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32話【龍治】

32話【龍治】



「でも、なんか。ホントに悪りぃとは思ってるけど、龍治りゅうじんこと好きだってのは……」


 しばらく笑ったあとふいに語りだす孝弘たかひろ。一度呼吸を整えて再び俺のほうを見つめてくる。


「俺ーー龍治のこと、本気で好きだし、なんなら龍治に恋してるから」


「孝弘……」


 真剣に、好きだと言ってくる孝弘はなんだかすごくカッコよく見えて、


「お前、カッコいいな」


「は? なんだよいきなり」

 

 孝弘はびっくりしたように目を丸くしたが、次には少し照れ加減に、


「俺は、龍治のほうがカッコいいと思ってるし、なんなら憧れってのもある」


「そうか?」


 孝弘がいつになく真剣で俺を持ち上げてくるから俺は少し気恥ずかしくなって顔をそらす。



「……気持ち悪りぃよな」


 ふと悲しげに呟く孝弘の言葉に俺は顔をあげる。


 自分をあざ笑うかのような表情を見せる孝弘に俺の胸はなぜかズキリと痛んだ。


「別に気持ち悪くなんて……」


 俺も同じだから静かに首を横に振ると孝弘は自身を嫌悪するように眉をしかめ、


「いやだって、俺ら男だぜ? ーーお前に対する想いに気づいたとき最初、俺はおかしくなったんじゃねーかとか、気持ち悪りぃとか……っ!」


 そこまで早口で言って孝弘は急に言葉を切る。


「孝弘……」


 孝弘の名を小さく呟くと孝弘は俺から顔をそらすように俯いて、


「でも俺、お前のことどんどん好きになるし……っ。直往なおゆきとか側にいて羨ましかったりしたし! 悔しいってのもあった……直往にお前を取られたって感じでっ」


 取り乱したように言ってのける。その声がだんだんと涙声になっていくのを、俺は自分も同じような想いを抱えているように感じ、同調したのか分からないけど知らずうちに涙が頬を伝ってきた。


「全然気持ち悪くねーからっ!」


 気づけば孝弘の両肩を掴んで顔を覗き込んでいた。お互いの顔を見つめると孝弘は涙を流していた。


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