モノローグ
……何だか辛気臭い噺が続いちゃってますからね、此処らで一つ、パァッと明るく面白い噺をしたいもんですなぁ。
暗い噺が苦手なんです。怖い噺とか、悲しい噺を聴くと胸が締め付けられてもう耐えられない。血を見るのも嫌だし、人が殺されるなんてもっての外! 繊細で徳の高い人間なものですから。本当ですよ。毎朝目が覚めて、朝日がちゃんと昇ってるだけでもう、生きてて良かった〜!って感極まってポロポロ涙を流してます。ええ。堂々と嘘を付くのが私の商売です。
とはいえやっぱり、平和が一番じゃないですか。平和じゃない世の中にこそ、心温まる、希望に満ち溢れた噺をみんな待ち望んでいると思うんですよ。だってたとえば、実際に殺人事件に巻き込まれてる最中にですよ? いくら私がおどろおどろしくミステリーを語ったって、そんなの現実の方がよっぽど真に迫るってもんじゃないですか。実際に病気で苦しんでる人に、「病気に罹ったら怖いですよ、こんな酷い目に遭いますよ」なんて言っても、「知ってるよ、ばか」で終わりですよ。
暗い世の中には明るい噺が求められるものなんです、きっと。これが明るい世の中だと、やっぱりみんな刺激が欲しいから、血みどろの噺も受けるんですがね。ん? 待てよ、じゃあホラーやミステリーが流行っているご時世は、平和の裏返しということなのかな?
そうだとしたら、明るい噺ばかり流行るのも、何だか考え物ですなぁ。最近はどっちが流行ってるんでしょう? 分かりませんけど……まぁ、明るい噺にしときましょうか? ねえ?
とは言えいくら明るい噺、面白い噺をしろ……ったって、そう簡単に言ってくれるなって話ですよ。「今から面白い話をしま〜す」なんて言っちゃったら、もうそれだけでハードルが上がっちゃうんですから……。




