26話【直往】
26話【直往】
りゅうちゃんが好きだって想いは、りゅうちゃんと一緒にいる度に溢れんばかりに大きくなっていって気づいた時には僕はもうりゅうちゃん無しじゃいられなくなった。
僕がりゅうちゃんとばかりいて、鈴木たちは面白くないらしく僕にちょっかいかけてきてからかわれたりもした。僕はそれがあまり好きではなかったけど、りゅうちゃんの友達なら僕も鈴木たちと友達になればいいと思って気にしないフリをしてきたんだけど――
――僕のそんな気持ちを無視して、りゅうちゃんは小学校の途中から学校に来なくなった。(それについては別にりゅうちゃんが悪いわけじゃないんだけど)
「直往様、お紅茶をお持ちしました」
ソファに座って考え事をしていたらいつの間にかメイドさんがテーブルに紅茶とお菓子を置いてくれた。
「あ、ありがとうございます」
僕がメイドさんにぺこりと頭を下げてお礼を言うとメイドさんはくすくす笑いながら、『いえ、お気になさらずに』と言いながら部屋から出ていってしまった。
僕は少し首を傾げてから紅茶をひとくちする。あったかい紅茶が身体中に沁み渡る感じがして心が少しホッとした。
何気なく壁時計に目をやると、ちょうど十八時半。
(りゅうちゃん、どこに行ったのかな……)
大きなお屋敷の広い部屋に一人でいると胸にぽっかり穴が空いたようになんだかとてもさみしい気持ちになってくる。
もしかしてりゅうちゃんも毎日こんな感じなのかな。それはそれですごく嫌だな。
そう感じて、僕はりゅうちゃんが少し可哀想だなって思ってしまう。
(ずっとひとり……)
りゅうちゃん。ずっとずっとひとりだったんだね。
りゅうちゃんはなにも言わないけど、きっとずっと寂しかったんだよね。心の中でずっと泣いていたんだと思う。
ほんの少しだけれど、りゅうちゃんが普段隠している心の内を知った気がした僕は自然と涙が溢れてしまった。
りゅうちゃん。僕はずっとりゅうちゃんの側にいるよ。りゅうちゃんが寂しくならないよう、友達として、りゅうちゃんの心が少しでも軽くなるように、僕はずっとりゅうちゃんの側にいるから――




