車に乗った。ここからファーリス様との待ち合わせ場所まで1日。だからホテルを予約して前日に着くように手配してもらった。
都市部のホテルでしっかりと身支度をして、最高の渡してファーリス様のと初デートをするのよ。
私は胸を躍らせながら馬車の中で桃色の便箋を開いた。
=== ===
拝啓 愛しのミラへ
返事をありがとう。
それでは僕がとっておきのおもてなしを君にするよ。都市部で有名なリストランテかいくつかあってね。
君は以前、ブイヤベースが好きだと言っていたね。
とても美味しい店を知っているんだ。
来月、王宮での舞踏会があるだろう? 君ももちろん参加してくれるよね?
その前哨戦とはいかないまでも君の美しさに慣れておかないと。
そうだ、デイジーにいくつか婦人用のブティックのおすすめを聞いておくよ
彼女はおしゃれさんでね。きっと参考になるはずだ。
ファーリス
=== ===
私は何度もファーリス様からのお手紙を読み返しているうち眠りについてしまっていた。付き添いのディーナに起こされるころにはもう都市部にたどり着いていた。
「ミラお嬢様、ホテルまでもうすぐですよ」
「まぁ、私ったら」
「寝言でもファーリス様のことを」
「恥ずかしいわ」
ポッポと熱くなる頬を押さえて私はさっきまで見ていた夢を思い返す。ファーリス様の燃えるような赤毛と優しいグリーンの瞳。最後にあったのは13の時。あれから7年。彼はどんな素敵な男性になったのだろう?
きっとお優しいままで、精悍になられているはずだわ。
「お嬢様?」
「ごめんなさい、さぁ。行きましょう」
馬車から降りると、田舎とは全く違う光景が広がっていた。
まず、地面は土でも砂利でもなく美しい石畳だったし、街路樹は美しく整えられている。道ゆく人々は美しいドレスや礼服を身に纏っていて泥なんか被っていない。
子供たちでさえ小綺麗で礼儀正しい。
住む世界が違うというのはこのことだと改めて思う。
「あちらが中央裁判所ですね」
ディーナが指差した先には一際大きい石造りの建物があった。建物の前には天秤を掲げる女性の像が建てられている。
あの場所で、ファーリス様は日々お勤めなさっているんだわ。人々の罪を裁き、真実を見極める公正な場所。私はなんてすごい方と婚約しているんだろう。
——あぁ、早く会いたいわ
「さっ、お嬢様。忙しくなりますよ。これからハーブエステに美容サロン、それから香水合わせに……」
ファーリス様に会うためだもの。
私、なんでも頑張れるわ!
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