エピローグ
江戸時代。
天下泰平の世には、今ではとても考えられないような、珍らし〜い商売が数多くありまして……。
例えば、『節季候』。
『節季候』は江戸の年末の風物詩でしてね。
二、三人で街中を「せきぞろ、せきぞろ」と囃し立て、大騒ぎする。芸もやったが、何より家人は煩くてしょうがないから、お金を払って余所に行ってもらう。誰かの邪魔が商売になるんですからねぇ。とはいえ、『節季候』が来れば人々は「あぁ、今年もやっと年末だな」と、
節季候の来れば風雅も師走哉
と、こんな句も残されております。現代風に言やぁ、「オオカミ少年」みたいなものでしょうか? 「オオカミが来たぞ」なんつってね。
他にも、『放し亀売り』。
江戸時代には
『放生会』
と言うのがありまして、これは要するに、捕まえた動物をあえて逃す。無駄な殺生はよろしくないと、戒めを込めた行事です。江戸時代は空前のペットブームだったんですから。だからと言って全員が全員、動物を飼っていた訳じゃないですよ。
それで動物を逃すために、業者が亀や鳥、鰻なんかを境内で安く売っていたんですね。
逃すために捕まえる。いやはや、阿漕な商売もあったもんですなあ。
そしてそして、何と言っても『考え物』。
今回はそんな『考え物』のおはなしでございました。
もしかしたらみなさんの元にも、そんな可笑しな奴らがふらっと現れる、かもしれませんね。
それでは、また何処かでお逢いしましょう。今度こそ、お後がよろしいようで……。
《幕》