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最終話2【直往】

最終話2【直往】



 僕は一瞬、りゅうちゃんがなにを言ったのか分からなかった。



「……ご、ごめん、りゅうちゃん。ちょっと、離して」


 突然すぎて僕はすごくびっくりしたけれど、それ以上にりゅうちゃんがさっき言ったことが気になって、慌てて身じろぎをするとりゅうちゃんは、『ごめん……』と呟いて僕の身を解放してくれた。



(と言うか。なんで僕りゅうちゃんに抱かれてんの? なんかすごく恥ずかしいんだけど)



 僕の心臓はすごくドキドキしていて、この音がりゅうちゃんに聞こえてしまうんじゃないかって言うくらいうるさかった。それを聞かれないように、


「ね、ねぇりゅうちゃん?」


 少し掠れたような声でりゅうちゃんを見れば、


「ーーなに?」


 りゅうちゃんの顔がほんのり赤くなってるのは気のせいかな。



「さっき、なんて言ったの?」


 僕の聞き間違いじゃなければ、『俺ーー直のことが好きだ』そう言った気がする。


「…………」


 りゅうちゃんは少しだけ間を置いて、僕を真剣な表情で見つめてきて、


「俺、直のことずっと前から好きだよ」


 優しい口調でそう言ってきた。



「……え」


 僕は思わず呟いた。



 ――りゅうちゃんが、僕のこと、好き?


 僕の耳はすごく都合のいい耳をしている。


 きっとりゅうちゃんは友達として僕を好きなんだよね?



 僕とりゅうちゃん。


 お互いが同じように恋愛として好きなんて、そんな両想いみたいなことってないよね。


 僕は、変に期待しないようにちょっとだけ軽く笑い、


「そ、それって……友達、としてだよね?」


 確認するように上目遣いでりゅうちゃんを見る。



「違う。……ちょっと、気持ち悪いかも知んないけど……。俺、お前のこと、恋愛として好きだから」


「え……」


 りゅうちゃんが照れたように、でもはっきりとそう言ってくれたのに僕はそれが信じられなくて、ポカンと口を開けてぼーっとしてしまった。


「直、聞いてる?」


 りゅうちゃんは心配になったのか僕の顔を覗きこんでくる。



「え。あ、うん。聞いてる……」


 僕はそれに気づいて慌てて頷く。



「……りゅうちゃん、ホント……?」


 僕はまだ、りゅうちゃんが恋愛として僕を好きだってことが信じられなかった。


「うん。俺、直のこと……大好き」


 はにかんだように笑うりゅうちゃん。


「お前に、そんなつもりはないかもだけど……」


 その後で悲しそうな顔をする。



「ーーううん」


 僕は首を横に振った。


 りゅうちゃんの想いは、僕も一緒だった。


 僕もりゅうちゃんがずっと前から大好き。



 りゅうちゃんの言葉は、僕の心に素直に響いてきて、僕はすごく嬉しい気持ちになった。


 僕も、りゅうちゃんの想いに応えなきゃいけない。



「……僕もね。りゅうちゃんのこと大好きだよ」


 りゅうちゃんの目をちゃんと見てはっきり言ったつもりだったけど、僕の目からは涙が溢れてしまった。


「直……」


 僕の頬にりゅうちゃんの指がそっと触れて涙を拭ってくれる。そんなりゅうちゃんの瞳も潤んでいて涙の雫がぽたりと僕の手に落ちた。



「りゅうちゃん。僕たち両想いだったんだね」


「そうだな。俺とお前一緒に想いあっていたんだな」


 

 お互い涙を零しながら、二人で笑い合った――



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