24話【龍治】
24話【龍治】
――あいつの家は確かこの辺か?
小学生の最初のほうはよく孝弘の家にも行ったりしていた。さっきの事(直を殴ってた事とか)で俺は孝弘に聞かなきゃいけないことがある。と言うか――
あいつ俺がいない間ずっと直をいじめていたんだろうか。中学一年はあまりちょっかいかけてないみたいだったけど、中二になった今、またしつこく絡んできたらしいけど。
別に俺は孝弘自身は嫌いじゃない。逆に友達として普通に付き合っていけたらと思っていたけど。でも孝弘と直にとっては、こういう、友達って感じじゃなかったんだな。
正直言えば俺にも悪いところはあったかも知れない。でもだからって直に暴力とか、手を出すのは違うんじゃねーかとか思ったりする。考えてみたけど、うまくまとめられない内に孝弘の家に着いてしまった。
孝弘の家は、どこにでもあるような普通の一軒家。集合住宅のなかのひとつ。道の面した駐車場を通って玄関前まで行き呼び鈴を押す。
耳をすませば軽快な声(たぶん孝弘の母ちゃんだと思う)が聞こえて玄関の扉が開けられる。
「わざわざチャイム押すなんて珍しいわね、あら?」
玄関先の相手の顔を見ずに開けるのはちょっと不用心だと思うけど、俺は懐かしい(その姿を小学校の頃何度も見た)顔を目にして、
「……ども。ご無沙汰してます」
小さくぺこりと頭を下げた。
「あらやだ」
孝弘の母ちゃんは俺の顔を見た途端に少しびっくりしたようにまん丸い目をさらに丸くして、
「あなた、龍治くん?」
顔を覗きこむ感じでジロジロと俺を見てきた。
「あの。孝弘、くん……いますか?」
遠慮がちにそう聞けば、
「たか? まだ帰ってないみたい」
おばさん(孝弘の母ちゃん)は玄関に置かれた靴を一旦見て再び俺のほうを向き困ったような苦笑いを浮かべた。
「……そうですか。じゃあまた来ます」
『あがって待ってれば』と言い張るおばさんから逃げるようにして俺は孝弘の家をあとにする。
――あいつの行き先は分かってる。
頭の中で再確認するように、孝弘がいつも学校帰りに屯している場所へと向かった。




