最終話3【龍治】
最終話3【龍治】
――俺は今最高に幸せだと思う。
この状態がずっと続けばいいと願う――
高校生となった俺と直は、同じ高校に入学した。
中学生の時の告白を、直によって引き出された淡くも恥ずかしくもある想い出。
そんな気恥ずかしい想い出を、生涯忘れることの無い想いを心に留めて、
「なぁ。明日どっか遊びに行かねぇか?」
高校二年生の夏休み。
とある目的でバイトしてお金を貯めている俺だが、たまには直と遊びたいのも事実。
中学の頃の延長で直の自室でゲームをするのに飽きた俺がそう聞くと、
「そうだね!」
パッと明るくなる直の顔。
「ねぇ。せっかくだからデートみたいに待ち合わせしよう?」
にこにこと楽しそうに告げる直。
――俺が、あの時遊びに誘わなければ。
直はまだ俺の隣で笑っていてくれただろうか?
横断歩道の向こうから腕を振りつつ俺のほうへ向かってくる直。
その右正面から迫り来る大型のトラック。
「直っ!」
俺が気づいて呼び止めた時にはもう遅かった。
俺はまだあの光景を覚えている。
――いや。忘れられる訳がなかった。
直の身体がトラックにぶつかり、少し宙に浮いてアスファルトに投げ飛ばされる。衝撃で二回転ほど直の身体は転がった。それはスローモーションのように鮮明に俺の脳裏に焼きついている。
急ブレーキの音。誰かの悲鳴。ざわつく人々。
「直ーーっ!!」
反射的に俺は直に駆け寄った。
直の頭からは赤黒い液体が流れ出ていた。
「直っ、直っ! 直往!! 直っ!!」
俺は直の身体を揺さぶる。誰かの手がそれを止める。振り切って再び縋ろうとするも何か怒鳴られ再び止められる。
救急車の音が聞こえ俺はそこで意識を失った――




