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25話【直往】

25話【直往】



「ずいぶん派手にやられましたね……」



 いつも優しい笑みを浮かべている執事の倉田さんは、僕の顔を見るなりすごく心配そうに眉をひそめていた。

 僕があまり痛くないように怪我の手当てをしてくれている。



「あの……りゅうちゃ、龍治りゅうじくんはどこに行ったんですか?」


 りゅうちゃんは僕をおんぶして家に帰ってくると、僕を倉田さんに任してからすぐに着替えてどこかに行ってしまった。



「そうですねぇ……。『出かけてくる』とは仰っていましたがどこに行く、などの事は伺っていませんねぇ」


 倉田さんはそう言うと、『少し休憩なさいましょう』と僕の手当てを終えると部屋から出て行ってしまった。


「そう、なんだ……」


 これ以上は倉田さんから何も聞けないな。僕はなんとなくため息をついた。



 ――りゅうちゃんもしかして鈴木に仕返ししに行ったりしてないよね?



 そんな思いが頭の中をぐるぐるとかけ巡って僕はすごく不安になった。身体に受けた傷より、りゅうちゃんに迷惑かけるほうが僕は何倍も心が痛くなる。


 小学校の低学年のころ、当時二年生かそのくらい時に、すでに取り巻きがいた『暴れん坊りゅうじ』っていうあだ名がつくくらい荒れていたりゅうちゃんが言ったひと言。



『おい。お前おれの子分になれ!』



 その時のりゅうちゃんの顔が今でも忘れられない。


 すごく悲しそうな、でもどこか疑っているような、だけど瞳だけは必死に『さみしい』と訴えているようだった。


 当時の僕はただ単に『友達になって』と言われた気がして、



『子分じゃなく友達だよね?』



 にっこり笑って返した。


 その瞬間、りゅうちゃんはびっくりしたのか目がまん丸になってたのも覚えてる。


 その頃からだったと思う。りゅうちゃんと一緒に遊ぶようになって、僕の家にりゅうちゃんが来たりして。鈴木にからかわれたりもしてたけど、りゅうちゃんがいつも庇ってくれて助けてくれて。

 僕もりゅうちゃんみたいに強くなりたいって憧れもあったし、その頃くらいから、友達ではない、恋人の好きって想いが芽生えたんだ。



 最初は、好きっていう気持ちがよく分からなくて、幼馴染(大体の子が幼馴染なんだけど)の伊藤翼いとうつばさちゃんに相談したら、『それは、恋してるからだよ』そう言ってくれたのを覚えてる。



 あ。僕、りゅうちゃんに恋してるんだ。だからりゅうちゃんが好きなんだ。そう思ったらなんだか心にストンとパズルのピースがはまったみたいになった。



『僕、りゅうちゃんが好きだよ』



 そう言えたらどんなに楽だろう。でもきっとりゅうちゃんはこんな感情嫌がるんだろうな。だから僕は、『好き』って想いはりゅうちゃんには告げないでいようと思う。


 りゅうちゃんに嫌われたくはないから。嫌われるくらいなら『大好き』って想いは隠したままのほうがいい。


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